■Sky High / Jigsaw (Splash / テイチク)
覚悟はしていたものの、やっぱり今年の夏も暑いですねぇ~~。
いや、そんな分かりきった事を述べてしまうことそのものが、既に暑苦しいわけですが、そんな時こそ爽快な音楽を聴きたくなるのが人の世の常でしょうか。
で、そういう時、サイケおやじには、あえて耳タコ曲を選んでしまうという悪癖(!?)がありまして、例えば本日ご紹介の「Sky High」はB級洋画の主題歌でもあり、我国では華麗なる覆面のプロレスラーとして絶大な人気を集めたミル・マスカラスの入場テーマ曲として、昭和という時代に青春期を過ごされた皆様には耳に馴染みきったメロデイかと思います。
しかし、それを演じているジクゾーというグループについては、今もってほとんど知られていないというか、局地的には根強い人気もあるらしいのですが、極言すれば一発屋!?
そんな扱いが当然になっているのも、この「Sky High」があまりにも有名ヒットになってしまった所為かもしません。
実は例によって告白すると、サイケおやじは決してリアルタイムでは「Sky High」やジグゾーというグループを意識していたわけではなく、既に社会人となっていた昭和50年代中頃に友人が決死の覚悟で買ったマイカーのドライブに誘われる度に、ご自慢のカーステレオの定番カセットがジクゾーであり、そこで強制的に聴かされて目覚めたのが本当のところです。
あぁ~、ジクゾーって、これがなかなか気持の良いソフトロックばっかりやってくれるんですよっ!
まさに先入観をブッ飛ばされる、目からウロコとは、この事でした。
当然、チマチマとジグゾーのレコードを集め始めたのは言うまでもなく、グループの歴史もそれなりに知り得ていったというわけですが、これがイギリスのバンドであったという事実にも、驚かされましたねぇ~~。
なんとっ! 結成されたのが1967年だったということは、日本でブレイクした前述「Sky High」のヒットが1976年でしたから、そこまで既に10年以上のキャリアがあったということです。
メンバーはトニー・キャンベル(g)、クライヴ・スコット(vo,key)、バリー・バーナード(b)、デス・ダイヤー(vo,ds) という4人組とはいえ、グループの中心はデス・ダイヤーとクライヴ・スコットらしく、主要演目を作っているのは、このコンビですし、スタジオレコーディングにはセッションミュージシャンが動員されている事も、当時のイギリス産ポップスでは殊更不思議ではありません。
ですから音楽性もデビュー当時の幾分ワイルドなポップロック、つまり後にパワーポップと呼ばれるスタイルから、アルバムを出せるようになった1970年頃にはソフトロック&プログレ路線に踏み込み、そこから流行のグラムロックやMORポップスのエッセンスを抽出したかのような、実にキャッチーな歌と演奏を全面に出すグループへと転進を続けたのも当然の成り行きだったのでしょう。
そしてグループとしても小さなヒットを出しつつ、デス・ダイヤーとクライヴ・スコットが職業作家的な居場所を見つけたのは無理からん話だと思います。
1974年には本国イギリスや欧州各国でそれなりの人気を集め、さらにはアメリカ音楽界への進出がすんなり(?)決定し、我国でもレコードが発売されるようになった背景には、そういう基本的な実力に裏打ちされた魅力があっての事と思います。
なにしろジグゾーの日本盤レコードは、前述した「Sky High」による大ブレイク以降に続々発売されたとサイケおやじは思い込んでいたんですが、実はそれ以前の昭和49(1974)年から、シングル盤をメインに堂々と出回っていたんですねぇ~。同時にラジオの洋楽チャート番組でも、しぶといヒットを放っていた実績を後追いながら知ってみると、全く自らの不明を自覚するばかり……。
そういう流れもあって、件の「Sky High」が映画の主題歌としてジグゾーに依頼があったのも、クライマックスで高層ビルからハングライダーで飛行するというイメージに合致した、きっちりキャッチーな楽曲を作ってくれるという信頼があったのでしょう。
サイケおやじは唯一度だけ、テレビで放映された映画本篇を観ていますが、確かにハングライダー飛行の場面には、ジグゾーの「Sky High」が流れていた記憶があり、なかなか鮮やかなイメージだったように思います。
う~ん、さすれば飛び技をフィニッシュに多用する仮面貴族のミル・マスカラスには、これほどジャストミートなテーマ曲もありませんねぇ~♪ どういう経緯かは知る由もありませんが、少なくとも当時のプロレス関係者もグッドセンスでした♪♪~♪
一方、映画そのものは香港制作によるオーストラリアを舞台にした刑事アクション物で、主演はカンフースタアとして「片腕ドラゴン」や「片腕カンフー対空とぶギロチン」、「ドラゴン武芸帖」等々を我国でも大ヒットさせたジミー・ウォン! 悪役には「女王陛下の007」にしか出ていない「007役者」のジョージ・レーゼンビーという豪華(?)な顔合わせが反動的な面白さですから、ネタとして鑑賞しておくのも悪くはないでしょう。
そしてジグゾーがオーストラリアのグループと勘違いされてしまうのも、なにか納得されると言っては失礼でしょうか?
個人的には後年大ブレイクを果たすエア・サプライとか、そういう爽やか系AORへの影響も、ジクゾーには感じるんですが。
ということで、「Sky High」のような素直に気持良い歌が出るんで、1970年代ポップスも侮れないというわけです。
ご存じのとおり、この頃のリアルタイムでは、それ以前に使われていた「バブルガム」なぁ~んていうポップス用語は過去形になっていましたし、時代的にもカーペンターズに代表されるような、世代を越えて愛される素敵なメロディの歌が求められていましたから、ジグゾーの大ブレイクも必然性があったわけですねぇ~♪
そんな部分から楽しむ洋楽も悪くないと思います。
もちろん時節的には爽やかモードを希求しているのでした。