OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ソウル&ファンクブラザーズの真髄堪能♪

2012-07-01 15:20:37 | Soul Jazz

The Complete Albums & More / Earl Van Dyke (Motown / Hip-O = CD)

それなりに表に出ていなくとも、良い仕事を成し遂げるためには真摯で優れた裏方スタッフの存在がある事は、この世の常識! ですから、大衆音楽の制作現場においても、所謂縁の下の力持ち達が黙々と働いていた実情が明らかになるのであれば、それが気にならないはずもありません。

中でもレコーディングの現場で活躍するスタジオミュージシャンは、優れた技量と高い音楽性を普通に持ち併せた職人であって、決してスタアではありませんが、そんな彼等が時折にやってしまう、それこそハッとするほど良い感じの得意技の披露こそ、コアな音楽マニアを歓喜させるものであり、誰が演じているのかは不明であっても、ひとつのジャンルを確立させていく要素の大切な部分を担っていました。

特に1960年代のアメリカで大旋風を巻き起こしたモータウン系のレコード諸作で聴かれるバックトラック、つまり演奏パートの充実は同業者の憧れであり、また業界普遍の掟が守られていた事により、尚更に凄い魅力を発散していたようです。

それは演奏メンバーの名前を秘匿していた事に尽きますが、一説によると制作側独自のサウンドを他社に盗まれないようにする必要から、ミュージシャンやソングライタースタッフの引き抜き移動を阻止する目論見があったと言われています。

ところが、それは確かにそうであっても、やはり現場の演奏仲間は狭い世界のようで、実は広い人脈があるのですから、少しずつ所謂モータウンサウンドの秘密とも言うべきメンバーの存在が世の中に知られるようになり、ついに数年前に制作封切されたドキュメント音楽映画「永遠のモータウン」によって、その内幕の真実が相当に近いところまで公になったのは凄い事だったと思います。

さて、そこで本日のご紹介は、件のモータウンサウンドを作り上げていた現場ミュージシャンの代表格たるキーボード奏者のアール・ヴァン・ダイクが残したインストアルバム2枚を基に、シングル盤オンリーの発売だった楽曲やライプ音源を含む未発表トラックまでも集成した決定的な2枚組CD♪♪~♪

もちろん、かなり拘ったリマスターや解説プックレットも嬉しい復刻になっています。

☆DISC 1
 01 Nowhere To Run
 02 Come See About Me
 03 You're a Wonderful One
 04 How Sweet It is
 05 My Girl
 06 All For You
 07 Too Many Fish In the Sea
 08 Try It Baby
 09 The Way You Do the Things You Do
 10 Can I Get a Witness
 11 Can You Jerk Like Me
 12 Money
 まず、以上の12曲がアール・ヴァン・ダイク&ソウル・ブラザーズ名義で1965年に発売されたLP「ザット・モータウン・サウンド」に収録されていたインスト演奏で、内容は上記お馴染みのヒット曲のオリジナルカラオケを基に、アール・ヴァン・ダイクのオルガンやピアノを被せ、さらにリミックスを施したものです。
 しかも今回の復刻はさらにリマスターされたステレオミックスとなっているのですから、様々な部分で興味深い聴きどころが多々ありますよ。
 ちなみにソウル・ブラザーズと称された演奏参加メンバーの仔細は付属解説書にも記載されていませんが、それでもアール・ヴァン・ダイク(key) 以下、ロバート・ホワイト(g)、ジョー・メッシーナ(g)、エディ・ウィルス(g,b)、ボブ・バビット(g)、ジョニー・グリフィス(key)、ジェイムズ・ジェマーソン(b)、ユリエル・ジョーンズ(ds)、ベニー・ベンジャミン(ds)、リャード・アレン(ds)、エディ・ブラウン(per)、ジャック・アシュフォード(vib,per) 等々、前述した映画「永遠のモータウン」でベールを脱いだ名手達が挙って参加しているのは言わずもがなで、しかも今回の復刻によって、なかなか細部まで巧みなプロのテクニックやフィーリングを味わえるようになってみると、目からウロコの瞬間がどっさり堪能出来ますよっ!
 特に個人的には初期のストーンズにおいて、ブライアン・ジョーンズが仕切っていた演奏面のアレンジのキモが、同時代のモータウンサウンドから如何に影響を受けていたか、例えばブライアン・ジョーンズのサイドギターの刻みやキメ、そしてオカズがクリソツであったと知れた事だけでも、これは目眩がしたほどですし、もちろんリズムアレンジの妙も同様です。
 そして肝心のアール・ヴァン・ダイクのオルガンプレイは、演目が有名ヒット曲ばかりということで、あえてテーマメロディをそのまま弾くことはせず、パラフレーズを駆使したアドリブは本当に見事だと思いますし、演奏が進むにつれ、なかなか攻撃的なツッコミや熱いフレーズを繰り出していくところには、本当にゾクゾクさせられます♪♪~♪
 それは全てが耳に馴染んだヒット曲であり、しかも刷り込まれたイントロやキメのリフ、あるいは巧みにアレンジされたホーンやコーラスがそのまんまオリジナルバージョンどおりに残されている事があっての仕掛でしょう。
 つまり逆に言えば、それらを既に作り上げていた前述アール・ヴァン・ダイク以下の有能なミュージシャンの存在が、如何に大きかったの証明でもあり、だとすればオリジナルアルバムのタイトル「ザット・モータウン・サウンド」も、全くの偽りが無いわけです。
 あぁ~~、本当に聴いていてワクワク、アッパーな気分にさせられるサイケおやじは、自分の嗜好を再確認させられました♪♪~♪

 13 I Can't Help Myself
 14 Soul Stomp
 15 Hot 'N' Tot
 16 Mobile Lil the Dancing Witch (Previously Unreleased)
 17 He Was Really Sayin' Somethin'
 18 All Day, All Night
 19 Opus and Funk (Previously Unreleased)
 上記のトラックは所謂ボーナストラックで、リアルタイムではシングル盤だけの発売曲やオムニバス盤に入れられて世に出たものに加え、今回が初出となる貴重なトラックもありますから、侮れません。
 中でも1964年にシングル盤両面にカップリング発売された「Soul Stomp」と「Hot 'N' Tot」は今日でも血沸き肉躍る永遠のダンスクラシックであり、同一路線のトップを疾走していたジミー・スミス(org) にも負けない、強烈なピートとグルーヴが楽しめますよ♪♪~♪
 特に派手なホーンリフと手拍子に煽られる「Soul Stomp」は好きだなぁ~~♪ と何時に無く素直に言えますし、ゴスペル風味の熱気が充満する「Hot 'N' Tot」も、本当にたまりません♪♪~♪
 そして当然ながら、同系の制作意図がはっきりしている「Mobile Lil the Dancing Witch」や「Opus and Funk」が、全く未発表にされていたのは、まあ、それだけ他に秀逸な演奏が出来上がっていたと言われれば納得するしかないとは思いますが、勿体無いかぎり! 今、こうして楽しめる幸せに感謝しなくてはバチアタリでしょう。

 20 Too Many Fish In the Sea (Live In Paris)
 21 Soul Stomp (Live In Paris)
 上記2曲は所謂モータウン・レビューと称された巡業ライプからの音源で、1965年4月13日に録音され、同名のライプアルバムに収録されていたバージョンをリミックスしたものと思われます。
 参加メンバーはバンマスのアール・ヴァン・ダイク(key) 以下、ロバート・ホワイト(g) やジャック・アシュフォード(per) を含むツアーバンドながら、流石のグルーヴは圧巻ですし、こういう現場でもジャック・アシュフォードのタンバリンの存在感が、如何にモータウンサウンドのキモであったかが知れようというものです。

 22 6 By 6
 23 There is No Greater Love
 これが今回の復刻でサイケおやじが一番のお目当て!
 初出は1966年頃とされるアール・ヴァン・ダイク&モータウンブラスによるシングル盤オンリーのカップリグ2曲で、特に「6 By 6」は最高にカッコ良すぎる日活アクションモードの歌謡R&B系グルーヴ演奏♪♪~♪
 もう曲もアレンジも、やっている事全てがサイケおやじの最も好むところの極みつきで、実は1970年代のある日、知り合いから聴かせもらって以来、必至で探索を続け、ようやくゲットしたアメリカ盤シングルを聴き狂っていた過去があるものの、如何せん、実態はガタボロの傷だらけ……。
 それがここに涙の復刻とあっては、端坐しての鑑賞も、何時しか身も心もハイグルーヴ状態ですよ♪♪~♪
 また「There is No Greater Love」にしても、モダンジャズでは定番のスタンダード曲ということで、ここでは堂々の所謂レアグルーヴが全開! 当然ながらアール・ヴァン・ダイクのジャズルーツも開陳されていますし、パーカッションが前面に出たチャカポコリズムとメリハリの効いたホーンアレンジもニクイばかりと思います。

 24 The Flick - Parts 1, 2, 3 & 4
 これもまた侮れないトラックで、原曲の「The Flick」はシングル盤オンリーで1965年頃には世に出ていたファンクインストなんですが、ここではその完成に至る4種類のパートが全面公開されているんですねぇ~♪
 あぁ~、それにしても、ここでの熱いグルーヴは、例えばジミー・スミスあたりがやっていた事と比べても決して遜色は感じられないでしょう。もちろんオルガンの技量という点だけでは巨匠に及ばないのは当然としても、蠢くエレキベースを核として醸し出されていくバンド全員による意志の疎通は、ドロドロに融解したマグマの噴出にも似た、実に危険極まりないものです。
 う~ん、こんなん目の前でやられたら、歓喜悶絶の揚げ句、そのまんま昇天してしまうかもしれませんよ。それほどアブナイっていう事です。

 25 You Name It (Live / Previously Unreleased)
 これも未発表のライプテイクで、付属解説書によると、どうやらテンプテイションズの伴奏をやった時の音源のようで、メンバーはアール・ヴァン・ダイク(key)、ロバート・ホワイト(g)、ジェイムズ・ジェマーソン(b)、ユリエル・ジョーンズ(ds) ですから、まさに鉄壁のモータウングルーヴが楽しめる予感は嬉しいわけですが、なんとっ! ここでは全員が本来の持ち味である正統派4ビートシャッフルによるモダンジャズをやらかしているんですから、なかなかの面白みがありますよ。
 と言うよりも、実はモータウンのスタジオでレギュラーだったセッションミュージシャンの多くはジャズ屋が本職であり、何れも当地のクラブや有名スタアのツアーバンドで働いていたと言われています。
 それはデトロイトという地域特有のモダンジャズを表出する、まさにひとつの温床であったわけで、例えばハンク(p)、サド(tp)、エルビン(ds) のジョーンズ三兄弟、バリー・ハリス(p)、トミー・フラナガン(p)、ミトル・ジャクソン(vib)、ローランド・ハナ(p)、ポール・チェンバース(b)、ダグ・ワトキンス(b)、ケニー・バレル(g)、ペッパー・アダムス(bs) 等々のモダンジャズの巨匠を輩出した歴史でも明らかなんですが、しかしジャズの本場たるニューヨークで活躍出来るのは余程の個性派という現実もあり、とすれば純然たる実力を発揮するには最新流行のソウルミュージックが最適であったのかもしれません。
 そうした勘繰りも含めて、こういう4ビートが聴けるのは嬉しいところと思います。
 
☆DISC 2
 01 Someday We'll Be Together
 02 Rainy Night In Georgia
 03 Thank You Falettinme Be Mice Elf Agin
 04 Na Na Hey Hey Kiss Him Goodbye
 05 Wichita Lineman
 06 The Flick
 07 Cissy Strut
 08 Stand By Me
 09 My Cherie Amour
 10 Fuschia Moods
 11 The Stingray
 12 The Whip-a-Rang
 さてさて、いよいよ2枚目のディスクも激ヤバなトラックがテンコ盛りで、まずは上記が1970年に発売されたアール・ヴァン・ダイク名義のライプ盤「アール・オブ・ファンク」のリマスター復刻です。
 参加メンバーはアール・ヴァン・ダイク(key)、ロバート・ホワイト(g)、ジェイムズ・ジェマーソン(b)、ユリエル・ジョーンズ(ds)、エディ・ブラウン(per)、ジョージ・ベンソン(sax) という、今では夢のファンクブラーザーズ! もちろんジョージ・ベンソンは、あのギターと歌の大スタアとは同名異人ですが、なかなかの隠れ名手なんで、流石の演奏が披露されていますよ。
 で、まずは結論から言うと、これはライプレコーディングを標榜していますが、データ的にはそれほど大きくはない場所と思われるデトロイトのクラブで録音しているはずなのに、拍手が異様に盛大で、しかも演奏毎にスパッとフェードアウトしたり、個人的には不自然な響きが感じられるところから、おそらくは疑似ライプ? もしかしたらスタジオレコーディングのテイクに拍手を被せたものという推察もしております。
 しかし、だからと言って演奏がダメなんてことは絶対になく、全篇良く知られたリアルタイムのヒット曲が徹底的にグルーヴィなインストに加工されているのは圧巻の歓喜悶絶♪♪~♪
 とにかく、これは曲毎にどうのこうのなぁ~んて事よりも、聴いていただく他は無いほどの素晴らしさで、これを感じられなかったら黒人音楽好きは生きている甲斐も無いと思えるほどです。
 それは極言すればポリリズムによる集団即興演奏的なリズム隊のピート感、中でも幻の名人とまで一時は噂のあったジェイムズ・ジェマーソンのエレキベースは凄いですねぇ~♪ もちろんロバート・ホワイトの繊細にして豪胆なギター、エディ・ブラウンのコンガやユリエル・ジョーンズのドラムスも唯一無二の至芸ではありますが、こういうバンド全体の大きなノリを構築していく優先度の高さは驚異的ですよ。
 また既に述べたとおり、アルト&テナーサックスで参加のジョージ・ベンソンは、モダンジャズの世界では無名に等しいわけですが、流石はデトロイトで活動するに相応しい実力者で、サイケおやじは一発で好きになりました。
 そして肝心のアール・ヴァン・ダイクは時代的にもニューソウル指数が向上したプレイを聴かせてくれますから、安心して身を任せているうちに、気分はすっかりファンク漬け! ただただ生きている、生かされている幸せに感謝するのみです。
 ちなみにリマスターはステレオミックスの分離も良好ですから、参加メンバーの個人技探求も熱い試みだと思います。

 13 Runaway Child, Running Wild
 14 Gonna Give Her All the Love I've Got
 上記2曲も1969年に発売されたシングル盤オンリーのトラックで、実はサイケおやじは初めて聴いたんですが、ビシバシのドラムス&パーカッションにシンコペストしまくったエレキベースが絡んで作り出されるピート感は、まさにニューソウルですよ。
 もちろん鋭いホーンリフやワウワウ使用のギターは「お約束」ですから、アール・ヴァン・ダイクが幾分エレクトリックな響きのピアノを弾いてしまう事についても、特段の違和感はありません。
 う~ん、これまたシビれるなぁ~~~♪

 15 Fever In the Funkhouse (Alternate Mix)
 16 Behold (Previously Unreleased)
 17 Greedy Green (Previously Unreleased)
 上記3曲は、アッと驚くジェイムズ・ジェマーソン名義のセッション音源で、「Fever In the Funkhouse」だけは1995年に発掘系オムニバス盤に収録されて世に出ていたらしいのですが、今回はクレジットされているとおりの別ミックスバージョンになっていますし、他の2曲は完全未発表!
 そしてもちろん、全てが強烈なインスト演奏で、ニューソウル&ファンクなグルーヴが煮え滾っていますよ!! リーダーのエレキベースは言うまでもなく、ギターもホーンセクションもドラムスもパーカッションも、そしてキーボードも、全くひとつのベクトルに統一されていながら、各々の個人的主張も忘れていないあたりは、流石リアルタイムで最先端のサウンドを追求していた証でしょう。
 ぐわぁぁぁ~~~、と思わずアンプの音量上げてしまうこと、請け合いです。

 18 Up On Your Feet (Previously Unreleased)
 19 Too Busy Thinking About My Baby (Previously Unreleased)
 20 Ode To Benny B (Previously Unreleased)
 最後のパートは何れも未発表になっていたトラックで、付属解説書によればグラディス・ナイトやフォー・トップスの為に作られたカラオケパートを活かし、そこにアール・ヴァン・ダイクのキーボードをオーバーダビングしたという、例によって例の手法が使われているようです。
 そしてセッションの時期が1968~1969年という、これが後のニューソウルの発祥に繋がる頃とあって、現場の雰囲気も生々しく記録されたテープのストレートな公開は興味津々♪♪~♪
 正直、未発表になっていただけに出来はイマイチのように思いますが、アール・ヴァン・ダイクがオルガンよりもピアノをメインにしている状況も、それなりの理由を様々に推察出来るのかもしれません。

ということで、これは充実の復刻作!

特にソウルジャズやレアグルーヴ好きには絶対のマストでしょうし、モータウン系を含むノーザンソウルビートファンも楽しく聴けると思います。

また、今回の拙稿を書く中で勉強になった付属解説書も丁寧ですし、ここに記載出来なかった細かいデータや写真のあれこれも、最高に嬉しいところ♪♪~♪

個人的には車の中で鳴らしてしまう事も多いんですが、ちょいと安全運転を忘れがちになるのは要注意なんで、そこだけは強く付記しておく所存です。

あぁ~~、やっぱりこういう音楽が好きですっ!

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