■私の恋は自由形 / リサ (JAPAN / 徳間ジャパン)
昭和50年代後半の音楽業界で殊更猛威を振るった裏のブームが、フィル・スペクターに由来する「ウォール・オブ・サウンド=音の壁」と称されるサウンド作りでありました。
もちろん、ここで「昭和」と書いたからには、そのムーブメントは日本の歌謡界、「裏」と注釈したのは、マニアックな領域を証明する優越性を意味すると解釈していただきたいわけです。
で、それを趣味性の発露として牽引していたのが大瀧詠一であるとすれば、私淑する弟子筋のミュージシャン、そして信者たるファンであればこそ、挙って「らしい」サウンドに拘ったレコードを作り、それを探り出しては端座(?)して聴き入るのが、所謂「通」の執るべき態度だった時代が、確かにあったのです。
さて、そこで本日掲載したのは、そんな裏ブームが表立った昭和58(1983)年7月に発売された、これがディープなキワモノ歌謡ポップスであり、スペクターサウンドとテクノロックの理不尽な結婚とも言いたくなるモダンポップなアイドル歌謡「私の恋は自由形」をA面に入れたシングル盤で、歌っているリサは、全く「この人」シリーズに相応しいミステリアスなアイドルシンガーという、三拍子(?)揃ってしまった人気作 (^^;
とにかく、その基本形は作詞:竹花いち子&作曲:井上大輔が提供したオールディズ風味が濃厚なアイドル歌謡ポップスなんですが、ここに鈴木慶一が施したアレンジがモダンポップ丸出しのエグ味たっぷり!?
既に述べたとおり、それは前述したフィル・スペクター流儀の「「ウォール・オブ・サウンド=音の壁」を拡大解釈した様な尊大なエコーが全篇に用いられ、また当然ながらフィル・スペクターが全盛期に制作していたハリウッド系アイドルポップスを印象づけていた「か細い」ボーカルを入れているんですから、不肖サイケおやじには、グッと惹きつけられるのが自然の成り行きであるはずが、バックの演奏が、あまりにもニューウェイヴしまくりという…… (^^;
おそらくは制作スタッフに鈴木慶一が参加しておりますから、その演奏パートにはムーンライダーズ所縁の面々が参集しているんでしょうが、スバンズバンとタテノリするドラムスを中心に炭酸水を入れ過ぎた様な薄味でツンっと来るサウンドは、とてもとても……、サイケおやじの好みではありません。
ところが、それでも耳を奪われるというか、我知らず聴いてしまうのがカタコトばっかりのリサのボーカルで、それこそがヘタウマの極北???
ちなみに、リサはハワイ出身のモデルだったという噂もありますが、サイケおやじには正体を知る由もなく、それゆえに気になってしまう魅力が……、ですね (^^;
そして、現在のジャンル分けでは、この「私の恋は自由形」がテクノ歌謡とされているらしいんですが、個人的には、これは堂々のアイドル歌謡であり、ネジレたスペクターサウンドだと思っているんですが、いかがなものでしょう。
思えば当時は洋楽でも、アンディ・パートリッジの一派が、そんなこんなの凝り過ぎたポップロックなレコードを作っており、前述した鈴木慶一とも親しい間柄だったそうですから、さもありなん!?
基本的にテクノはNGのサイケおやじではありますが、アンディ・パートリッジやXTCをサイケデリックロックとして楽しんでいる身としては、受け入れてしまうわけですよ (^^;
ということで、アンディ・パートリッジ関連のレコードや音源についても、追々ご紹介しようと目論んで、幾年月……。
そ~ゆ~踏ん切りの悪さも、サイケおやじの本性とご理解いただく他はございません <(_ _)>
とりあえず本日は、「この人」シリーズに事寄せて、そのあたりへの入り口になればなぁ……、という思惑を優先させていただいた次第です <(_ _)>
う~ん、なればいい (^^ゞ