OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

時計!

2006-01-14 17:22:44 | Weblog

久々の休日、実家に帰っているのに野暮用が多くてスカッとしません。そこで本日はこれっ――

A Happy Afternoon / Dieter Reith (Saba)

ガッツーンときてグイグイ行くピアノが好きです。例えば1950年代のハンプトン・ホース、白人ではジョン・ウィリアムスとかドン・ランディあたりですが、今回の主役ディーター・ライスも、そのひとりです。

その素性は勉強不足で良く分からないのですが、どうやらドイツ系でヨーロッパを主戦場としているようです。しかも時代によって、自己のスタイルをその流行に合わせた作品を作っているようなので、なかなか正体が掴めません。なにせ最近はピップホップ入りのレア・グルーヴ盤まで出していますから……。

で、このアルバムはそんなディーター・ライスが一番ハードバップに近づいた作品で、録音は1966年8月23&24日、メンバーはディーター・ライス(p)、ペーター・ウィッティ(b)、チャーリー・アントリーニ(ds) のトリオになっています。

ちなみに、このアルバムの通称はジャケ写からそのまんまの「時計」です。

まずA面1曲目の「A Happy Afternoon」はアルバムタイトルにもなっているだけあって、出だしから暑苦しいばからの熱気が迸る豪快な演奏です。そのミソはビシバシのドラムスとブリブリに唸るベース! そこにガランガランと強引に乗っかってくるピアノが、最後までグイグイと突っ込んでいきます。これはディーター・ライスのオリジナルですが、その曲調・演奏スタイルはモードを取り込んだ本当に派手なものです。

こういうノリは2曲目の「酒とばらの日々」でも全開で、ここでは有名スタンダードの解釈に巨匠オスカー・ピーターソンのスタイルを借用しつつ、猛烈なスイング感を発揮して楽しく演奏していきます。トリオとしての一体感も申し分なく、黒いファンキー節と白人らしいスマートなセンスの織り交ぜ具合も絶妙です。

それは3曲目の「Blues」にも顕著で、タイトルどおり黒人感覚に挑戦するディーター・ライスは、最初から完全なピアノソロで最後まで手を緩めません。ちなみにこの曲もリーダーのオリジナルですが、テーマらしき部分は無く、即興の極みというところです。

そしてA面ラストはモダンジャズ定番の「On Green Dolphin Street」が鮮やかに演奏されます。それはお約束のラテンリズムをイケイケのビートに変換していくドラムスとベースのコンビネーションに支えられた軽妙なピアノという前半から、後半は完全にハードバップな様相を呈していくトリオ全体の素晴らしさです。とにかくブンブン唸るベースとビッシーンというオカズが最高なドラムス! 快演です。

B面に入っては、まず1曲目がバート・バカラックの有名曲「Wives And Lovers」というだけで嬉しく、それを巧に変奏しながら豪快にスイングさせていくディーター・ライスのピアノが最高です。ベースとドラムスもグリグリに迫っており、録音された音が歪むほどの音圧です。

そして続く「Just In Time」は洒脱にスイングしつつ、徐々にファンキー感覚を横溢させていくところが、本当にジャズの醍醐味になっています。このあたりは完全にオスカー・ピーターソンをお手本にしているのですが、ディーター・ライスはもちろんその域まで到達出来ない自己を認識し、あくまでも自分なりの歌心で勝負している姿勢が、逆に潔いと感じます。そしてもちろん、それをサポートしているのが、ドラムスとベースのイケイケ・リズム隊というわけです。

その後にくる「Fly To The Moon」はスローな展開で、再びソロ・ピアノで演じられますが、カクテル・ラウンジのスタイルにはなっておらず、中盤からは執拗な掻き回しでジャズを構築していきます。ただし個人的には、このあたりで甘さが欲しかったので、???ですが……。

そこでオーラスに演じられるのがスカッとした「How About Blues」で、これぞハードバップです! ただし、それほど黒人感覚が表出しているわけではなく、あくまでも白人らしいというか、これこそディーター・ライスがイメージしているブルースなのかもしれません。しかしそれでもトリオが一丸となって大団円に突っ込んでいく様は痛快です♪

ということで、これは1990年代になってから、ようやく一部のマニアによって持ち上げられた隠れ人気盤というところでしょう。実際、私はその頃に知り合いのコレクターから聴かせてもらい、そのあまりの素晴らしさに狂喜♪ 必死で頼み込みコピーしてもらったカセットを愛聴していました。

それが日本でCD化されたのが1998年で、この度、ようやく再プレスされるようです。豪快にスイングするピアノ・トリオがお好きならば、ぜひとも一度、聴いてみて下さいませ。ジャケ写からネタ元へリンクしてあります。

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