OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ボブ・シーガーという剛毅なロッカー

2012-06-24 15:07:54 | Rock

Ramblin' Gamblin' Man / The Bob Seger System (Capitol)

往年の洋楽には我国だけというヒット盤が多数ありましたが、それは諸外国でも同様の事情が確かにあり、それは現在の様な情報過多の時代ではなかったゆえの、それはそれでなかなか味わい深い現象だったと思います。

つまり日本じゃ~、全く人気が無いどころか、その存在さえも一般には知られていなくとも、本国ではスーパースタアというミュージシャンが相当に存在しており、例えば本日ご紹介のボブ・シーガーは、1970年代から本国アメリカにおいて絶大な人気を集める実力派で、率直に言えば似て非なるスタイルのブルース・スプリングスティーンよりも大衆的なリアルロッカーと決めつければ、それはなかなか信じてもらえないほどでしょう。

しかし実際、1970年代中頃から年間200本以上のライプ巡業をやり続け、新譜レコードを出せば放送メディアはそれを流しまくり、シングル&アルバムはベストセラーになっていたのですから、何故我国でブレイクしなかったのか?

それは今でも疑問に思うほどです。

で、サイケおやじがボブ・シーガーを知ったのは1976年晩秋、ラジオのFEN=米軍極東放送で聴いた「Night Moves」という、アコースティックな哀愁ロック曲でありましたが、なによりもボブ・シーガーのガッツ溢れる歌い方とソウルフルな深い味わいには、瞬時にグッと惹きつけられましたですねぇ~♪

速攻で件の「Night Moves」が収録された同名アルバムをゲットしたのは言うまでもありませんが、例によって本人の過去を探索してみると、予想していた以上にそこまでには苦節の長いキャリアが残されていて、しかもサイケおやじが気に入ってしまう要素がどっさり!?

中でも特筆すべきは、ボブ・シーガーがアメリカ中西部のデトロイト出身であり、既に1960年代前半からセミプロ、そしてプロとしての音楽活動には当地独得のR&B的手法を取り入れた剛球ロックをやっていたという事実です。

まあ、このあたりはミッチー・ライダーにも通ずる魅力であって、しかもボブ・シーガーの場合はサイケデリックロックの洗礼を受け、さらにはシンガーソングライター的な方向性を模索した時期もありますから、所謂アメリカンロックの王道たる部分を確実に表現し続けて来た事は、未だ地元のマイナーレーベルに細々とレコーディングをやっていた駆け出し時代の音源はもちろん、すっかり大物となった今日までの諸作を聴けば明白でしょう。

そして何よりも楽しんでいただきたいのが本日掲載のアルバムで、これはボブ・シーガーの初めてのビッグヒットになった1969年の「Ramblin' Gamblin' Man」をウリした最初のLPとはいえ、やってしまった事の気合いの入り方は半端ではありませんっ!

 A-1 Ramblin' Gamblin' Man
 A-2 Tales Of Lucy Blue
 A-3 Ivory
 A-4 Gone
 A-5 Down Home
 A-6 Train Man
 B-1 White Wall
 B-2 Black Eyed Girl
 B-3 2 + 2 = ?
 B-4 Doctor Fine
 B-5 The Last Song

ちなみにボブ・シーガー(vo,g,p,org) は、ここではバンドスタイルのボブ・シーガー・システムを名乗り、メンバーは他にダン・ホネイカー(b,vo)、ペブ・パーリン(ds,vo) と組んだトリオ編成がレギュラーであり、レコーディングには助っ人としてマイク・アールワイン(hac)、ボブ・シュルツ(org) の参加がジャケットにクレジットされています。

しかし、それでいて演奏が薄っぺらなんて事は決して無く、むしろサイケデリック&ハードロックな熱気が充満しているんですから、ボブ・シーガーのボーカルも勢いと熱血がストレートに伝わってくる快唱ばかり!

まずA面ド頭にヒットした「Ramblin' Gamblin' Man」が置かれているのは美しき慣例とはいえ、ドカドカ煩いドラムスと唸るオルガンに煽られてツッコミ気味に歌うボブ・シーガーは、まさにブルーアイドソウルですよねぇ~♪ しかもバックコーラスの幾分ダサいフィーリングが逆に良い感じ♪♪~♪

ですから以降、ヘヴィなピートにファズギターがたまらない「Tales Of Lucy Blue」や「2 + 2 = ?」、ドタバタなドラムスが剛直なソウルビートに直結している「Ivory」、骨太ハードロックの「Down Home」や「Black Eyed Girl」の真っ向勝負が後のGFR=グランド・ファンク・レイルロードみたいだったりするのには、思わずニヤリでしょう。

また一方、アコースティックギターを使ったアシッドフォーク調の「Gone」や「Train Man」にしても、決して流されない強いピート、あるいはサイケデリック本流のドロドロ感がハードに煮詰められているあたり、なかなかの曲者です。

そしてサイケデリック歌謡曲みたいなイントロからソウルっぽいベース、ハードエッジなファズギターが絡み合って長いアドリブに突入し、最後には見事な構成力を痛感させられる「White Wall」は、完全なる確信犯!?

同様の手口は短いオルガンインストの「Doctor Fine」から「The Last Song」へと続く大団円で、なんとっ! ほとんどバーズ直系のフォークロックが、ギターやコーラスワークの使い方も含めて、非常な高揚感を醸し出す不思議なハードロックに精製されているんですから、実にリアルタイムの生々しさです。

もちろん全篇随所に聴かれるギターソロにはファズが惜しみなく使用され、同時にコーラスワークが妙にウエストコーストしていたりする等々、如何にもアメリカンロック過渡期の作りが記録されてしまった点も要注意でしょう。

気になる楽曲そのもののは、決してメロディ優先主義ではなく、むしろ「ノリ一発」で「やっちまった感」の強いトラックが多いんですが、それがまたボブ・シーガーの直球勝負的な根性ボーカルスタイルには合っているんですねぇ~♪

そこでこのアルバムは、ハードロックファンやアメリカンロックファンには無論、ガレージだとか、パンクだとか、そんなあたりにシビれている皆様にこそ、強く聴いて欲しいと願うばかり!

実際、これを初めて聴いた1977年頃のサイケおやじは、AORやフュージョンに憑依されていた時期だったんですが、完全に目が覚めましたですよ。

ということでボブ・シーガーは、このアルバムを出した1969年から本格的にロックど真ん中の活動をスタートさせ、時には回り道のようなレコードも作っていましたが、大半はアメリカンロックの王道路線を突き進んで、今日に至っています。

そして当然ながら、その流れの中にはカントリーロックやAORといった流行のスタイルも自然に入っていますが、イヤミではありません。

ただし好き嫌いの点から言及すれば、サイケおやじは初期のブルーアイドソウルに染まり抜いた歌と演奏が一番好きですから、この最初のアルバム「ランブリン・ギャンブリン・マン」や通算3作目であろう「モングレル」への愛着も強いのです。

機会があれば、皆様にも、ぜひっ!

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