OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

悲しみの先に明日を見つめる

2011-09-24 15:55:18 | 歌謡曲

悲しみは駈け足でやってくる / アン真理子 (ビクター)

久しく疎遠になっていた親戚へ、彼岸の墓参りを兼ねて訪れる計画にしていたところ、先日の台風で件の親戚の家が少しばかり被災し、結果的に後片付けの手伝いをしてきました。

う~ん、前にも書きましたが、今年は本当に災害が多くて、誰も怨めないだけに、尚更辛く、悲しくなりますねぇ……。

個人的には災難や悲劇なんて、避けられないから悲劇になるという運命を甘受するしかないと達観していたつもりですが、今の我国の状況は政治や経済の最悪さも含めて、全く先が見えないといって過言ではないでしょう。

つまり、所謂暗い世相という事なんでしょうが、そんな時、ふっと口ずさんでしまったのが、本日ご紹介の「悲しみは駈け足でやってくる」でした。

サイケおやじと同世代以上の皆様ならば、この歌が大ヒットした昭和44(1969)年の状況はご記憶されているとおり、爛熟した文化が繚乱の昭和元禄真っ只中で、高度成長と表裏一体になった社会の歪みや権力の横暴、そして今となっては無益だったかもしれない学生運動の騒乱……。

そんなこんなが毎日のように様々な事件を頻発させ、それでいて国民は確かに明日を見ることが出来た、ある意味は幸せな時代だったと思います。

しかし、この「悲しみは駈け足でやってくる」は、イントロから暴風の如きSEと悪い予感に満たされたコーラスやストリングス、そして強いビートを弾き出すエレキギターとドラムスのリズムがキャッチーというよりも、実は耳触りな感触でした。

そして抑揚の少ないメロディをアンニュイなムードで歌うアン真理子の意想外に芯の強いボーカル!?

 明日という字は 明るい日とかくのね
 
 若いという字は 苦しい字に似てるわ

そう歌いながら、若さと明日を信じる気持を決して捨てず、しかし現実は、やっぱり厳しく、悲しいという……。

これは実際に彼女の歌い回しを聴いていただく他はないんですが、本人が綴った歌詞という真相を差し引いても、せつなさが拭いきれない仕上がりは、なかなか秀逸だと思います。

ちなみにアン真理子は和製ボサノバを歌う「ユキとヒデ」のユキとしてデビューし、その直後に「藤ユキ」と改名して歌謡曲の世界に転身、さらにアン真理子となって、このフォーク歌謡で大ヒットを飛ばしたという履歴がありますから、ここでボサノバフィーリングが絶妙の隠し味となった「悲しみは駈け足でやってくる」がジャストミートしたのも、その必然性は充分だったと思います。

ジャケ写で遠くを見ている彼女のポートレイトも、微妙に胸キュン♪♪~♪

ということで、今年もアッという間に秋となり、明るい話題と言えば「なでしこ」の大活躍ぐらいしか無いという世相の中、悲しみだけが取り残され、積み重なっていく現実では、もっと明るく景気の良い歌が求められるんでしょうが、何故か分かっているはずの自分にしても、「悲しみは駈け足でやってくる」が思い出されてなりません。

そういう時代の季節と言ってしまえば、それこそ悲しいわけですが……。

本日は暗い文章で、失礼致しました。

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