OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

これはスペクター歌謡だよねぇ~♪

2016-10-30 19:38:30 | 歌謡曲
ちょっと Fallin' Love / 渡辺美奈代 (CBSソニー)
 
全盛期だった1960年代前半はど~だったか、それは知る由もありませんが、我が国におけるフィル・スペクター信仰が特に強大化していたのは、1980年代だったと思います。
 
おそらく、そのきっかけは大滝詠一が1981年に出したアルバム「A LONG VACATION」、通称ロンバケのメガヒットによるところが大きいと思うのは、サイケおやじだけではないでしょう。
 
言うまでもなく、そこに聴かれるサウンドの要は分厚い「音の壁」=「スペクターサウンド」の応用進化系であるという現実は否定されるものではなく、むしろ洋楽が最高に素晴らしかったとされる時代への尊崇が、アメリカンポップス全般に精通していた大滝詠一によって実践されたと思うのを不遜と決めつけられれば、サイケおやじはお叱りを覚悟しております。
 
もちろん、大滝詠一が突発的にそれをやったはずがないのは、皆様もご存じのとおりで、はっぴいえんど~ソロ時代に作っていた諸作には、プロデュースの仕事も含めて、既にたっぷりと同じサウンドが提供されてきたのですが、ロンバケでは様々な要素が良い方向のベクトルへ収斂していたのでしょうか、その思いっきりの良さが大成功に繋がったような気がします。
 
そしてロンバケの大きな功績のひとつが、冒頭に述べたフィル・スペクター信仰の存在正当化と拡散であり、平たく言えば、そこに特徴的な「音の壁」=「スペクターサウンド」を堂々と取り入れた歌謡曲やニューミュージック、さらには日本のロックまでもが続々と制作発売されていった事でしょう。
 
それが1980年代の日本大衆芸能界のひとつ流行と実相であり、同時にその信仰に馴染まないミュージシャンやリスナーは、所謂「通」では無いっ!
 
とばかりに軽んじられた事は偽りではありません。
 
ところが、だからといって、「音の壁」=「スペクターサウンド」が誰でも容易く作れるはずもなく、大編成のバンドやオーケストラを用いても、あるいは矢鱈にエコーばかりを強調しても、そこに基本的信念というか、なかなか深いところまでは大滝詠一のような手際は成し得ず、逆に言えばそれに少しでも近づくことが、プロ意識としての「通」になる道筋だったような気さえするほどです。
 
音楽業界でメシを食っていないサイケおやじですから、以上に述べた事は至極生意気で、失礼千万と大顰蹙の嵐でありましょう。
 
しかし、そう書いてしまったのは、当時幾つも出た和製「スペクターサウンド」には確かに成功作が存在し、例えば渡辺美奈代が昭和63(1988)年に出した本日掲載のシングル盤A面曲「ちょっと Fallin' Love」は、なかなかに素敵なんですよねぇ~~♪
 
説明不要とは思いますが、彼女は当時のトップアイドルでありながら、歌唱力は決して優れているとは言い難く、それゆえにルックスを裏切らないキュートな魅力が増幅されていたのは間違いないんでしょうが、その特質を存分に活かしきったのは作編曲を担当した渚十吾と鈴木慶一の晴眼だと思うばかり!
 
それは全盛期のフィル・スペクターが作り出していたシングルヒットレコードに刻まれていた分厚いバック演奏に華奢なリードボーカルという雰囲気の再現であり、それでも本家フィル・スペクターが提供していたのは、しっかり「芯」が感じられるボーカルやコーラスパートだったところを、渡辺美奈代には華奢というよりも、さらにお茶目でロリ趣味の滲みさえ否定しないという、彼女ならではのナチュラルな節回しの個性を表出させたところが実に素敵なんですねぇ~~♪
 
当然ながら、曲調はオールディズの雰囲気がモロ出しのポップス歌謡であり、文園千津子の綴った歌詞には、曲タイトルが執拗なほどに繰り返されるという展開も狙いがジャストミートしていると思います。
 
ちなみに作曲に参画している渚十吾とは、その頃のソニーに在籍していた某プロデューサー氏の変名だと云われていますが、その真相は???
 
ということで、この「ちょっと Fallin' Love」が成功したことにより、以降の渡辺美奈代は過剰(?)とも思える「スペクターサウンド」に包まれた楽曲を出していくのですが、それは我が国におけるスペクター歌謡の確立と成功のひとつの証拠物件かもしれません。
 
その意味でも、やっぱりアナログ盤で聴いていたいのが渡辺美奈代の「ちょっと Fallin' Love」ではありますが、しかし時代はリアルタイムでCDが主流になっていたことを踏まえていたのでしょう。
 
ちゃ~んとデジタルメディアでも、それなりにスペクター歌謡が楽しめるのは幸せな結末!?!
 
あぁ、願わくばモノラルミックスを、それをアナログ盤で聴いてみたいなぁ~~~。
コメント
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