湘南発、六畳一間の自転車生活

自転車とともにある小さな日常

2015.04.24 越後駒ヶ岳 2003m

2015年04月24日 | 山・山スキーなど
 ちょうど休みになっていた24、25日。予報では天気はすこぶる良さそうだ。少し気温が高そうではあるけれど、曇りや雨雪の予報より晴れのほうがもちろんありがたい。もともと山スキーに行きたいと思ってはいたけれど、準備や車の運転など面倒臭さも感じていた。でもこの予報では無駄に過ごしたらかなり後悔するだろうと思い、予定通り出かけることにした。

 場所は少し悩んだけれど、賞味期限が着々と近づいている感のある越後方面に決めた。北アルプスも考えたけれど、越後の山々より標高の高い北ア方面であれば急速に雪解けが進んでいるらしいとはいえ、越後方面よりは長く楽しめるはず。それに僕のテレマーク技術で北アに行くのは正直躊躇もあった。そんなことを考えながら、メインをもちろんまだ訪れたことのない越後駒ヶ岳、もし余力があれば翌日に、過去一勝一敗の巻機山に向かおうと決めて越後方面へ向かった。



 車の運転が好きだったり、苦手意識がなければ、気持ち的にもう少し楽に遠出ができるのだろうけれど、3年ほど前まで20年近くもずっとペーパードライバーだった僕は、そのあたりはまったく駄目。20時頃家を出て、緊張しながら運転し、途中2か所で仮眠。そして登山口である銀山平に向かうために、6時開通のシルバーライン入り口に並んだ。

 走りながら徐々にドライブの緊張は緩んだのだけれど、このシルバーラインが恐ろしかった。

 荒れた舗装。カーブのきつい山道。岩盤をくり抜いたようなバショバシャと水が染み出る細いトンネル。制限速度は40kmなのだけれど、みんなものすごく飛ばす。どきどきしながら僕もスピードを上げるのだけれど、すぐに前を行く車すべてが視界から消えた。後続車はかなりの台数っぽい。さぞかし苛々しているだろうなと焦りながら、自分なりに頑張った速度で走るのだけれども、一向に前の車は見えず、そのうち何台もの車が僕を追い抜いて行くようになった。えっ、片側一車線のトンネルって追い越し禁止じゃないの?開通時間から考えて、確かに対向車が来る可能性は限りなく低いとは思うのだけれども、トンネル内の荒れた細い道を、制限速度のおそらく2倍くらいの速度で追い抜いていく車を横目で見ながら僕の緊張はいっそう強くなるのだった。

 下調べが不十分だったことが一番の理由なのだけれど、そんなふうに走っていたら銀山平方面への分岐をスルーしてしまった。まさかこんなトンネル内に分岐があるなんて思っていなかったのだ。もしきっちり曲がっていればこの強い緊張から逃れられたのに、結局トンネルを抜けた奥只見湖までずっと緊張しながらの運転が続くことになってしまった。いつか訪れてみたいと思っていた奥只見湖。こんな形で来ることになるとは思ってもいなかった。端っことはいえ、せっかく奥只見湖まで来たのだから、車から降りて写真の1枚でも撮れば良かったのだけれども、登山口の駐車スペースが心配だったのと、そもそもここまでの運転で気持ち的な余裕は皆無で、後続車が途切れるのを待ってすぐに方向転換してまたトンネルに戻った。

 ようやくたどり着いた銀山平。スムーズに到着すれば間に合ったかもしれないけれど、登山口近くにはすでにポールのようなものが置かれて駐車できず、結局少し遠くの駐車スペースに停めることになってしまった。いやはや、ホント疲れた。そして怖かった。

 と、アプローチで疲れ果ててしまった感があったのだけれども、



 登山口の銀山平は、この素晴らしい天気と景色。やはり来て良かったと思うことができたのだった。

 登山口の雪の壁をのぼると、ひとりのスキーヤーが準備をしていた。東京から来たMさん。出発時間がほとんど一緒だったこともあり、話をしながら歩く。結局、終日ご一緒させてもらうことになった。思っていたより人も入っていなかったし、あまり下調べもしていなかったし、雪のある山では緊張を強いられる場面に何度か遭遇したこともあったりするので、とても心強かった。 



 かなり大きな雪のブロック。ちょうどビーコンの話をしていたときで、こんなのに直撃されたらひとたまりもないですよねぇとMさん。ほんとその通りだと思った。



 北ノ又川の左岸を進む。これが結構長くて大変らしいのだけれども、とりあえず往路は景色を楽しみながら歩くことができた。



 前を歩くMさん。



 コース取りなどとても助けられたし、勉強になった。



 1時間半あまりの川原歩きのあと、柳沢出合から道行山への斜面にとりつく。僕の感覚ではかなり急な斜面。でもMさんは普通にスキーで登っていく。そうか、これくらいの斜面なら普通にスキーで登るのか。Mさんの背中を追って僕もスキーで登ったのだけれども、もしひとりだったらあっさりスキーを外していたかもしれない。結局この日ずっと感じることになったのだけれども、以前より斜度をきつく感じるようになっているようだ。



 急斜面を登り終えて、道行山への明瞭な尾根へ。



 ヤマレコなどで予習した、一部雪が切れている部分はあそこのようだ。



 スキーを外して夏道を登ったのだけれども、これが結構な急斜面。短い距離で良かった。



 後ろに見えるのは荒沢岳あたり?



 再びスキーをつけて歩き出す。周りのスケールがすごい。



 多分、枝折峠方面への尾根。周りは山ばかり。素晴らしい景色に圧倒された。



 あとちょいで道行山。



 山頂に到着すると目の前にどーんと目指す越後駒ヶ岳がその姿を見せた。素晴らし過ぎる。



 全然見当違いなことを言ってしまったのだけれども、中央奥の山は飯豊連峰らしい。こんなに近くに見えるのかとかなり感動してしまった。以前夏に登った飯豊山。いい山だったなぁ。また行きたいなぁ。



 道行山からはシールをつけたまま少しだけ下り、小倉山をトラバースして越後駒ヶ岳へ向かう。



 そのトラバース後。だんだん近づいてきた。最高の天気と最高の景色のせいで疲れはほとんど感じていない。

 前を歩いているのは、単独の女性。スキーを使っても結構なロングコースを、かなりのペースで歩いていた。すごいなぁ。

 ピークの一段下に小さく見えているのが駒の小屋で、そこまでの斜面がかなり急で大変なようだ。



 びくびくしながらその急な斜面を登って、到着した駒の小屋。

 一番の急斜面はスキーを担いで直登したので、そんなに怖さは感じなかったけれど、その手前の斜面がすごく怖かった。きつい尾根の斜登高。滑落したらそのまま沢に吸い込まれそうだ。右側は切れ落ちた感じでこちらはこちらで怖い。斜登高の場合、どうしても横目に下の斜面が目に入るので、もともと高所恐怖症の気が強く、さらに斜度に以前より弱くなっている僕にとってはすごく恐ろしかった。



 駒の小屋前での小休止の後、いよいよピークへ。こちらもなかなかの急斜面。大丈夫だろうか?


 
 駒の小屋手前のシール登高がかなり怖かったので、僕はそのままスキーを担いでつぼ足でピークを目指した。先行者のトレースがありがたい。



 あと少し。右の奥の方がピーク。



 Mさんはこの斜面をスキーで。すごい!



 急な斜面を登れば、あとほんのわずか。



 そして、5時間半くらいかけてようやくピークに到着。ひとりだったらところどころで躊躇して、ピークに立てかあやしいものだ。Mさん、ありがとう!



 頂上からは周りの山々の眺望をしばし堪能。



 どれがどの山なのかほとんどわからないのだけれども、360度、山々のパノラマ。





 こちらは越後三山のひとつ、八海山らしい。先に頂上に着いていた単独行の女性が教えてくれた。



 さて、山頂からの景色を堪能したあとはいよいよ滑降。登っているときから登ってきた斜面を滑れるのか不安に感じていた僕は、迷惑かけちゃうから下りは別々にとMさんに提案したのだけれども、全然大丈夫だし、何かあったときは2人のほうがお互い絶対安心だからと下山も一緒ということになった。いやいや、ホントありがとう~



 うまく滑れないテレマーク。僕はかなりビクビクだったのだけれども、Mさんはもっとも傾斜のきついあたりからドロップインして華麗に滑り降りていく。



 一方、僕はもちろん傾斜のゆるそうな場所を選んでドロップイン。そしておっかなびっくりの滑降。これくらいの時期のスキーでは、ひどく苦労した覚えはそんなに多くないので、テレマークでもなんとかなるのではという甘い期待を密かに抱いていたりもしたのだけれども、いやいや、ホントまったくもって甘々でございました。ザラメの時期でこんなに転倒したのははじめてというくらいに何度も転倒しながら、ところどころで止まって待っていてくれるMさんについていった。



 下りのルートをどうするか、少し2人で悩んだのだけれども、多分大丈夫でしょうというMさんの言葉で白沢への滑降を選んだ。心配していたのは、途中の滝がまだ雪に埋まっているかということだった。ヤマレコなんかの記録では、もうそろそろ賞味期限間近と書かれていたのでどうだろう?と思っていたのだ。



 白沢に滑り込んだことによって、往路とはまた違った景色を楽しむことができた上に、沢のなかだとスキーがうまく制御できなくても、パイプ状の傾斜を利用してスピードを落としたり、止まったりできるので、不慣れなテレマークの僕にとってはかなりありがたかった。



 ところどころでデブリが出ていたりもしたけれど、





 変化があって、楽しめる沢だった。





 心配していた滝は、思っていたより下部にあった。幸い、ほんの少し水流が出ていた程度で、簡単に左岸を滑り降りることができた。



 そして無事、北ノ又川本流近くまで降りて来た。いやぁ、楽しかった。

 ただ、



 白沢を滑ったことにより、短い距離で高度を下げてしまったこともあり、ここからが長かった。



 ほぼド平坦、そしてときどき小さなのぼり返しのある川原歩き。きれいな風景なので、しばらくはここまでの行程の余韻に浸りながら楽しく歩いていたのだけれども、いかんせん長過ぎた。ロングコースの割には、ここまであまり疲れを感じていなかったのだけれども、ここでかなり疲労感が出はじめた。翌日も休みなので、余力があれば巻機山に行こうと思っていたのだけれども、もう充分満腹になってしまったぞ。



 途中から再びシールをつけて歩き続けて、ようやく登山口に帰ってきたときは無事頂上を踏んで帰ってきた喜びと、長い川原歩きから解放された安堵ですごく嬉しかった。ずっと最後までご一緒してくれたMさん、ありがとう!



 登山口でMさんと別れてから、少し遠くの駐車場までスキーを担いでとぼとぼ歩く。雪に潰されたポールを見ながら、雪国の道路行政の大変さを思ったりした。



 急速に雪解けが進んでいるとはいえ、駐車場もこの積雪。

 そうそう、購入したのに一度も使っていなかったBC用のオスプレー・コード32を今回はじめて使ってみたのだけれども、専用につくられているだけあって、とても使いやすかった。写真のようにスキーを取り付けられるのが楽ですごく良かった。



 今回のコース。滑りのことはともかく、天候とMさんのおかげで、越後の名山を存分に楽しめた。





 行きに苦労したシルバーラインだけれども、帰りは後続の車がまったく来なかったので、自分のペースで安全運転に徹して走れた。あぁ良かった。シルバーラインを抜けたあとは、事前にチェックしてあった魚沼で評判のラーメン政吉というお店に向かった。そして期待以上のお味に満足して、汗を流すために地元の温泉に向かったのだった。

 さて、明日どうしよう。。。