こんにちは! ただち恵子です

政治と社会、日々の暮らしの小さな喜び。思いつくままに綴ります。

何が復興を妨げているのか?

2012-04-20 23:49:31 | 東北被災地支援・がれき処理問題
昨日、貝塚市で開かれた「いのちを守るネットワーク貝塚」主催の「汚染ガレキ焼却説明会」に参加した。

環境省と大阪府の、それぞれ担当者を招いて説明を受け、会場参加者やツィッターでも質問を受け付けながらの進行。

初めに環境省近畿地方環境事務所廃棄物リサイクル課の担当者の説明。
そして続いて、大阪府環境農林水産部循環型社会推進室資源循環課からの説明。

環境省の作成したきれいなパンフレットによる説明と大阪府の説明で、腑に落ちないことがあったので休憩時間に直接尋ねた。

震災で膨大な量の災害廃棄物が発生したこと。そのほとんどが、処理できていないこと。だから「広域処理」がどうしても必要だと強調されるのだが・・・。

どのくらい膨大な量かというと、岩手県では「通常の約11年分」だという。
「年間に排出される一般廃棄物の量が約46万トン。震災廃棄物が約476万トン」

しかし大阪府の資料をみれば「467万トン」の内訳に「土砂等堆積物211万トン」なども含まれる。「広域処理」の対象としているのは「132万トンの可燃物うち50万トン」で、そのうち18万トンを大阪で引き受ける計画という。

巨大な津波が押しつぶし、砕き、流して「ガレキ」となったのは、「通常の一般廃棄物」に類するものばかりではない。コンクリートであったり金属であったり、土砂であったり・・・。それらは最初から「広域処理」の対象ではなく、地元で復興資材として活用されるものだ。

それならなぜ「通常の11年分」を強調して、「広域処理をしなければ11年間かかる」と錯覚させるような言い方をするのか?休憩時間に質問したのは、この点だ。
はっきりした答えはないが、「通常の46万トン」と「震災廃棄物の467万トン」は比べることのできないものだということは、はっきりした。

「467万トンのうち8%しか処理が進んでいない」との説明もあった。
これも、上記のように「広域処理」の対象が「132万トンの一般廃棄物の38%、震災廃棄物全体に対しては10%余」であることから、「8%しか進んでいない」要因が「広域処理が進まない」からではないことは明らかだ。

「一日も早い復興」のために「ガレキの広域処理を」というより、「広域処理ありき」でごり押ししようとすることで、ガレキ処理も進んでいないように思える。

環境省の説明のなかで「安全性の基準」について「自然界にある放射線量に、ちょっとのっかる程度」と言われたのも、気になった。「ちょっとのっかる」ことの影響を、無視、あるいは軽視していいのだろうか。文科省がつくった「放射線について考えよう」という副読本はこういう考え方で作られている。

「政府が自治体に『お願い』して、それに応えて受け入れた焼却炉や埋立処分場の付近で将来被害が生じたら、その責任は誰にあるのか?」という質問に「風評被害には環境省が責任を負う」という大臣の答弁が繰り返し引用された。しかし、何をもって「風評被害、健康被害というのか」という質問には「基準はない。ケースバイケース」という。「基準」もなくては、責任をとるという保障はない。

国のガイドラインで「焼却灰の濃度の目安を8千ベクレル/㎏」としているのを、府の指針が2千ベクレルとしていることの根拠については、作業に従事する人の労働時間や環境で換算したもの、「つまり国の基準より大阪では過酷な状況で働かされるということですね。それにあわせて計算したということですね。」と司会者が確認した。「国より厳しい基準にした」のでさえない。

ゲストのひとりとして参加された元京大原子炉実験所の小林桂二さんの「どれだけ安全といっても放射性物質は人の手でなくせない」「低線量でも影響はある。原則は拡散させないこと。100ミリシーベルトなら安全だという専門家ばかり集めて決めたことが問題」とのコメントに拍手がおこった。


維新の会の府会議員(今井豊氏)の「日本中がすでに汚染されている。どこがが引き受けなければ・・・」という発言も乱暴だ。「大阪も汚染されている」なら、知事も議会も「維新の会」がリードする府政で速やかな除染の対応をしてもらいたいものだ。
少なくとも今、西日本は深刻な放射能汚染を免れているからこそ、将来の人々のためにも、その環境を守らなければならないのではないのか?
そのために「汚染の恐れのある廃棄物」の拡散はさけるべきだと、あらためて思う。

昨日の説明会を主催された市民グループの皆さんは、春休みに福島の子どもたちを受け入れ、いっしょに自然の中で過ごすなど、被災地支援の活動を続けておられる。
また被災地の人々の暮らしに思いを寄せ「ガレキ処理を積極的に受け入れ、協力するべき」と主張する方々もある。
北海道から沖縄まで全国自治体に網をかけ、「復興に協力する気持ちがあるなら」と踏み絵のように手あげ方式でガレキ受け入れ自治体を募る今のやり方は、復興支援を心から願う国民の連帯を分断するものではないか。
「がれきが復興の足かせ」といい、雇用・住宅・医療・教育など、被災者支援の緊急で多様な課題から目をそらせることにもなるのではないか。

「何重にも検査し慎重に運んで処理をするのだから安心してください」と言われるほど、そのために人手も費用もかかることを思う。
そのためにかける莫大な経費を、復興支援に直接投入するべきではないのか。









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またまたご無沙汰しています。 (汐見渚)
2012-05-14 16:42:03
遅くなってすみません。
先週、泉大津フェニックスへの見学に行ってまいりました。

ご存知の通り、管理型処分区域は既に埋め立て処分事業を完了して久しく、
区域内に溜まった排水の浄化施設にも、放射能除去の設備は当然ながらありません。
もし、放射性物質を含んでいる可能性のある焼却灰を受け入れるとなれば、
通常の焼却灰を受け入れるのとは別の、
新たな手法を考える必要がある、との事。
以下、質問と回答を箇条書きにしてみます。

・焼却灰ではなく、瓦礫そのものを安定型区域に受け入れる可能性は?
→同じく、今まで通りの方法で受け入れる事は無い。

・国が基準を示せばそれに順ずるのか?
→そこを大阪府や関西広域連合で検討してくれているので…
(その大阪府や関西広域連合の検討基準も滅茶苦茶なんですが…)。

・もし、泉大津フェニックスで受け入れる事になったら、
隣接する泉大津市に反対する権限は無いのか?
→フェニックスには174の出資団体があり、泉大津市もその一つ。
出資者である泉大津市が反対しているのに勝手に受け入れる事は出来ない。

・どうやっても100%安全とは言い切れない場合、どんなに
府が受け入れると言ってもフェニックス側が断るのは可能か?
→はい。

結局、フェニックス側にとっても今のところ現実的な話ではなく、
府や広域連合の出方を見ている・待っている状況であるようです。
ただ、この非現実的な、別世界での出来事のような雰囲気につけこまれて
環境省や府に言いくるめられてしまったら危ないなあ、とも思いました。

と、書き込もうとしていたら矢先、夢洲に埋めるとの報道が先日ありましたね。
ニュースでは「漏れても安全」などと言っていましたが、
漏れた時の予防線を先に張っているようにしか聞こえません。
こうした予防線を先に張ろうとするという事は、絶対に漏らさないと
いう保証は無い、という事です(あんな方法で絶対漏れないと
本気で思っているならそれはそれで問題ですが)。

広域処理の音頭取りを務める環境省は、
放射能に対する技術的見地が無い事を認めています。
https://docs.google.com/file/d/0B2WUZWlAWUz0VWxzZVplU0xTV0c0UHZFMnZJb0RHQQ/edit?pli=1

試験焼却を行った島田市で、松葉のセシウム値が
上昇したとの報道もあります。

東日本大震災:4カ所の松葉、セシウム上昇−−島田市試験焼却後 /静岡
http://mainichi.jp/area/shizuoka/news/20120510ddlk22040250000c.html

大阪府は早期の処分開始に躍起になっているようですが、
強引に推し進めている首長、議員、役所の方々は、
取り返しのつかない事態が起きた時に
それ相応の責任を取る覚悟は持ち合わせておいでなのでしょうか?
返信する
Unknown (ただち恵子)
2012-05-16 23:47:42
汐見渚さま

見学会、ご苦労様でした。

コメントもありがとうございます。

「取り返しがつかない」ことになったら・・・それこそ、子や孫に顔向けができません。

そうならないように、冷静な議論をし、今、しっかりと声をあげていかなければ。コメント読ませていただいて、あらためて思います。
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