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サイケおやじの生活と音楽

好きなんだけど……

2006-01-11 18:06:19 | Weblog

独断と偏見は私の持ち味です。もちろん何事につけても思い入れが強いのが欠点です。そんな私が愛聴しているのが、このアルバムということで、ご理解下さい――

Page 2 / ジョージ大塚トリオ (Takt)

日本の独自の文化であるジャズ喫茶の中で、かつて日本のジャズは大いにバカにされた時期がありました。その理由はリズムがズンドコである、やってることがデッド・コピーだ、云々……。確かにそのとおりのところがあります。

しかしその中でも優れた作品が無いわけではありません。例えばこのアルバムは、そういうリズム的な弱点が逆にジャズになっているという稀有な名作だと思います。

メンバーはジョージ大塚(ds) をリーダーに市川秀男(p)、寺川正興(b) という俊英が揃い、録音は1968年です。

まずA面初っ端が当時流行していたジャズロック調の「Hot Cha」で、案の定、ジョージ大塚のドラムスがズンドコビート丸出し! 今の耳にはそれだけに気をとられていると素直に楽しめません。しかし寺川正興のベースが微妙にそのあたりの隙間を埋めているので、全く変態なポリリズムが生まれています。そしてそのウネリの上で市川秀男のピアノが楽しいアドリブ・メロディを次々に聞かせてくれます。

例えばこの曲を今の日本のジャズメンが演奏したら、多分もっとカッコ良く仕上げてしまうでしょう。もちろんそれは分かっています。ただ私は、ここでのジョージ大塚トリオの演奏がどうしても憎めません。

続く2曲目は今やモダンジャズの定番スタンダード「On Green Dolphin Street」で、ご存知のように内外に素晴らしいバージョンが多数存在していますから、これを名演にするのには並々ならぬ度量が必要ですが、結論からいうと、この演奏は見事です。

出だしはトリオのメンバーが縦横に絡むフリーなパートで、これが2分26秒目あたりからアップテンポでお馴染のテーマが弾き出されるという展開になり、そのまんま、モードを主体としたハードな演奏に突入していきます。もちろんトリオのメンバー間では、所謂インタープレーが演じられ、かなり危なっかしい部分も含んでのスリル満点! つまり収拾がつかないような混乱状態とリズムの破綻が間違いなく存在しており、如何にも日本人っぽいリズムとビートがジャズというアフリカ&ヨーロッパの伝統に切り込んでいく瞬間が、何度も楽します。

それはフリージャズという道がつけられていた当時ならではの状況に助けられているのですが、それを約15分かけて、完璧に乗り切ってしまったこのトリオは凄いと思います。

こうして、かなり疲れた後のB面はスタンダードを耽美的に解釈した「I Fall In Love Too Easily」でスタート、これが和みます。もちろん基本はビル・エバンスのバージョンに置いていますが、市川秀男の繊細なピアノ、それに絡みつく寺川正興の打ち震えるようなベース、空間を生かしたジョージ大塚のドラムスが、上手く溶け合った演奏になっています。

そして次がハードバップな「Blues By Five」ですが、ここでも完全にモード&フリーのイケイケ状態! トリオのメンバーが完全にバラバラでありながら、行きつ戻りつしていく様はジャズの醍醐味のひとつだと思います。

続く「Lament」は哀愁モダンジャズ曲のひとつ♪ ここでの演奏も、かなりハードなところを含んでいますが、その部分を裏切っていません。特に市川秀男のピアノは硬質なリリシズムというか、ズバリ良いです!

ということで、かなり賛否両論がある作品だと思います。ダサい! と一刀両断も良し、密かに隠れて愛聴するも良し、名盤と持ち上げて布教活動するも良しという、実は人気盤だと思います。

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