OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

マンネリ・マイルス対ガチンコな子分

2012-07-31 15:04:24 | Miles Davis

Miles Davis Quintet Live In Copenhagen 1964 (Domino = CD)

ちょいとした齟齬から買い逃したブツに対し、それが名作であるという評判が定着するほどに、ますますの妄執を募らせるのがサイケおやじの悪癖です。

例えば本日ご紹介するマイルス・デイビス(tp) の音源は、ウェイン・ショーター(ts)、ハービー・ハンコック(p)、ロン・カーター(b)、トニー・ウィリアムス(ds) を擁していた1960年代の所謂黄金のクインテットによる音質良好なライプの傑作として、かなり以前から評判を呼んでいました。

ところが何故かサイケおやじが入手したマグネチックというレーベルからのCDは、プレスミスなんでしょうか? とにかく全く作動せず、購入店で交換してもらっても、それが再び同じ症状……。

結局は返金となって、う~ん、また何時かは買える時が来るだろう、なぁ~んて楽観してから既に幾年月!?

ほとんど再発の兆しもなく、また中古も出ないという悪循環が続きましたから、つい先日、それと同じ音源を収録した掲載CDを発見した時には、速攻でお買い上げとなった次第です。

ちなみに録音データは1964年10月4日のコペンハーゲンというのが定説ですが、これには微妙に異論もあることを付け加えておきます。

01 Aututmn Leaves / 枯葉
 マイルス・デイビスが十八番の演目の中でも人気が特に高い「枯葉」ですから、ミュートによる味わい深いメロディフェイク、それに呼応するリズム隊の緊張感が、リスナーに必要以上の期待を抱かせてくれる事は言わずもがなでしょう。
 このあたりは当時のマイルス・デイビスが残したライプ音源を聴いていくとわかるんですが、親分はほとんどの場合、最初に良く知られた歌物スタンダードをやるんですよねぇ。
 おそらくはそれでツカミはOK♪ を狙っていたんでしょう。
 もちろん、それはここでも万全であって、とにかくミディアムテンポでのグルーヴ感は如何にも黒人ジャズならではの重量感がありますし、リスナーが演目のメロディを知り抜いていることを活かしきったマイルス・デイビスのミュートの魔術♪♪~♪
 好き放題にやっている感も強いリズム隊のビシッとした意志の疎通も侮れません。
 ところがウェイン・ショーターが登場すると、これが一変!
 実質的にはバンドでの新参者ながら、最初から幹部待遇ということもあるんでしょうが、マイペースと言うにはあまりにもジコチュウなやり方には、特にトニー・ウィリアムスが若気の至り? 真っ向から逆らうようなドラミングが散見され、あぁ~、これがジャズを聴く楽しみだと痛感されますよ♪♪~♪
 ただし同時期の公式盤「ベルリン」での演奏に比べると、些か整合性に乏しい感じも……。
 まあ、それを上手く収斂させるのがハービー・ハンコックの役割でもあるのでしょう。実に素晴らしいアドリブを聞かせてくれますが、残念ながら途中でテープが終わったのかもしれません。尻切れトンボが勿体無い!?
 とはいえ、それを上手く拍手を被せることで次の演目に繋ぐ編集は結果オーライだと思います。

02 So What
 ということで、前トラックの拍手の中でスタートするのが、これまたマイルス・デイビス十八番のモード曲にして、このクインテットが最高に爆発するアップテンポの定番演奏!
 正直に言えば、マイルス親分は些か音も外していますし、アドリブもマンネリの極みに陥っていますが、トニー・ウィリアムスのメチャ煽りには熱くさせられますねぇ~♪
 かなり過激なウォーキングをやってしまうロン・カーターも凄いと思いますが、それにしてもウェイン・ショーターの自虐的なアドリブソロは今だから素直にシビれられるものでしょう。多分、リアルタイムの観客は唖然とさせられんじゃ~ないでしょうかねぇ~~?
 結局、ここでもハービー・ハンコックが上手い仲介役としての手腕が発揮されるというわけです。

03 Stella By Starlight
 そして前曲のラストテーマから万雷の拍手の中、すぅぅぅ~と弾かれるハービー・ハンコックの繊細なピアノのフレーズに導かれ、またまたマイルス・デイビスが薬籠中のメロデイフェイクを聞かせてくれるのが、この歌物スタンダードです。
 う~ん、やっぱり当時はこういうプログラム構成が普通だったんでしょうかねぇ。個人的にはアップテンポやミディアムグルーヴをガンガン乱れ撃ちにして欲しいんですが……。
 まあ、それはそれとして、実は今回の再発では収録演目を実際のライプの曲順と同じに揃えたらしく、それでもサイケおやじは冒頭に述べたとおりの事情から既発のブツは聴いていないので、ここまでしか言えません。
 しかし緩急自在にスイングしていく黄金のクインテットの演奏は流石に素晴らしく、見事な緊張と緩和に酔わされてしまいますが、意外に直線的なウェイン・ショーターにリズム隊が嬉々とした次の瞬間、お約束とはいえ、幻想の世界へ転じるあたりの周到さはニクイばかり!
 トニー・ウィリアムスのブラシも、良いですよっ!

04 Walkin'
 で、再び始まるのが原曲のブルースを全く無視した激烈モードの疾走大会!
 マイルス親分は、まあ、例のとおりなんですが、ウェイン・ショーターのブッ飛びは時代を鑑みれば、明らかに過激なスタイルであり、しかも闇雲なフリーにもならず、コルトレーンとも一味異なるアプローチは、それが未完成なだけに危険極まりないのかっ!?
 ですからトニー・ウィリアムスの大ハッスルも、またハービー・ハンコックの物分かりの良さ、さらにはロン・カーターの安定路線も、既に我々が知っている後の姿の前触れに他なりませんよねぇ~♪

05 All Of You
 そんな諸々を思いつつ、それでも虚心坦懐に聴き入ってしまうのが、マイルス・デイビスのミュートの世界でしょう。
 ここでも手慣れた手法が本当に心地良く、何がマイルス・デイビスの魅力の本質なのか、それをリスナーは再認識させられるんじゃ~ないでしょうか。
 子分達も、そうした親分の気持を無にしないというか、その場の観客を大切にしたプレイは決して媚びたわけではなく、むしろ本音で演じた結果とサイケおやじは思いたいですし、これが実に素晴らしいと思います。
 ラストテーマにおけるマイルス・デイビスの思わせぶりも秀逸♪♪~♪

06 Joshua - The Theme
 こうして迎える大団円は、個人的に大好きなモード曲♪♪~♪
 思わずワクワクさせられるテーマから観客の手拍子も良い感じですが、バンドの勢いは冷静と過熱のバランスが絶妙で、しかも自由が保証されているのでしょうか、各人のアドリブパートにはきっちり山場が提供されます。
 いゃ~、トニー・ウィリアムスの煽りも最高ですねぇ~~♪
 演奏は最後に短いバンドテーマが奏され、およそ66分のライプステージが楽しめるという仕掛です。

ということで、これはやっぱり噂どおり、なかなかの名演ライプ音源でした。

気になる音質も良好なモノラルミックスで、確かに弱音部分ではヒスノイズも目立ちますが、録音された時代を考慮すれば、贅沢は敵でしょう。ジャズ者ならば、全く問題無しに聴けるレベルだと思います。各楽器のバランスも絶妙というか、同種の音源に比べるとベースの存在感もしっかりしていますよ。

ただし以上の件は再発のリマスター効果なのか、サイケおやじは今回初めて聴いたわけですから、確実な事は言えませんので悪しからずご了解下さいませ。

それと以下は蛇足ではありますが、当時のマイルス・デイビスの発掘音源は多種多様にある中で、常に親分がマンネリ、反して子分達が意欲的という構図は、やはりファンが求めているものなんでしょうか……。

個人的にはそれで良いと思っていますし、そうした安心感こそが、マイルス・デイビスのブートを入手するキメ手になっているのは確かです。

そしてジャズが絶対的な魅力を発揮していたのは、やっぱりこの時代までなんだぁ~、という思いを強くするのでした。

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