OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

煮詰まりの魅力

2007-07-27 15:34:07 | Weblog

今日はセミが煩いなぁ~。まあ、夏だから仕方ないのかもしれませんが、それにしても、今年はセミが多すぎるような気がしますねぇ。

それと異常に暑いです。ほとんど麦茶をガブ飲み状態……。なんか最近は体力が落ちているのを痛感しています。

ということで、本日は――

Silver's Serenade / Horace Silver (Blue Note)

全盛期ホレス・シルバー・クインテットの1枚ですが、傑作・人気盤が多いその時期の中では、おそらく一番地味な作品でしょう。

というのは、もちろん全てをホレス・シルバーが書いたんですが、派手で覚え易い曲が入っていなんいですねぇ……。しかし、それでも充分に聞き応えがあるのは、ジャズの世界では珍しいレギュラー形態だったバンドメンバーの纏まりの良さ! 特にブルー・ミッチェルとジュニア・クックの分かり易いアドリブと阿吽の呼吸で盛り上げるリズム隊の存在感が、本当に良い味です。

録音は1963年5月7&8日、メンバーはブルー・ミッチェル(tp)、ジュニア・クック(ts)、ホレス・シルバー(p)、ジーン・テイラー(b)、ロイ・ブルックス(ds) という、B級グルメっぽい面々です――

A-1 Silver's Serenade
 明るくて、やがて哀しき宴の後のような、ジンワリと心に染み入るテーマメロディが、地味ながら味わい深い名曲です。
 アドリブパート先発のブルー・ミッチェルは、何時ものように分かり易いフレーズを積み重ね、じっくりと聞かせる背後では、ジーン・テイラーのベースが実に印象的! それは続くジュニア・クックのパートでも同じですし、ホレス・シルバーの沈み込んだような伴奏も???ながら、やっぱり聴き入ってしまいますねぇ。これがモダンジャズの魔法なのかもしれません。
 肝心のホレス・シルバーのアドリブは、当然、ビアノトリオ形式になりますが、ロイ・ブルックスのブラシとジーン・テイラーのベースが妙に目立つほど、地味~な展開です。もちろん十八番のリズミックなノリもやっているんですが、こんなに落ち込んでいるホレス・シルバーは珍しいのでは?

A-2 Let's Get To The Nitty Gritty
 ゴスペル調も入ったミディアムテンポのハードバップ曲なんですが、ここでも落ち込みモードが継続という雰囲気です。
 もちろんブルー・ミッチェルは明るくファンキーなフレーズを吹きまくり、ジュニア・クックはダークな音色でゴリゴリに迫っています。さらにロイ・ブルックスのゴスペル味のドラミングは最高なんですが、う~ん、何故か演奏そのものが煮えきりません。
 ホレス・シルバーにしても、得意のゴンゴン鳴らすコード弾きに加え、暗く蠢くような伴奏と飛び跳ねるアドリブソロで、なんら問題は無いはずなんですが、こんな黒い情念の表出は似合っていないと感じます。
 ただし、何度か聴くうちに中毒症状になるのも、また事実です。明らかに自己矛盾した快感に浸ってしまう演奏という……。

B-1 Sweet Sweetie Dee
 これも重たいような、煮え切らないような、はっきりしない曲なんですが、ブルー・ミッチェルとジュニア・クックの踏ん張りで、どうにかハードバップの体裁を保ったような演奏です。
 もちろんホレス・シルバーは伴奏、アドリブソロともに個性的なんですが……。ちょっと煮詰まったゴッタ煮のような、私には味が濃すぎます。

B-2 The Dragon Lady
 これまたリズム隊の重たいグルーヴが要注意の演奏です。
 全体にはスローな部分ばかりなんですが、突如、明るいパートが表れたして、疲れます。
 ただしバンド全体での表現としては、これで良いのかもしれません。通常のハードバップのような、アドリブソロの競演や個人技の応酬よりも、グループとしての完成された演奏を目指したホレス・シルバーの目論見なんでしょうか?

B-3 Nineteen Bars
 オーラスになって、ようやくホレス・シルバーのバンドらしい、痛快な曲が登場しました。あぁ、今までの苦行は、この一瞬のための布石だったんでしょうか……?
 とにかくアップテンポで炸裂するホレス・シルバーのド迫力伴奏に煽られて、ジュニア・クックが直線的に疾走すれば、ブルー・ミッチェルは単純明快なボケとツッコミを連発し、その場を完全にハードバップ色に染上げていきます。
 そしてホレス・シルバーが、これぞっ♪ という鬱憤を晴らしてくれる大暴走です。あぁ、スカッとしますねぇ!

ということで、イマイチ、精彩の感じられないアルバムなんですが、個人的には「Let's Get To The Nitty Gritty」のドロドロした演奏が好きでたまりません。というか、中毒に侵されている感じです。

ちなみに、このバンドはアルバム発売直後に解散しているようです。そしてホレス・シルバーはジョー・ヘンダーソン(ts) やカーメル・ジョーンズ(tp) を雇い入れた新編成で「ソング・フォー・マイ・ファーザ (Blue Note) 」のメガヒットを飛ばし、ブルー・ミッチェルとジュニア・クックは盟友として明るく楽しい活動を共にしていくのです。

その意味からして、このアルバムの煮え切らなさは必然が当然という雰囲気でしょうか。つまりレギュラーのバンドとしては煮詰まっていたんでしょうねぇ……。

しかし、そういうギリギリの腐りかけが、クセになる美味しさといったら顰蹙でしょうか。

追伸:本日は天知茂の23回忌です。そこで本サイト「サイケおやじ館」にて、追善掲載を行いました。「乱歩・美女シリーズ / 黒真珠の美女」です。よろしければ、ご一読願います。

 

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