OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

俺のは寝ているソニー・ロリンズ

2009-02-27 11:48:02 | Jazz

Sonny Rollins (Blue Note)


まず最初にお断りしておきたいのが、私有盤は再発なので、ジャケットは掲載された向きということです。つまりソニー・ロリンズが寝ているわけですね。オリジナルは本人が起きている、そしてジャケットの黄色い部分からレコードを取り出す仕様なんです。左90度旋回!

どうして、そんな凝ったデザインにしたのか、真相は知る由もありませんが、なんともマニア泣かせというか、胸騒ぎのブツだと思います。

さて、肝心の中身は、ソニー・ロリンズ全盛期の演奏を楽しめる優良盤ですが、この時期には歴史的名盤&大傑作ばかりが残されているとあって、その中では比較的静観されている1枚かもしれません。しかし出来は極上!

録音は1956年12月16日、メンバーはソニー・ロリンズ(ts)、ドナルド・バード(tp)、ウイントン・ケリー(p)、ジーン・ラミー(b)、マックス・ローチ(ds) という、今では夢のオールスタアズです。

A-1 Decision
 ずっしり重いファンキーフィーリングが、如何にも真っ黒なハードバップです。ミディアムテンポのグルーヴの要は、もちろんウイントン・ケリーが担っていますよ。
 ソニー・ロリンズのアドリブは何時もの天衣無縫さよりも幾分、生硬な押し出しが強く、極限すれば「らしく」ありません。しかしドナルド・バードにはとっては、まさに十八番の場面設定とあって、その思わせぶりに歌いながらも忌憚の無いアドリブは安定感があります。
 そしてウイントン・ケリーのジワジワっとくる粘っこい「ケリー節」の素晴らしさ♪♪~♪ そのファンキーな転がりが琴線に触れまくりですねぇ~♪
 終盤にはマックス・ローチのブラシの至芸も用意されています。

A-2 Bluesnote
 アップテンポで豪快にドライヴしたハードバップですが、ここでもウイントン・ケリーが絶妙にファンキーな味付けを演じています。相当にビシバシな姿勢のマックス・ローチも怖いですねぇ~。
 しかしドナルド・バードの、些かマンネリ気味のアドリブが出た瞬間から、その場は曲タイトルどおりのブルーノート的な現場主義が横溢し、その王道を邁進するソニー・ロリンズのスケールの大きさに圧倒されるでしょう。
 ハードエッジなリズム隊を翻弄するかのように飛翔しては急停止するフレーズ展開、グリグリのウネリ、骨太なテナーサックスの音色! こんな人、他にいませんよねぇ~♪
 さらにウイントン・ケリーの猥雑な感じさえ漂う素敵なフィーリング、さらにリズム隊3人の個性も含めて、やっぱりハードバップって良いですねぇ~♪

A-3 How Are Things In Glocca Morra
 そして、これこそがソニー・ロリンズの伝統的な一面が良く出た名演だと思います。
 ドナルド・バードのミュートトランペットが絶妙の道案内となり、続くソニー・ロリンズがシンミリとした情感に熱い想いをこめて吹奏するテーマ部分の素晴らしさ! 曲はスタンダードらしいのですが、そのせつないメロディが優しく逞しいテナーサックスで味わえるという桃源郷です。
 中間部のアドリブではウイントン・ケリーがマイナーな風情も滲む歌心でスイングし、続くソニー・ロリンズが再びハードボイルドな男気を聞かせて、演奏は素敵な余韻を残しながら終了しますが、これこそ、何度でも聴きたくなる傑作トラックでしょうね。

B-1 Plain Jane
 A面では、些か「らしくない」姿も披露していたソニー・ロリンズが、このB面に入っては全く期待どおりの豪放さを堪能させてくれます。まずは、この演奏が凄いですよっ!
 力強いミディアムテンポのグルーヴを提供するリズム隊と共謀し、まさに空間を自在に浮遊して豪快なアドリブに専心するソニー・ロリンズの天才性は否定出来るものではありません。破天荒なフレーズ! 驚異的なリズム感!! 本当にゾクゾクしてきます。
 う~ん、失礼ながらドナルド・バードの保守性が凡庸に感じられるのも、偽りの無い気持ちです。もちろん、それはそれで、楽しいハードバップの本質ではありますが……。
 その意味でウイントン・ケリーの飛び跳ねグルーヴが逆に痛快ですし、続くソニー・ロリンズ対マックス・ローチの直接対決が展開されるクライマックスに至っては、ただただ、スリルと興奮に身を任せるしかありません。

B-2 Sonnysphere
 初っ端から強引なソニー・ロリンズの独壇場! そのブッ飛んだ感性がハードなリズム隊に煽られ、さらに爆発していく名演です。もちろん十八番のモールス信号やグイノリのツッコミドライヴ、ウネリまくった「ローリン節」がテンコ盛りですよっ♪♪~♪
 それゆえにドナルド・バードの必死の熱演も、ちょっと可哀想なところも散見されますが、結果オーライでしょうねぇ、私は憎めません。
 そしてリズム隊が一丸となったウイントン・ケリーのアドリブパートの勢いは絶品ですから、続くソニー・ロリンズ対マックス・ローチのソロチェンジが熱いのは当然が必然です。
 あぁ、このスリルとリズム的な興奮こそがジャズの素晴らしさだと、私は確信させられるのでした。

ということで、熱血してゾクゾクするB面、「How Are Things In Glocca Morra」の名演が入っているA面という、ちょっと人気と評価が分かれていしまう作品かもしれません。個人的にはジャズ喫茶ならB面という感じですが、自宅鑑賞ではA面でしょうか。

まあ、このあたりの嬉しい悩みはCDで解消されるわけですが、なんかこのアナログ盤のジャケット問題が妙に心にひっかかり、なかなかLPから離れられません。

おそらく紙ジャケット盤ならば、この両方の問題も解消されるんでしょうけど、古い体質のサイケおやじには、寝ているソニー・ロリンズが合っているのかもしれません。なんだか寝釈迦観音に見えてきましたよ。

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