OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

トランペットの狂騒

2008-02-07 17:23:38 | Jazz

南方から来た外人のお客さんが、初めて雪を見て大喜び! それは良いですけど、仕事の話をしているときに、窓の外ばっかり見るのは止めろ!

と、やや現状についていけない私ではありますが、こんなアルバム聴いて憂さ晴らしです――

Tuor De Force / Roy Eldridge, Dizzy Gillespie & Harry Edison (Verve)

ジャズの醍醐味のひとつ、アドリブ合戦を最も効果的にレコード製作へ活かしていたのが、ヴァーヴというレーベルでしょう。

これはプロデューサーのノーマン・グランツが常に大物ジャズメンを起用する方針からして、至極当然な結果ではありますが、特にこのアルバムは徹底しています。なにしろ3人の有名ジャズトランペッターをガチンコで勝負させているのですからっ!

録音は1955年11月2日、メンバーはロイ・エルドリッジ(tp)、ハリー・エディソン(tp)、ディジー・ガレスピー(tp)、オスカー・ピーターソン(p)、ハーブ・エリス(g)、レイ・ブラウン(b)、バディ・リッチ(ds) という、超強力な面々です。

ロイ・エルドリッジはルイ・アームストロングの手法を拡大してスイングスタイルに用いた第一人者であり、様々な楽団では常にスタアとして活躍していた名手です。

またハリー・エディソンはカウント・ベイシー楽団のスタアプレイヤーであり、その甘い音色と分かり易いフレーズ、メロディを大切にした演奏は、“Sweets”のニックネームに集約されています。

そしてディジー・ガレスピーはモダンジャズを創成した偉人のひとりとして説明不要かと思いますが、火の出るような突進スタイルに加えてバラードでの繊細な表現力も聞き逃せないスタイリストだと思います――

A-1 Steeplechase
 オスカー・ピーターソンの転がるようなイントロに導かれて始る狂騒の名演は、3人のトランペッターがアドリブソロの応酬に徹するという、LP片面全部を使った物凄さです。
 それはロイ・エルドリッジ、ディジー・ガレスピー、ハリー・エディソンの順番でソロを回すのですが、一回りする毎にコーラスを少なくして、最後には4小節単位にまで切詰められていきますから、たまりません。
 白熱的なビートを送り続けるリズム隊のスイング感も素晴らしいですから、フロントの3人は一瞬たりとも気を抜けず、もちろん対抗意識がモロ出しという熱気と意地のぶつかり合いが見事というか……。
 いや、実は疲れます……。
 ですから私は、リズム隊中心に聴いていてちょうど良いと感じています。実際、強烈なアップテンポでありながら、オスカー・ピーターソンやハーブ・エリスの伴奏の上手さ、さらにレイ・ブラウンの安定感、バディ・リッチの神業ブラシに驚嘆させられるのでした。

B-1 Tour De Force
 アルバムタイトル曲はディジー・ガレスピーの書いたもので、「はなれ業」の意味なんですが、むしろここではリラックスした雰囲気が横溢しています。A面が狂騒でしたから、ミディアムテンポのホノボノとした合奏が、実に良いムードなんですねぇ。
 アドリブパートの先発はハリー・エディソン、続いてロイ・エルドリッジ、ディジー・ガレスピーが登場して十八番のフレーズ展開を満喫させてくれますが、もちろんクライマックスは4小節交換のアドリブ合戦です。
 またここでもリズム隊が最高にグルーヴィ♪ 野太いレイ・ブラウンにメリハリの効いたバディ・リッチのドラミング、飛び跳ねるようなオスカー・ピーターソンのバッキングとハーブ・エリスの合の手ギター! これだけでゴキゲンなんですねぇ~~♪
 肝心のトランペッターでは、けっこう泥臭いロイ・エルドリッジが良い味出しまくり! シンプルな歌心に撤するハリー・エディソンも好ましく、ディジー・ガレスピーは得意の駆け足スタイルやハイノートの乱れ打ちも厭味がありません。
 
B-2 Ballad Medley
     I'm Thru With Love / Roy Eldridge
     The Nearness Of You / Dizzy Gilspie
     Moonlight In Vermont / Roy Eldridge
     Summertime / Dizzy Gilspie

 ヴァーヴというか、ノーマン・グランツの専売特許的なバーラドメドレーは、やっぱり魅力があります。
 まずロイ・エルドリッジがシンミリと男気を歌い上げる「I'm Thru With Love」でグッと惹き込まれ、次いでディジー・ガレスピーが「The Nearness Of You」を硬派に演じるという上手い構成が光ります。
 さらにロイ・エルドジッジが再び登場して「Moonlight In Vermont」、締め括りにはディジー・ガレスピーの「Summertime」というパートは、ちょいと短いのが勿体無いほど雰囲気が良いです。
 そして個人的にはハリー・エディソンが登場しないのも……。

ということで、けっこう体力が必要なる鑑賞かもしれませんが、ジャズの醍醐味はガッチリ楽しめます。

録音もなかなかに迫力があり、特にリズム隊は各楽器の分離がしっかりしているのに団子状のグルーヴが太くて気持ち良いです。惜しむらくはモノラル録音ということでしょうか。こういうバトル物はステレオミックスで、左右と真ん中からトランペットが鳴っていたら、これはとんでもないアドリブ地獄盤になっていたかもしれませんね。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする