OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

不思議を覚えたキントンに導かれ

2014-05-10 15:03:10 | 歌謡曲

グッド・ナイト・ベイビー / ザ・キング・トーンズ (ポリドール / 日本グラモフォン)

今となっては昭和歌謡史に残る大ヒット曲であり、至極当たり前に聴かれているキング・トーンズの「グッド・ナイト・ベイビー」も、しかしこれが最初に流行り始めた昭和43(1968)年末頃では、少なくとも少年時代のサイケおやじに大きな衝撃を与えた1曲でした。

だって、それまでの芸能界で男性コーラスグループといえばダークダックスやデューク・エイセスあたりの重唱系、あるいは東京ロマンチカのようなムード歌謡系が主流でしたからねぇ~、それに比べてキング・トーンズの発する妙に濁った感触は、何なんだぁ~~~!?

ってな、不思議に囚われてしまったんですよ。

ご存じのとおり、それは黒人音楽の中でもドゥー・ワップと呼ばれるコーラススタイルに基いていたんですが、既にその頃には黒人コーラスグループもテンプテーションズやフォー・トップス等々に代表されるソウルミュージックに変わっていた事もあり、サイケおやじはキング・トーンズに接する以前、そうした音楽形態があるなんて、知る由もありませんでした。

しかも当時の日本のレコード産業においては、本格的な黒人ドゥー・ワップ物は極めて少数しか出ていなかったんじゃ~ないでしょうかねぇ……。

正直、全く何を聴いていいのか、分からなかったんですから、キング・トーンズがリアルタイムでやっていた真意が、果たしてサイケおやじに理解出来ていたかも、心許ない限りです。

ところが、それでも「グッド・ナイト・ベイビー」が大ヒットしたのは、歌謡曲には必須の下世話さと黒人音楽特有の「泣きメロ」が上手く融合された結果なのかもしれません。

とにかく作詞:ひろまなみ&作曲:むつひろし、そして編曲:早川博二が目指した本物のR&B歌謡は、内田正人、成田邦彦、石井迪、加生スミオの顔ぶれからなるキング・トーンズによって、見事に結実したわけです。

特にリードを歌う内田正人は「スカイテナー」と称されるほどの澄みきったハイトーンボイスで、一度聴いたら「グッド・ナイト・ベイビー」を絶対に忘れられない印象へと導く必殺技でしょう。

ちなみに作曲したむつひろしは、和田アキ子の「どしゃふりの雨の中で」や町田義人の「裏町マリア」、浅川マキの「ちっちゃな時から」、石川セリの「八月の濡れた砂」及び同映画の劇伴奏サントラ等々、黒っぽい胸キュンメロディをどっさり書いていますので、要注意! 一説によると、この「グッド・ナイト・ベイビー」を作った頃はポリドールの洋楽ディレクターだったと言われています。

ということで、もしも「グッド・ナイト・ベイビー」に出会わなかったら、サイケおやじがソウルミュージック、殊更黒人コーラスグループのレコードに関心を持てたかは、なかなか曖昧な問題と思います。

それは実際、その頃の我国で流通していた、例えばドリフターズやブラターズあたりのヒット盤における意図的な白っほさに納得出来なかった結果にも明らかでしたし、いよいよ数年後に本格化するフィリー系ソウルの諸作に邂逅するまでの暗黒期(?)があればこそ、キング・トーンズが及ぼした影響の大きさは、相当に大きかったのです。

また、もちろん、さらに後年、シャネルズの登場によって我が国で本格化したドゥー・ワップの大ブームにしても、そこに至るR&Rリバイバルで注目されたアメリカのシャナナ以上に、キング・トーンズの存在が感じられたわけでして、サイケおやじは歌謡曲と黒人音楽の相性の良さを思い知らされたというわけです。

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9 コメント

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大間違い (ちんたろ男)
2014-05-11 09:47:25
ハ行で歌うととっても感じが出る「グッドナイト・ベイビー」。二年ほど前に無性に聴きたくなってLPを手に入れました。再発ものでショボいジャケのやつです。裏ジャケが場末のキャバレーの控室みたいな写真の方が欲しかったなあ。で、ワクワクしながら針を下ろしてみると「あれ?君のパパも?君のママもじゃなかったっけ?」「あれ?じゃあ歌ってるのはパパじゃなくてだれ?」そう、ちんたろ男はずっと「ベイビー=赤ちゃん」で、なんかの事情で家を出ていく旦那が赤ちゃんに別れを告げている歌だとばっかり思ってたのね。ちんたろ男は黒人ブルースとかソウルはまるで受け付けないんだけど、ブリティッシュのブルースロックのように解体して組み立て直されたものは大好きです。キングトーンズも最高!ドゥーワップといえばカルチャー・クラブもうまく料理してましたね。
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許しが出たのよぉ~ (サイケおやじ)
2014-05-12 15:31:37
☆ちんたろ男様
コメント、感謝です。

ブルースロックは白人の発明品であり、歌謡曲は日本人のそれでしょう。
何れもルーツは他にあるのに、そっちよりも好まれるのは、それだけ汎用性が強いからじゃ~ないでしょうか?

キング・トーンズは、これまで数次のメンパーチェンジがあったので、同じ曲でもレコードやCDが出る度にミックスやテイクがちがっているものが幾つかあると言われています。
「グッド・ナイト・ベイビー」にしても、女性の声がはっきりと聞こえるバージョンを一度だけ、ラジオで聴きましたから!?
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「グッド・ナイト・ベイビー」テイクバリエーション (Rtwfn729)
2014-06-05 17:00:13
はじめまして、キングトーンズで検索してこちらにお邪魔しました。
この件、意外に内田さんご自身は「あ、そうなの?」でおしまいですし、突っ込んでお尋ねしても「もうウチらの手を離れてるからねぇ」しか仰いません。なにせ「ステレット33」シリーズの4曲入コンパクトをお見せしたときに「知らないよ、こんなの出てたの」と仰ったほどで(成田さんはしっかりご存知でした)、旧作には本当に頓着なさらない方です(笑)。
ところでポリドール音源の表題曲、最も目立った違いは'85年にカセットのみでベスト盤(20CX-1308)をリリースしたとき。ハイ上がりにイコライザ処理してリヴァーブをかけ直しています。昔は違和感を感じていましたが、CDリリースされたものはこの仕上げなので、これに慣れてしまうとオリジナルが荒削りに感じられてしまい、つくづく慣れとはおそろしいと感じます。
「♪涙こらえて」でのシンガーズスリーのバッキングは、レコーディングで思う通りのイメージで歌えなかったからだとはご本人の弁ですが、改めて'69年春にTBSで収録された映像(再編集されたものが動画サイトにありますね)をみると、トミー・チャーリーに交代した時代の歌い方に比べて「こらえて」が「こぉらえ」("ぉ"で音程をあげています)、そして「てぇー」が歌い辛そうなのが判りますね。
しかし、この部分、ご本人から伺うまでは内田さんのボーカルをオーバーダビングしたとばかり思っていましたし、氏のファルセットは女声コーラスをかぶせても違和感を感じませんでした。本当にすごい才能ですね。
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こらえる涙の素晴らしさ (サイケおやじ)
2014-06-06 14:50:44
☆Rtwfn729様
ようこそ、いらっしゃいませ。
仔細なフォロー&コメント、感謝です。

女性コーラスの参加があっても、それがナチュラルに響くところが素晴らしいですねぇ~♪
ご紹介のベスト盤カセットは、これからの探索対象にさせていただきますし、CDは持っていないので、速攻でゲットしたいと思います。

それと「グッド・ナイト・ベイビー」のディスコバージョンもありましたよねぇ~~♪ なにかのLPに入っていたと記憶しているんですが、探してみようなかなぁ~。

独断と偏見ばかりの拙ブログではありますが、これからもよろしく、お願い致します。
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Re:こらえる涙の素晴らしさ (Rtwfn729)
2014-06-06 17:40:30
さっそくのご返信ありがとうございます。
ディスコ・バージョンは1978年にツバキハウスの企画アルバム「サタデー・ナイト・フィーバー IN 東京」(MR-7040)が初出(ライブっぽく仕立てられていますが、ご本人に確認したところ、やはりスタジオ収録でした)で、3001年にリリースされた2枚組CD「コンプリートコレクション」(UPCH-1093/4)でCD復刻されています(そのCD、コンプリートと謳っている割に収録漏れも多く、オークションサイトでトンデモ価格なのが多く心臓によくありませんww)。なおキングトーンズのディスコグラフィーをこちら( https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B6%E3%83%BB%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%BB%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%BA#.E3.83.87.E3.82.A3.E3.82.B9.E3.82.B3.E3.82.B0.E3.83.A9.E3.83.95.E3.82.A3.E3.83.BC )に全盤掲載していますので、ご購入の参考にして頂ければ幸いです。
返信する
自己レスです (Rtwfn729)
2014-06-06 22:52:26
「3001年」て、我ながら笑ってしまいました・・・
もちろん「2001年」のタイプミスです
返信する
新企画希望 (サイケおやじ)
2014-06-07 15:27:38
☆Rtwfn729様
連日のフォロー、感謝です♪

ご紹介の資料から、音盤探索の作業も熱が入りそうですよ(笑)。
キングトーンズはマニアックな対象としても立派に成立しているグループですから、各方面で様々な企画が出来ているわけですが、リーダーがそれに拘らないとあっては、コンプリートな復刻、あるいは貴重音源の復刻も難しいのでしょうか……。

聴かれ続けて、新しいファンも付いているのですから、英断を望みたいですねぇ~~。
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Re:新企画希望 (Rtwfn729)
2014-06-08 00:16:49
サイケおやじ様
こちらこそ、連投のコメントにご返信頂き有難うございます。
Wikipediaのキントンのページは、4年ほど前に内容の不正確さに驚き、資料をかき集めて大幅に書き直したのですが(参考文献として掲載されているものは、全て私の手持ち資料です)、ディスコグラフィーは細かく書き過ぎて「そんなことはブログにでも書け」とヒンシュクを買うのではないかと内心ビクビクしておりました。貴兄に好意的に見て頂けたと知り、胸を撫で下ろしています。
現在はオークションサイトの浸透もあり、激レアと言われるものでさえ(落札難度を別にすれば)目にする機会は多いですが、私が集めていた1980年前後はコレクター同士の情報交換も「腹の探り合い」同然、トンデモ価格を平気でつける中古レコード店も少なくなかったですから、それを思うと隔世の感がありますねww。おまけにCDの時代になると田代みどりのようなトンデモ価格が普通に思えた音源がスクラッチノイズとは無縁になって大盤振る舞い。貧乏学生だった私にとって唯一の青春を感じさせてくれたキントンのポリドール音源を、文字通りコンプリート収録してくれれば、それ以上欲は言わないのですが…って、それ自体が欲張りでしょうかね???www
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タイムマシンが欲しいですよ (サイケおやじ)
2014-06-08 07:44:31
☆Rtwfn729様
コメント、ありがとうございます。

貴兄の熱い気持ち、充分に共感して、感服する次第です。

中古市場に対する往年の事情は全くそのとおりで、売っているブツの価格を他の店に流したり、コレクター各々が自己満足と見せびらかしに狂騒していたのも、自嘲しつつ、複雑な気持ちでありました。

そんなの、今頃、聴いてんの!?

なぁ~んて、バカにされながら集めるレコードには、それだけ思い入れも深くなるわけでして、そういう純情をレコード会社の復刻担当者には、ぜひともご理解願いたいものですねぇ。

これからも、よろしくお願い致します。
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