OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

裏方ダニー・コーチマーの基本姿勢

2010-04-05 15:24:27 | Rock

Kootch / Danny Kortchmar (Warner Bros.)

ダニー・コーチマーはジェームス・テイラーの幼馴染みとして度々の共演が残され、そこでの決して脇役に留まらない活躍は、唯の優れたギタリスト以上のものがありました。

と書き始めていながら、私にしてもダニー・コーチマーを知ったのはジェームス・テイラーの諸作におけるギタリストとしての存在でしたから、その不思議にファンキーでジャズっぽく、しかも巧みな伴奏とカキクケコ系のソロフレーズの魅力に惹かれたのが偽りの無い気持!

ですから、ダニー・コーチマーがソロアルバムを出したという情報を知った瞬間、これはどうしても聴かなければという強い覚悟に突き動かされたのも、当然が必然でした。

そこで本日の1枚が、その該当アルバムというわけですが、ギタリストの作品集にしてはギターソロが少ないという、些か肩すかしな作りになっています。しかし、やっている中身はサイケおやじが大好きなファンキーロックがメインでしたから、結果オーライ♪♪~♪

 A-1 Put Your Dancing Shoes On
 A-2 Up Jumped The Devil
 A-3 Got To Say So Long
 A-4 For Sentimental Reasons
 A-5 Burnt Child
 B-1 Your So Beautiful
 B-2 My Mind Made Itself Up About You
 B-3 Don't Jump Salty
 B-4 Come Strollin' Now

今となっては「For Sentimental Reasons」の大名演が有名の極みですが、最初に聴いた時の印象は、とにかく全篇のグルーヴの統一感でした。

それはダニー・コーチマー本人のプロデュース、そして歌とギターばかりではなく、なんとベースとドラムスも自ら演奏して作り出していたのです!?!

ご存じのとおり、当時のダニー・コーチマーはジェームス・テイラーのバックバンドから発展したセクションというインスト系のバンドもやっていたので、このリーダー盤も、てっきり同じメンツが集合しているという先入観がありましたから、これは意外でした。しかもリズムとビートの決まり方が本当に違和感無く、むしろセクションの時よりも個人的には気に入ってしまったほどです。

ただし、それでも全てを自分でやることは無理だったのでしょう。助っ人して前述したセクションの仲間だったグレイグ・ダーギ(key)、ウィリアム・スミス(key)、ジム・ホーン(sax,fl)、ダク・リチャードソン(sax)、アビゲイル・ヘイネス(vo) が適材適所に登場しています。

で、収録された歌と演奏は、前述の「For Sentimental Reasons」を除いてダニー・コーチマーのオリジナルですが、特に素敵なメロディの曲はありません。しかし、そうした抑揚の少ないメロディラインをリードしてくのが、まさにファンキーというリズムのウネリ♪♪~♪ そしてアビゲイル・ヘイネスと共謀した刹那的で熱いコーラスワーク、そうした目論見を達成するアレンジの素晴らしさでしょう。もちろん多重録音が駆使されていますが、同時にシンプルなノリが大切にされているのは、特筆されます。

そのあたりは同じ頃にジワジワと流行り始めたニューオリンズ系のファンク、そしてゴスペルロックや初期フュージョン特有のゴッタ煮グルーヴということで、実際に聴いて、熱くなっていただく他はないんですが、おそらくは十人十色の好き嫌いが明確だと思います。

というのも、結果的にこのアルバムは全然売れなかったらしく、1970年代後半には我国でもカットアウト盤が大量に出回っていました。

それがどういう経緯か、唯一のスタンダード曲だった「For Sentimental Reasons」の快楽性が再発見され、所謂クラブなんていう場所で大人気となったんですから、時の流れは偉大です。

実際、ここでの「For Sentimental Reasons」はナット・キング・コールやサム・クックが歌っていた時と同じ、本当にジェントルな曲メロを大切にしながらも、弾むようなファンキーグルーヴとシンプルなビート感を提供するギター、ベース、そしてドラムスという、ダニー・コーチマー自らの単独演奏が素晴らしすぎます。

当然ながら、リアルタイムで聴いていた時からサイケおやじは、この「For Sentimental Reasons」が特に好きでした。決して上手くはないんですが、優しさが感じられるボーカルも良い感じ♪♪~♪

こうして以降、私はダニー・コーチマーをギタリストというよりも、プロデューサー的な感覚で探求することになりました。つまり提供されるファンキーロックな音楽性にシビレたわけです。

そして「つづれおり」でブレイクする前のキャロル・キングと組んでいたシティ、それが解散した後、このアルバムにも助っ人参加したアビゲイル・ヘイネスも在籍していたジョー・ママという、当時は過小評価されていたバンドのレコードに邂逅したのです。

またその過程で知り得た情報によれば、ジェームス・テイラーが最初にアップルレコードと契約したのも、ダニー・コーチマーが下積み時代にピーター&ゴードンのアメリカ巡業でバックバンドのギタリストを務めたコネによるものという事実さえ浮かび上がってきたのですから、この人は本当に裏方の重要人物だなぁ~、という思いを強くしています。

そういう部分は1970年代の西海岸系シンガーのバックバンドの要として、あるいは同系のスタジオセッションにおいても、優れたギタリストとしての活躍ばかりが注目された事実と符合するもので、せっかくジム・ケルトナー(ds) やデイヴィッド・フォスター(key) と組んだ、最高にカッコ良いアティテュードというバンドもブレイクせず……。

結局、それは不運というよりも、ダニー・コーチマーの裏方が似合う資質の所為なんでしょうか。

今となっては、このアルバムに収録された「For Sentimental Reasons」の永遠の輝きだけが、唯一のスポットライトなのかもしれません。

まあ、それはそれでファンとしては嬉しいという気持ではありますが……。

最後になりましたが、我国でのこのアルバムの影響はかなり大きく、例えば鈴木茂のファンキーなギターワーク、あるいは山下達郎がやっていたバンドのシュガー・ベイヴ等々、所謂ニューミュージックへの貢献も相当だと思います。山下達郎も歌っていた伊藤銀次の「こぬか雨」は、「For Sentimental Reasons」だよなぁ~。

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