昨日の送別会は、柄にもなくシンミリとした気分になりました。
去り逝く人は、私のような外様にも分け隔てなく力を貸してくれましたし、若い者の面倒もしっかりみていましたから、宴席では涙ぐむ者も……。
仕事上では決して出世した人ではありませんでしたが、人生は上々だったのではないでしょうか。第二の職場でも、きっと良い味の存在感で、やってくれると思います。
こういう人を私は忘れません。
ということで、本日は――
■All Morning Long / Red Garland (Prestige)
モダンジャズ黄金期を代表する名門レーベルだったプレスティッジとブルーノートは、とても良く似たメンバーで録音セッションを行っていましたが、発売されるアルバムは似て非なるものでしょう。
それはカチッとしたプロデュースが行き届いたブルーノートに対し、些かファジーで度量の大きいブレスティッジという雰囲気かと思います。それゆえに現代ではブルーノートの方が少しばかり格上のような扱いになっていますが、いざ日常で聴く段になると、プレスティッジのリラックスしたジャムセッション物あたりには、ちょっと抜け出せない魅了があります。
自然体のグルーヴが強い感じなんですねぇ~♪
それは現場を実際に仕切っていたのが、参加ミュージシャン本人達だったからだとか!? うん、全くそのとおりかもしれません。
本日の1枚は、当にそうした快感に身も心も委ねて満足の作品です。
録音は1957年11月15日、メンバーはドナルド・バード(tp)、ジョン・コルトレーン(ts)、レッド・ガーランド(p)、ジョージ・ジョイナー(b)、アート・テイラー(ds) という、保証付きのハードバップ集団です――
A-1 All Morning Long
ミディアムテンポで力強くスイングしまくった大ブルース大会です! なにせLP片面を使い切った20分超の演奏でありながら、一瞬たりともダレることが無い、濃密な時間が流れていくのです。
テーマメロディはお約束がいっぱいのリフながら、まずそこで絡みつくレッド・ガーランドが楽しく、続けて登場するジョン・コルトレーンのアドリブパートの最初の部分では、リズム隊がグルなってゴスペル&ファンキーなバックリフを付けてしまうノリが、たまりません♪
もちろんジョン・コルトレーンも、完成途上のシーツ・オブ・サウンドを駆使したウネウネ節で強烈な自己主張をしていますので、分かっちゃいるけど止められない状態です♪
またドナルド・バードは幾分エコーのかかった音色と温かい歌心を存分に発揮していますから、お決まりのフレーズを連発しても聴き手を納得させてしまいます。
そしてレッド・ガーランド! 適度に粘っこいノリと歯切れの良いフレーズを積み重ね、お待ちかねのブロックコード弾きで山場を作るという、お得意の焦らし戦術が完全にツボにはまった快演です。あぁ、このあたりは、本当にジャズが好きで良かったと思わされますねぇ♪
演奏はこの後、ジョージ・ジョイナーの硬質なベースソロからラストテーマに戻るという王道路線で、ひとまず収束するのですが……。
B-1 They Can't Take That Away From Me
有名なスタンダードをレッド・ガーランドが巧みにアレンジし、ハードバップに作り変えてしまった名演です。それはストップタイムを上手く使ったテーマ部分の緊張感であり、また力強いビート感に満ち溢れたリズム隊の活躍が凄いところ!
ですからアドリブパートではジョン・コルトレーンが大ハッスル! じっくり聴くと、けっこう縺れっぱなしなんですが、勢いで最後まで行ってしまったという好ましさに繋がります。
続くドナルド・バードが、これまた良いですねぇ~♪ 流麗なフレーズの連発は何時もの常套手段ながら、野太いジョージ・ジョイナーのベースに煽られた雰囲気で結果オーライでしょうか。
またレッド・ガーランドは、ちょっと変則的なコード付けをしたような按配で、刺激的なアドリブを始めますが、ちゃん~と「ガーランド節」を出してくれますから、ご安心下さい。あぁ、ブロックコードの山場が快感の大嵐です♪
B-2 Our Delight
モダンジャズ創成期のビバップ時代から受け継がれたモダンジャズの真髄ともいうべきアドリブにチャレンジした演奏です。
スピード感満点のグルーヴを生み出すリズム隊の恐ろしさを物ともしないドナルド・バードのツッコミ鋭いアドリブは、若さと勢いの象徴でしょう。バックで炸裂するレッドガーランドの叩きつけるようなコード弾きも、むなしき愛という雰囲気です。
するとジョン・コルトレーンが、これまた白熱のウネウネクネクネで身悶えした熱演です! この雰囲気は、何時聴いても良いですねぇ~♪ というのはジャズ喫茶世代共通の認識かと思います。いや、そう思いたいですねっ!
もちろんそこにはリズム隊の激しさが不可欠で、レッド・ガーランドはリーダーとしての責任よりは、負けん気で弾きまくり、逆に墓穴を掘る寸前に追い込まれていくというスリルが、たまりません。
バンド全体にしても、最後は破綻寸前になっていますよっ!
ということで、実はこの日は10曲も録音した「長い1日」でしたが、その一連の音源を纏めて聴いてみても、全体が非常充実したものになっています。時代はハードバップど真ん中! これでヘタレなら、あの時代は無かったことになりますからねぇ。自然体の気合と場の熱気が、物理的制約を超えて記録された魂の1枚とは、如何にもサイケおやじ的な大袈裟ではありますが。