OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ウディ・ショウのモダンジャズ残侠伝

2012-07-03 15:55:48 | Jazz

Stepping Stones / Woody Shaw (Columbia)

連日の民主党ゴタゴタ騒動は、ついに昨日、至極当然ながら、思いっきり間延びした結末を迎え、国民を呆れさせましたねぇ。

まあ、民主党及び小沢グループ所属議員の支持者がどのように感じているのかは知る由もありませんが、一応は外側から見られるサイケおやじにとっては、もう、うんざりですよ。

特に一度は離党届を親分に提出しながら、土壇場でそれを取り戻しに行った恥さらしが二人も出たというんですから、いやはやなんとも……。

日頃から節操の無い自らを省みる事さえ忘れさせられる、そういう大義名分が与えられたポイントにおいては、まあ、失笑で済ませられるかもしれませんが、そんなわけですから、本日ご紹介の一途なガッツ溢れるモダンジャズ盤を聴いてしまうのも、頭よりは心、そして肉体そのものの欲求でしょう。

なにしろ演じているバンマスのウディ・ショウは、1960年代中頃から頭角を現した、所謂新主流派バリバリの看板トランペッターで、モード手法やフリージャズといった時代最先端の波に乗りながらも、ハードバップというモダンジャズが一番に「らしく」輝く味わいを大切にしていましたから、特に1970年代前半までの我国ジャズ喫茶全盛期はもちろんの事、クロスオーバーやフュージョンが人気を集めていた頃でさえ、発売される新譜には常に絶大な期待が寄せられる実力者でした。

そして本日ご紹介のアルバムは、1978年に勇躍登場したライプ盤!

録音は1978年8月5&6日のニューヨークは名門クラブのヴィレッジ・ヴァンガードのステージから、、メンバーはウディ・ショウ(tp) 以下、カーター・ジェファーソン(ts,ss)、アラン・ガムス(p)、クリント・ヒューストン(b)、ビクター・ルイス(ds) という、全員が頑固なまでにモダンジャズ保守本流に拘り抜いていた名手ばかりとあって、まさにガチンコの熱演が堪能出来ますよっ!

A-1 Stepping Stone
 如何にも新主流派が丸出しのモード系ハードバップの真髄がギュ~ッと凝縮された演奏で、アップテンポながら幾分不穏な空気を醸し出すテーマからメッチャ、カッコ良すぎるウディ・ショウのアドリブに突入していくトランペットのワンフレーズだけで、シビれが頂点に達するでしょう。
 しかも尚更に早いテンポで繰り広げられるアドリブパートの前半が、ウディ・ショウとカーター・ジェファーソンの掛け合いという展開で、たまりませんねぇ~~~♪ 当時のジャズ喫茶では、これが流れてくると店内のムードがグッと本物のジャズ喫茶らしくなるという、なんとも不思議な感覚に満たされたんですから、今になっても瞬時に熱くさせられてしまうサイケおやじの心情を御察し下さいませ。
 またリズム隊のハードなスイング感も素晴らしく、特に親分の盟友だったアラン・ガムスのピアノは変幻自在の伴奏からメリハリの効いたタッチでバリバリに弾きまくるアドリブは爽快ですし、手数の多いクリント・ヒューストンのペースにしても、決してピートの芯は蔑にしていません。
 さらにビクター・ルイスのドラミングが、これまた当時の学生バンドブレイヤーにも人気があったとおり、なかなか熱いエモーションを煽りたてるような真摯な敲きっぷりで、好感が持てますよ♪♪~♪
 もう、この初っ端だけで、アルバム全体の出来は保証されたというものです。

A-2 In A Capricornian Way
 演奏が始まる前に、おそらくはウディ・ショウ本人と思われるMCが入るんですが、これがなかなか落ち着いた話っぷりで、如何にも一途な人柄が偲ばれます。
 と書いたのも、実はご存じのとおり、ウディ・ショウは決して経済的に恵まれていたわけではなく、しかも晩年は視力の極度な低下も含む難病に犯され、非業の最期……、という現実を我々が知っているからに他なりません。
 実際、このバンドを率いていた頃でさえ、大手のコロムビアと契約していたのですから、流行のフュージョン系作品を作っても、それなりに素晴らしい成果を残せたと思えるのですが、そこへは走らず、常に己の信ずる4ビートがメインのモダンジャズしか演奏しなかった姿勢こそが、ファンを感銘させるひとつの要因になっていたわけで、これは決してサイケおやじの独断と偏見ではないはずです。
 で、あればこそ、本物と感じられるのが、このアルバムに入っている観客の熱の入った拍手歓声でしょう。
 そしてこの演奏にしても、前曲と同じくウディ・ショウの真っ当なジャズオリジナルという、些か堅苦しい雰囲気のモード手法が展開されていますが、ミディアムテンポの流れの中で、メンバー各人の個人技が鮮やかにキマッていくのは快感♪♪~♪
 もちろんウディ・ショウの早いフレーズ回しやハイノートの使い方には安心印のスリルが満点ですし、カーター・ジェファーソンのテナーサックスにしても、当然ながらコルトレーンのスタイルから大きな影響があるとはいえ、それに身を任せて聴き入ってしまうのは、やはりジャズ者が基本的に求めるものが、そこにあるからでしょう。
 その意味でアラン・ガムスは本当に上手くて、ちょいと慣れた耳にもハッとさせられる音の選び方は流石! 今日までの過小評価が惜しまれますねぇ……。
 それと個人的には当時から大好きだったクリント・ヒューストンの手数の多いベースソロも用意されていますが、こういう遣り口が忙しないとか、ちょいと無視されているのも、何か勿体無い感じです。

B-1 It All Comes Back To You
 アラン・ガムスが書いた、ボサロック系のモード曲で、こういうアフリカ色も滲む演奏は、例えばリアルタイムの渡辺貞夫あたりもやっていた、ひとつの流行りものでした。
 しかし、流石はウディ・ショウ組のやる事はブレないというか、カーター・ジェファーソンのソプラノにしても、またウディ・ショウのフリューゲルホーンにしても、自分だけの文法に沿った歌心は大切され、そこに妥協は一切無いと思われます。
 ちなみに、こういう雰囲気になると、ウディ・ショウとフレディ・ハバードの比較検証もあれこれあって、そんな論争をやっていた事も今は懐かしい思い出になっています。
 もちろんアラン・ガムスを含むリズム隊の良い雰囲気は、ジャズを聴く楽しみに他なりません♪♪~♪

B-2 Seventh Avenue
 ビクター・ルイスが書いた、これはなかなか硬派なモード曲で、流石はドラマーの作だけに、テンションの高いリズム的興奮が煽られますよ♪♪~♪ もちろんテーマアンサンブルにおける熱気が、そのまんまウディ・ショウのアドリブに引き継がれるのは言わずもがな、こういうバンド全体のグルーヴィなノリこそが、ジャズ永遠の魅力じゃ~ないでしょうか。
 思わず、それを痛感させられてしまいますねぇ~~~!
 またカーター・ジェファーソンのソプラノサックスが、これまたモードジャズ中毒患者には絶対的な快楽を提供してくれますし、ちょいと独得の浮遊感は侮れません。
 そして再び激ヤバなのが何時までも終りが見えないようなリズム隊の演奏で、極めて正統派をやっているアラン・ガムスを、ほとんどジャコ・パストリアスみたいな動きで翻弄するクリント・ヒューストンの対抗処置は、何かバラバラになりそうな気もするんですが、こういう暗黙の了解をビシッと纏めるのがビクター・ルイスのドラミングで、大技小技の駆使しながら、グイグイとバンドをノセていくのは、作者としての責任感以上の存在だと思います。

B-3 Theme For Maxine
 これは短い、僅か1分ほどの演奏で、おそらくはバンドチェンジのテーマなんでしょうが、タイトルからしてヴィレッジ・ヴァンガードの当時のオーナーだったマックス・ゴードンに捧げられた??
 そんな素朴な疑問も含めて、素晴らしいアルバムを締め括るアクセントになっています。

ということで、こんな痛快至極なライプ盤がフュージョン全盛期だった1978年に作られていた事実は重大!

つまり本物のジャズは決して死んでおらず、もちろんフュージョンが偽物ジャズとは申しませんが、少なくともリアルタイムの我国ではジャズ喫茶でも両者同列の扱いで、鳴らされている頻度ではフュージョンが多かった店もあった現実の前では、こういう真っ当な演奏こそが新しかったのです。

もちろんそれが後の所謂新伝承派という、4ビート再発見運動に繋がるんですが、その時になってもウディ・ショウは恵まれていたとは言えず、既に述べたとおりの窮状……。

なんか、真面目にやってバカを見たような受け取られ方さえあったのは、本当に哀しいばかりです。

しかし、だからこそ、ウディ・ショウは決して忘れられないし、過去を探索する新しいジャズファンの心を鷲掴みにする魅力に溢れた存在!

なによりもフラフラした真似をしない、美学とは一概に言えないかもしれませんが、確かな矜持は不滅だと思います。

そして、例えジャズが出来たとしても、今の永田町のボンクラどもには、こういう任侠精神の演奏は絶対に出来無い!!

そう、確信しております。

最後になりましたが、このアナログ盤にはちょいとしたミステリがありまして、まず「In A Capricornian Way」の項で述べた、演奏開始前のMCの「有る」「無し」の問題が!??

おそらくはプレス時期、あるいはマトリックス関連の諸々に起因していると思われますが、とりあえず現行CDには入っているという噂で、確認出来ずに申し訳ございません。

そしてもうひとつ、このLPのアメリカプレスのプロモ盤には、別テイクか別編集バージョンが入っているという噂もありましたが、これについてはサイケおやじの私有盤では確認出来ていません。

ただし現在では、この時のセッションのアウトテイクが海外盤CDに収められている実情から、やはりそれは「有り」だったのかもしれませんねぇ。

なかなか音楽を聴く喜びは尽きません。

コメント (4)
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