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サイケおやじの生活と音楽

四兄弟サウンドの魅力

2008-12-15 11:55:21 | Jazz

The Four Brothers....Together Again ! (Vik / RCA)

クラシックにサキソフォンカルテットという編成があるように、ジャズの世界にもサックスアンサンブルという楽しみがあります。

これが一般的に人気を集めたのは、白人ジャズオーケストラでは常に先進的な演奏を試みていたウディ・ハーマン楽団の第二次バンドによるところが大きいというのが歴史です。そしてそこにはスタン・ゲッツ(ts)、ズート・シムズ(ts)、ハービー・スチュワート(ts)、サージ・チャロフ(bs) という素晴らしい「四兄弟」が集められ、あまりにも印象的なサックスアンサンブルを聞かせてくれたのですが、そこに至る過程では、ジミー・ジェフリー(ts,bs) が陰の立役者だったというのも、歴史のひとつでしょう。

実はこの「四兄弟」サウンドは、決してウディ・ハーマン(cl,vo) のオリジナルのアイディアではなく、新しいバンド結成を目論んでいたウディ・ハーマンが、あるクラブに出演していた某バンドの演奏に感銘をうけ、そこに在団していた前述のサックスセクションを引き抜いたのが真相だと言われています。

しかしそこに居たジミー・ジェフリーだけが諸事情から参加出来ず、代わりに入ったのがサージ・チャロフだったというわけです。しかしジミー・ジェフリーは自分が書いていたアレンジだけは提供してバンドの基礎を作ったという、縁の下の力持ちを担当したのです。

こうしてウディ・ハーマンのオーケストラは1947年から「Four Brothers」や「Summer Equence」等々という、まさに歴史的な名演を残し、その要となった前述の「四兄弟」も、それぞれがスタアとなるきっかけを掴んだわけですが、しかしその裏側には、尚更に複雑な事情もあり、その「四兄弟」サウンドの成立には、他にサックスプレイヤーだけでもアル・コーン(ts)、アレン・イーガー(ts)、ブリュー・ムーア(ts)、そしてジェリー・マリガン(ts) あたりまでもが関わっていたと言われているのです。もちろん関連音源の録音セッションも同時期にいろいろと残されています。

まあ、それはそれとして、このアルバムはその人気「四兄弟」サウンドの再現を狙った企画セッション盤で、録音は1957年2月11日、メンバーはズート・シムズ(ts)、アル・コーン(ts)、ハービー・スチュワート(ts)、サージ・チャロフ(bs)、エリオット・ローレンス(p)、バディ・ジョーンズ(b)、ドン・ラモンド(ds)、そして特にアレンジャーとしてマニー・アルバムが参加しています――

 A-1 Four And One Moore
 A-2 So Blue
 A-3 The Swinging Door
 A-4 Four In Band
 A-5 A Quick One
 B-1 Four Brothers
 B-2 Ten Years Later
 B-3 The Pretty One
 B-4 Aged In Wood
 B-5 Here We Go Agin

――という上記演目は全て、素晴らしいサックスアンサンブルの妙技が堪能出来ます。もちろん各人が絶好調のアドリブも満載で、それは原盤裏ジャケットにソロオーダーが記載されていますから、ご安心下さい。

その似て非なる個性は、共通して持ち合わせるレスター派の流麗なスタイルに裏打ちされいますから、確固たる歌心とスマートなフレーズ展開は最高です。もちろんサックスアンサンブルは完璧で、そのイントネーションまでがバッチリ揃った、爽やかにしてスマートな響きにはシビレる他はないのです♪

躍動的な「Four And One Moore」や「Aged In Wood」、ふくよかなサウンドが心地良い「The Swinging Door」、痛快な合奏の「Here We Go Agin」、個人芸が冴える「A Quick One」、さらに「So Blue」のせつないムード等々、なかなかバラエティがあって、しかもビシッとスジが通った演奏ばかりですから、この手のサウンドが好きな皆様には必需品でしょう。また、レスター派サックスプレイヤーのファンにもオススメ♪ もちろんズート・シムズは絶好調だった時期ですからねぇ~♪ 言わずもがなの快演が楽しめますよ。

お目当ての「Four Brothers」再演バージョンは、オリジナルバージョンとは一味変えたアレンジがミソながら、そのスピード感と流麗なサックス合奏の醍醐味は尚更に鮮やかです。

ただしセッション全体の録音が完全に好き嫌いのある雰囲気で、リズム隊が極端に引っこんでいます。それゆえにサックスアンサンブルが思う存分に楽しめる結果にもなっているのですが、これが意図的なのかは不明……。

それと参加メンバーでは、バリトンサックス奏者のサージ・チャロフが、これがラストレコーディングです。なんとこの時は末期癌に侵されており、スタジオには車イスでやって来たという伝説も残されているほどですが、そのプレイは、とてもそんな事を感じさせない豪快な歌心がいっぱい! 素晴らしいの一言です。

ということで、ちょいとマニアックすぎる演奏集ではありますが、BGMとしても使えますし、それと知らずに聞いているうちにワクワクしてきますよ♪

しかし前述のようなリズム隊の存在感が薄い録音、それとモノラルミックスというあたりが減点対象かもしれません……。

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