OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

今は大好き! ブラインド・フェイス

2009-08-16 10:49:17 | Rock

Blind Faith (Polydor)

1969年、ロック界の期待を一身に背負ったバンドが誕生しました。それがブラインド・フェイス:Blind Faith です。なにせメンバーが物凄く、元クリームのエリック・クラプトン(g)とジンジャー・ベイカー(ds)、元トラフィックのステービィー・ウィンウッド(vo,key,g,b)、そして日本では全く無名だったリック・グレッチ(b)という布陣は当時、スーパー・グループと呼ばれるほどの大センセーション! デビュー・アルバムの日本盤タイトルも「スーパージャイアンツ・ブラインド・フェイス(ポリトールMP-1456)」という気合いの入り方でした。

ちなみに、オリジナルデザインの少女ヌードを使ったジャケットはアメリカでは発禁! 暮ったいメンバーの写真に差し替えられるという騒動もありましたですね。

それはさておき、クリームにシビレきっていた当時の私も、乏しい小遣いを懸命にやりくりして、1750円の日本盤を買ったのですが、その目当てはエリック・クラプトンとジンジャー・ベイカーによる、クリーム的な味わいでした。

 A-1 Had To Cry Today / 泣きたい気持ち
 A-2 Can't Find My Way Home
 A-3 Well All Right
 A-4 Presence Of The Lord
 B-1 Sea Of Joy / 歓喜の海
 B-2 Do What You Like / 君の好きなように

ところが結果は、皆様がご存知のとおり、それは全くの期待はずれというか、完全に騙されたとしか思えない内容でした。

あぁ~、こんなんだったら、ジェフ・ベックの新譜を買えばよかったぁ~、と心底後悔した記憶が、今も鮮明に残っているほどです。

A面ド頭収録曲の邦題「泣きたい気持ち」が、まさにそのまんま……。

しかし当時中学生だった私には、1750円は死活問題という大金でしたので、なんとか元を取り返そうと悔しさを隠しながら、負け惜しみ的に毎日、繰り返し聴いていたのも、また事実でした。

すると、どういう心の変化なのか、とにかく「Presence Of The Lord」と「歓喜の海」の2曲がたまらなく好きになっていったのです。

前者は厳かな宗教的な雰囲気から一転して熱く炸裂するエリック・クラプトンのギターが強烈ですし、後者はステービィー・ウィンウッドのボーカルが泣いている不思議な名曲で、熱いエレキギターのリフに穏やかな生ギター、厳かなオルガンに間奏のバイオリンが奇妙な取り合わせで、さらにジンジャー・ベイカーが敲き出すドカドカ煩いビートが気持ち良いという、これまでに聴いたことが無い快感がありました。あぁ~、もっと聴いていたいなぁ~! という時に終わってしまうのも、絶妙な展開です。

そしてそこに目覚めてから、同様の快感を求めて様々な情報を集めてみると、どうやらこのアルバムの秘密は全曲を歌っているステービィー・ウィンウッドに、そのカギがあるんじゃなかろうか? という推察をして、彼の参加していたというトラフィックというバンドが気になりはじめたのです。

ただし正直言って、当時の私はトラフィックについて、ほとんど何も知りませんでした。僅かに音楽雑誌等で名前を読んだことがあったくらいです。ラジオでトラフィックの曲がヒットしたという記憶もありませんし、もちろん友人も誰ひとり、彼等のレコードを所有していないのです。ですからトラフィックを聴くには買うしか無い……、しかし彼等のレコードを買うのは、乏しい小遣いを鑑みれば大袈裟でなく決死的覚悟が必要でした。

しかし青春の情熱というのは、今思うと恐ろしいものがあります。昼飯代を倹約しまっくって、ついに買ったのが「トラフィック(フォンタナSFON-7104)」という中古の日本盤LPでした。そして早速、針を落としてみると、そこにはまたしても異次元空間が広がっていたのです。

で、これ以降の話は別の機会に譲りますが、ブラインド・フェィスというバンドは、その名前のとおり、盲目的な信仰に思い込まされたファンの妄想が全てだったかもしれません。穿った推測をすれば、それを読み切っていたメンバーやブロデューサーの思惑も感じられるほどで、所謂「隙だらけ」、ツッコミどころ満載の仕上がりが当初は失望でも、後に深い味わいに転化し、様々な奥の細道へのガイド役だった気がしています。

実際、サイケおやじにしても、このアルバムが無かったらトラフィックにも、デイブ・メイソンに邂逅することがなく、ステービィー・ウィンウッドの真の天才性にも、気がつくのは確実に遅れていたと思います。

またアルバムの魅力についても、実は私が40代になってから、あらためて良いなぁ~~~♪ と感銘するところが顕著で、イギリスプレスのアナログ盤LPを買い直したほどです。

「泣きたい気持ち」では、リアルタイムでユルユルだったリフが、まるっきり中年者の琴線に触れまくるグルーヴにシビレますし、恐らく左からクラプトン、右からウィンウッドによるギターバトルが刹那の境地♪♪~♪

また「Well All Right」では後半のピアノのアドリブ、そして「君の好きなように」ではデイヴ・ブルーぺックの人気曲「Take Five」の如き変則5拍子による、いずれもロックジャズの味わいが、ハッとするほど良い感じです。

もちろん今に至るもロックの名曲として揺るぎない「Can't Find My Way Home」は、そのアコースティック&ソウルフルなシミジミフィーリングが不滅でしょう。と言うよりも、如何にもステービィー・ウィンウッドらしいヨーロッパ趣味も、自身による最高のボーカル表現によって、全てを超越しているように感じます。

ということで、今日になっても評価が分かれているアルバムというのが、真っ当な受け取られ方の名盤でしょう。もちろん「名盤」と私が書いたのは、歴史という重みの中の存在意義ゆえのことですが、それを詳しく書かなくとも、以降のメンバーの動向や彼等が作り上げた流行とキャリアは、ますます不滅になっていると思います。

人間は誰しも人生の中で「裏切り」を経験するものですが、それが何時しか思い出となり、さらに人生の糧として、豊かな心に繋がるという不思議さは、私にとって、まさに「Blind Faith」です。

もしかしたら、生涯の愛聴盤になりそうですよ。

さあ、もう1回、聴こう!

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