■New, Live & Rare / Deep Purple (Trash / トリオ)
だいたい自分の嗜好は、ほとんど昭和50(1975)年位までに決まってしまったという、私は実に偏向した人間ですから、以降は音楽でも正直、新譜に聴きたいものが極端に減っていました。もちろん時代はパンクやニューウェイヴ、ヘビメタやテクノという流れに入っていくわけですから、全く、さもありなん……。
ですから好きなミュージシャンの未発表作品集なんてものが新発売されると、速攻で入手しては一喜一憂していていたのが、サイケおやじの1980年代でした。
本日のご紹介も、そんな当時の昭和55(1980)年秋に我国優先で発売されたディープ・パープルのレア音源集だったのですが……。
A-1 Hash (live version / 1969年9月24日録音)
A-2 Painted Horse (outtake / 1972年)
A-3 Cry Free (outtake / 1970年)
A-4 Child In Time (live version / 1969年9月24日録音)
B-1 Strange Kind Of Woman (single,A)
B-2 I'm Alone (single,B)
B-3 When A Blind Man Cries (single,B)
B-4 Wring That Knec (live version / 1969年9月24日録音)
実はこれより以前の1977年末頃、「パワー・ハウス (Purple / Warner)」というレア音源アルバムが当時の契約会社から発売されており、このLPとは曲のダブりが甚だしいという真相があります。
しかし既にディープ・パーブル自体が1976年に解散しており、様々に出回った編集盤は結局、ファンの渇望に乗じて、曖昧な契約の抜け道を利用したという見方も出来るでしょう。そして問題は、如何に素晴らしいオムニバス盤を提供出来るか!? ということもかしれません。
で、このアルバムに収録された上記のトラックには一応、簡単にデータも付記しておきましたが、所謂第二期のイアン・ギラン(vo)、リッチー・ブラクッモア(g)、ジョン・ロード(key)、ロジャー・グローヴァー(b)、イアン・ペイス(ds) という、ファンが最も大好きな時期の、ちょっと珍しい歌と演奏が楽しめます。
まず1969年に残されたライブ音源は、あのクラシックオーケストラと共演した隠れ人気盤「ディープ・パープルとロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラ (Hervest)」と同じ日に録音されたバンドの単独演奏で、特に第一期のヒット曲「Hash」がイアン・ギランによって歌われるのが興味津津でしょう。そして結果は十八番のシャウトを適度に使った物分かりの良い歌い回しで、そのオリジナルバージョンの雰囲気を大切にしているのは流石! しかしリッチー・ブラックモアのギターワークが随所で余裕の遊びを披露するあたりは、侮れません。もちろんジョン・ロードのオルガンはジミー・スミスのロック的展開ですよ♪♪~♪
また第二期のステージでは定番だった「Child In Time」は、これが初演という説が根強いわけですが、実際、静かなスタートから少しずつ熱気を孕んで盛り上がっていくバンドとしての一体感は素晴らしく、キメのリフからギターとオルガンの鬩ぎ合い、そして中盤にテンポアップしてからはリッチー・ブラックモアの凄まじいアドリブソロが爆発し、後半に至っては完璧な曲の構成も見事すぎますから、クラシックファンも多かったといわれる当日の観客も圧倒されての大拍手! 溜飲が下がります。
そしてさらに凄いのが、これまた第一期からの十八番「Wring That Knec」で、これぞっ
白熱のハードロックインスト! ちなみにオリジナルの曲名はセカンドアルバム「詩人タリエシンの世界」に収録されていた「Hard Road」なんですが、果たしてどっちが本当なのか!?! まあ、それはそれとして、スピード感満点に疾走するバンドの勢いにはスカッとさせられますよ。
以上の3曲はモノラルミックスで、前述した「パワー・ハウス (Purple / Warner)」とのダブり収録ながら、その時は些か妙なエコーが気になっていた部分を、ここでは実直なものに統一してあるのは十人十色のお好みかでしょうか。私は、こちらが好きです。
次に2曲のアウトテイクですが、まず「Cry Free」は名盤「イン・ロック (Hervest)」制作時にシングル候補となっていたというほど、なかなか直線的で重量感のある仕上がりで、裏声をキメに使うイアン・ギランの歌いっぷりが感度良好♪♪~♪ パワフルなイアン・ペイスのドラミングと攻撃性の強いリッチー・ブラックモアのギターも熱いですよ。
また、もうひとつの「Painted Horse」は、これも人気盤「ファイアボール (Hervest)」制作時のボツテイクなんですが、後の大ヒット曲「Smoke On The Water」の予行演習っぽいキメや第三期を予感させるコーラスワークとファンキーなジョン・ロードのキーボードがニクイところでしょう。イアン・ギランのハーモニカやリッチー・ブラックモアのスライドギターも、かなりしぶといと思います。
そして残る3曲は英国ではシングル盤オンリーという扱いだった隠れ名曲ですが、それでも比較的入手は容易なものばかりでしたから、別に「レア」ということもないでしょう。
しかし歌と演奏そのものは流石に全盛期! ですから、いずれも聴きごたえがあります。
中でも「I'm Alone」はシングル盤「Strange Kind Of Woman」のB面に収録されていた、実にスピード感満点の隠れ名演で、気持良いほどリズミックなペースパターンを土台に「Terry-sh」なリッチー・ブラックモアのギターソロ、さらにファンキーロックなジョン・ロードのキーボードが短いながらも冴えまくり♪♪~♪ こんなんライプでやられたら、歓喜悶絶でしょうねぇ~~♪
それと「When A Blind Man Cries」は、これまた人気盤の極みつきという「マシン・ヘッド (Hervest)」のセッションから作られ、先行シングルとなった「Never Before」のB面に収録されていた、隠れ名曲の決定版! スローテンポながら力強いロックビートが横溢し、マイナー調の泣きのメロディが心に染みる仕上がりは、リッチー・ブラックモアのギターソロも実にシブイです!
ということで、今となっては、ど~ってことない編集盤かもしれませんが、なんか当時は嬉しかったですねぇ~~♪ それは些かトホホのジャケ写&デザインにも言えることで、ほとんど出来の良い海賊盤という雰囲気が、憎めないのです。
はっきり言えば、当時の私は既に前述した編集盤「パワー・ハウス (Purple / Warner)」も、また該当シングル曲も全て持っていましたから、これは無駄な出費に他なりませんでした。しかし、それでも買ってしまったのは、「もしかしたら……」なんていうスケベ心が働いていたからで、確かにライプ曲の音質は少~しだけ向上していた他は大差無しです。
まあ、それだけ新発売で購買意欲を刺戟するレコードが少なくなっていたとはいえ、ちょいと「ビニール本」を買う不穏な期待感と似ていたのかもしれません。
きっと笑われるでしょうが、その店頭でワクワクする気分にお金を使うことは、決して無駄とは思っていないのでした。