OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

待ち望んだ復刻盤

2007-07-30 18:33:55 | Weblog

いやはや、昨夜の与党敗北から本日の総理大臣の煮え切らない会見まで、これが日本の現実とは言いながら、個人的には若尾文子様が当選できなかったのが、悔しいところ……。

まあ、いいか……。

ところで昨日、久々にCD屋にネタを仕入れに行ったところ、やっぱり、ありました! これが本当にびっくりするようなブツだったんですねぇ――

Tommy Potter's Hard Funk (Metronome / Lonehilljazz)

トミー・ポッターは全盛期チャーリー・パーカー・クインテットのレギュラーだった黒人ベーシストで、このアルバムは1956年の巡業で訪れたスウェーデンで吹き込まれた演奏の復刻CDです。

この音源は本来、EPとしてスウェーデン国内を中心に発売されていたものですが、アメリカでは6曲だけがアトランティックの傍系だった「East / West」という超マイナーレーベルからLPとして出されていましたし、我国でも収録曲を変えて発売されていた時期があったものの、現在では全てがウルトラ級の幻盤として人気を集めている一級品です。

というのも、このセッションに集められたのが、本場アメリカの実力者と地元の精鋭達ということで、当に一期一会的な名演になっているからです。

録音は1956年9月、メンバーはフレディ・レッド(p)、トミー・ポッター(b)、ジョー・ハリス(ds) という黒人リズム隊に加えて、ロルフ・エリクソン(tp)、オキ・ペルソン(tb)、エリック・ノーストレム(ts)、Hacke Bjorksten(ts)、Stig Garbrielsson(bs)、そしてベニー・ベイリー(tp) という顔ぶれが、様々に編成されて熱演を繰り広げています――

01 The Imp (1956年9月10日録音)
 フレディ・レッドが書いた得意の哀愁ハードバップ曲で、景気の良いリズム隊に煽られて、まずアドリブの先発は Hacke Bjorksten のテナーサックスが、なかなかに黒っぽく歌います♪ さらに続くトロンボーンのオキ・ペルソンは、明らかにフランク・ロソリーノ系の屈託の無いスタイルで、これも素晴らしいですねぇ。
 そしてフレディ・レッドがビバップに忠実ながら、愁いの滲むアドリブソロで、たまりません。次に出るロルフ・エリクソンのトランペットも歌心がたっぷりです♪
 リズム隊ではジョー・ハリスのメリハリの効いたドラミングが強烈ですし、トミー・ポッターは堅実なサポートで場を仕切っているのですが、全体の勢いが如何にもハードバップになっています。

02 Keester Parade (1956年9月13日録音)
 天才作曲家のジョニー・マンデルが書いたグルーヴィな隠れ名曲ですが、ここでは尚一層に明るく楽しく、黒っぽくを目標に演奏されています。
 もちろん、ここでもリズム隊が本場のノリを遺憾なく発揮していますから、スウェーデンの精鋭達も懸命の力演で、特にアドリブ先発のロルフ・エリクソンは相等に黒いです。
 またオキ・ペルソンの爆裂さ加減もイケていますし、フレディ・レッドはシンプルなフレーズの積み重ねで上手さを聞かせてくれます。トミー・ポッターのベースソロも味わい深いですねぇ~♪
 そしてここでのテナーサックスは、個人的にも大好きなエリック・ノーストレムで、そのズート・シムズとリッチー・カミューカの中間を行くスタイルは素晴らしい限り! 部分的にはスタン・ゲッツのフレーズまでも引用しながら、その本質はグルーヴィという隠れ名人です。

03 Russ And Arlene (1956年9月13日録音)
 これは西海岸派特有の明るく軽快な曲ですから、スウェーデンの連中にはジャストミートなんでしょう、流麗なスタイルのアドリブソロが連発されます。
 しかしリズム隊が黒いグルーヴを発散させていますから、油断がなりません。特にロルフ・エリクソンは、かなりハードバップに近いノリで、好感が持てます。
 あぁ、それにしてもエリック・ノーストレムのテナーは良いですねぇ~♪ スタン・ゲッツあたりが好きな人は、思わずニンマリでしょう。
 そしてトミー・ポッターのツッコミ鋭いベースソロと煽りまくるジョー・ハリスのドラムス、さらにデューク・ジョーダンに近くなっているフレディ・レッドの哀愁ピアノには、ジャズの素晴らしさが凝縮されていると感じます。

04 Punsch (1956年9月13日録音)
 ロルフ・エリクソンが書いた強烈なハードバップ曲ですから、リズム隊も対抗意識を丸出しにした激しさで、熱くなります。特にジョー・ハリスが大ハッスル! この人のドラムス中心に聴いているだけで、満足してしまいます。
 もちろんホーン陣も負けていません。溌剌と疾走するロルフ・エリクソン、流麗にスイングするエリック・ノーストレム、豪快なオキ・ペルソンと、一部のスキも無いのです。
 そしてフレディ・レッドの哀愁ピアノが、ここでも魅力絶大なんですねぇ~~♪ ちょっと聞きは地味なんですが、ジワジワと滲みてくる味わい深さは絶品です。バッキングも上手いですから、じっくり楽しんで下さいませ♪
 肝心のトミー・ポッターも大活躍のベースソロが強烈です。

05 T.N.T. (1956年9月10日録音)
 これも本来は明るく溌剌とした西海岸系のハードパップ曲なんですが、このリズム隊のおかげで、とんでもなく黒い演奏になっています。
 まずフレディ・レッドのピアノはファンキーの塊ですから、オキ・ペルソンも黒人の様式美を取り入れた熱演を聞かせてくれます。トロンボーンの音色そのものが、実にジャズっぽいんですねぇ♪
 また、ここでのテナーサックスは、再び登場した Hacke Bjorksten ですが、太めの音色でタフテナー系のブロー攻撃です。さらに倍テンポフレーズを多用するロルフ・エリクソンも、なかなかの好演ですから、トミー・ポッターもネバリのバッキングとアドリブソロで貫禄を見せつけるのでした。

06 Reets And I (1956年9月10日録音)
 これはビバップの定番曲なので、リズム隊は余裕たっぷりなんですが、ホーン陣は懸命なところが名演に繋がっています。
 特にノリが良いオキ・ペルソン、イキの良いロルフ・エリクソン、豪放な Hacke Bjorksten に対して小粋なフレディ・レッドが素晴らしいですねぇ。ちなみに Hacke Bjorksten のテナーサックスも基本はレスター派の白人系なんですが、その音色の黒っぽさが魅力です。

07 Spontanedus (1956年9月13日録音)
 ロルフ・エリクソンが書いた、これも隠れ名曲というハードバップです。ラテンリズムを使ったテーマが、ちょっとイカス雰囲気♪
 そしてアドリブのテナーサックスが、ここではまたまたエリック・ノーストレムに交代していますが、素晴らしいですねぇ~♪ 続くオキ・ペルソンとロルフ・エリクソンも熱演なんですが、ここはやっぱりエリック・ノーストレムの快演に拍手です♪ あぁ、このノリと歌心! バルネ・ウィランとか好きな皆様ならば、完全に虜になるでしょう。ソフトな音色とスマートなノリに加えて、そこはかとないグルーヴィな雰囲気が、私は好きでたまりません。
 気になるリズム隊は、ここでも余裕の展開ですが、決して手抜きではなく、恐さ丸出しの強烈な存在感が見事! ジョー・ハリスのドラムソロなんか、アフリカ原住民のノリがモロです。

08 Tunnelbanen (1956年9月16日録音)
 ここから以下の曲は、ベニー・ベイリーのトランペットを主役にしたワンホーン編成となりますが、リズム隊の快調さは継続され、いや、むしろ黒人ばっかりの統一されたノリが痛快です。
 特にベニー・ベイリーのスタイルは、ちょっとやんちゃな雰囲気がありますから、このリズム隊にとっても相性が良いというか、全体が溌剌とした楽しさに満ちている感じです。

09 Star Eyes (1956年9月13日録音)
 有名なスタンダード曲を、ここではゆったりと演奏していますが、リズム隊が生み出すグルーヴィなノリは、当にハードバップの醍醐味に満ちています。
 ベニー・ベイリーはミュートで端正に迫っていますし、思わせぶれも交えたアドリブは歌心もいっぱい♪ さらにフレディ・レッドのピアノが愁いを滲ませながらも、ちょっと突っぱねた感じですから、何度でも聴きたくなってしまいます。
 それとトミー・ポッターのペースソロも、良く歌っていますねぇ~♪ ジョー・ハリスのブラシが強すぎる感じですが……。

10 What Is This Thing Called Love (1956年9月13日録音)
 これもモダンジャズでは幾多の名演が残されているスタンダード曲ですが、またまたベニー・ベイリーのミュートが鮮やかですから、これも名演の誕生だと思います。
 ミディアムテンポでグルーヴィな雰囲気を醸し出すリズム隊も存在感がありますし、思わせぶりがたっぷりのベニー・ベイリーは、至福のアドリブに撤していて、本当に素敵です。

11 Guessin' (1956年9月13日録音)
 オーラスは楽しさ満点のハードバッブですが、その源はジョー・ハリスの調子の良いドラミングでしょう。ドドンパも入れながら、快適なビートを敲き出すあたりは、ジャズの楽しさがいっぱいです♪
 そして全てを任せきったベニー・ベイリーの屈託の無さに存分に応えるフレディ・レッドの伴奏が、これまた素晴らしいです。ただ、惜しむらくはベニー・ベイリーのアドリブ構成に、ちょっと破綻があるところでしょうか……。全体が快調なだけに勿体なかったですねぇ~。
 いや、それでも、やっぱりこれも名演です。

ということで、全曲が楽しく溌剌としたハードバップです。ただし似たようなテンポの曲が多いので、正直、CDを聴き通すと飽きが来るかもしれませんねぇ……。

しかし、このリズム隊の素晴らしさは聞いていて気持ちが良いです。特にジョー・ハリスは、一般的には無名に近い存在ですが、こんなにメリハリのあるドラマーは、ちょっと珍しいかもしれません。まあ、それゆえに、ひとつ間違えるとイモ扱いなんでしょうが……。

またフレディ・レッドの魅力である、そこはかとない哀愁は存分に楽しめますし、トミー・ポッターの実力も確認出来るでしょう。やはりこういう人たちが、地味ながらもモダンジャズの黄金期を作り出していた証のようなセッションだと思います。

そしてスウェーデンの精鋭達も、本場のリズム隊にビビリながらも嬉々として演奏を楽しんでいるようが、アリアリです。それは全く聴き手にとっては、ありがたい事♪

ちなみに、このCDジャケットは、前述した「East / West」レーベルから発売されたアメリカ盤LPのジャケ写を使っているらしいのですが、それにしても「Hard Funk」は言い過ぎたタイトルでしょう。けっしてホレス・シルバー(p) あたりの演奏を期待してはなりません。あくまでも正統派のハードバップであり、また同時に西海岸派の色合も強いです。

そして実は、この時の一連のセッションには、まだ続きがあって、それは後日、復刻発売されるらしいことが解説書に記してありました。あぁ、凄く楽しみだぁ~~~!

最後に気になる音質ですが、なかなかシャープなマスタリングゆえに、元テープの劣化までも分かってしまうあたりが、賛否両論でしょう。ただし昔出た日本盤LPとは雲泥の差ですから、充分に納得して楽しめると思います。

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