セレーゾ監督復帰で王者復活の狼煙!!
鹿島が春季キャンプで準備したもの。
佐藤俊 = 文
text by Shun Sato
photograph by Kyodo News
2013/02/18 12:00
15日、鹿島アントラーズは、11日間の宮崎キャンプを打ち上げた。
宮崎は晴天率が高く、2月の最高気温が13.8度とこの時期にしては比較的暖かく、日差しの当たる場所はアウターも必要ないほどだ。周囲の練習場からは、プロ野球のキャンプが行なわれているのだろう、ポップな音楽が流れ、宮崎がプロスポーツの一大キャンプ地であることを実感させられる。
鹿島は今季、2000年にJリーグで唯一となる3冠を達成した指揮官だったトニーニョ・セレーゾが8年ぶりに監督に戻ってきた。2009年以来のリーグ戦制覇を始め、“強い鹿島”の復活を託されての監督復帰だった。その期待に応えるべく、宮崎キャンプは、セレーゾ監督の王座奪回への執念が垣間見える厳しいものだった。
キャンプ前半は2部練習で、フィジカル中心。さすがに後半は疲労などが考慮され、1部練習だけになったが、キャンプがハードだったか否かは、選手の表情を見れば一目瞭然だ。
各選手とも、やや疲れ気味だが、顔のラインがシャープになり、体は非常に絞れていた。キャンプ前はウエイトがオーバー気味だったダヴィでさえ、「いい調整が出来た。明日、開幕でも大丈夫」と、最終日のホンダロック(JFL)との練習試合では軽快な動きを見せていた。
試合終盤で弱かったチームに、徹底的に持久力をつけさせた。
ややホッソリした中田浩二は言う。
「昨年は、どちらかというとアジリティ系、瞬発系などスピードを重視したトレーニングが多かった。でも、今年はミドルパワー、持久力系のトレーニングがすごく増えた。それは、昨年、後半に動きが落ちたり、追い付かれたり、そういうのを監督が見て、考えたんだと思う。そのトレーニングが出来たので、今年は体力的にはすごくバランスが取れていると思う」
中田が指摘した通り、昨年の鹿島は後半30分以降に失点するケースが多く、追い付かれることもしばしば。逆に、そういう場面で勝ち越したりすることも出来なくなっていた。後半に運動量が落ち、集中力を持続出来なかったことが影響しているのは間違いなかった。
その反省を活かし、セレーゾは90分間走れる体力作りをこのキャンプのメインにした。
J2得点王ダヴィは大迫、ジュニーニョとの相性も良し。
過去、鹿島が最後まで諦めずに攻撃をし続け、押されても巧くいなしながら勝てたのは、厳しい練習によって育まれた豊富な運動量という裏付けがあったからだ。ただ、以前のセレーゾは練習時間が長く、ハードだったが、今回は科学的なトレーニングを導入し、中田曰く「短時間でも密度の濃いトレーニングが出来ていた」という。
昨年末、鹿島は新井場徹(→C大阪)、興梠慎三(→浦和)、増田誓志(→蔚山現代)ら主力が移籍で抜けたが、代わりに野沢拓也(←神戸)が復帰し、ダヴィ(←甲府)、中村充孝(←京都)らが加入した。ホンダロック戦では、その新加入組の活躍を始め、昨年の鹿島とは違ういくつものシーンが見られた。鹿島は昨年、チャンスは作れるが得点できずにシーズンを通して得点力不足に苦しんだ。だが、それは今季では改善されそうだ。
練習試合後半、出場したダヴィは、チャンスとあれば積極的にシュートを放ちゴールを決めるなど、昨年J2得点王の勢いそのままにプレーしていた。大迫勇也、ジュニーニョとの相性も良く、前線の迫力は格段に増し、得点力は大きく向上するだろう。
鹿島の伝統“繋ぐサッカー”の復活をチーム全員で目指す!
また、戦い方にも変化が見られた。
昨季は攻撃の時、縦に急ぎ過ぎるため中盤がついてこれず、厚みのある攻撃が出来ていなかった。だが、今シーズンは「しっかり繋いで回す」というセレーゾ監督の考えが浸透している。ミニゲームでもとにかく「しっかり繋げ」と、声を張り上げ、繋ぐ意識を徹底させていた。柴崎岳も「慌てないでボールを回しながらチャンスを窺う。もちろん早く攻める時もあるけど、監督はそのメリハリをつけることを求めている」と言うように、中盤で時間とリズムを作り、緩急をつけて攻める意識付けをしていたのだ。
鹿島の伝統とも言える繋ぐサッカーの復活は、選手起用からも窺えた。
練習試合では、センターバックに岩政大樹と青木剛が入り、左サイドバックには中田が入った。
青木は、「自分がセンターバックとして求められているのは、ビルドアップの部分」と語り、中田も「サイドで起点になること」と、守備のみならず、攻撃での役割を期待されていることを認識していた。青木は元ボランチで繋ぎがうまいところを評価されての起用。中田も元ボランチでトゥルシエが代表監督だった時は、フィードの精度を高く評価されて代表入りも果たしており、2人ともしっかりとビルドアップできる選手といえる。
ベテランの中田が、サイドバックで豊富な運動量を披露。
中田は、サイドを何度も行き来するサイドバックで起用されているが、プレーはもちろん運動量的にも全く問題はなかった。
小笠原満男や本山雅志と同じ'79年組で今年34歳になるが、ホンダロック戦では再三、サイドを駆け上がり、ベンチで見ていた選手から冷やかしの歓声を浴びていたほどだ。
「今年は、左サイドバックだけど、自分的には問題はない。メンバーが大きく変わったわけじゃないので、コンビネーションも問題ないしね。左右のサイドでの攻撃の作り、全体の戦術的なことは、これから鹿島に帰ってから本格的にやると思うけど、選手の意識付けなど、今の時点でこれだけ出来ているのはいいことだと思う」
そう語って、中田は満足そうな表情を浮かべた。
攻撃のオプションも期待できそうだ。
新加入の中村もホンダロック戦でゴールを挙げたが、試合では再三、裏を取る動きで相手を翻弄した。鹿島には、スピードがあって裏を取る動きができる選手が少なかっただけに貴重な戦力となるだろう。
「今年は……勝ちたいっすね」
ホンダロック戦は、7-0で圧勝。
ボールはほぼ鹿島が支配し、ほとんど相手に攻撃をさせなかった。
セレーゾ監督も「自分たちが常にゴールを狙うという姿勢、ボールを取られてもすぐに奪ってゴールを狙うという姿勢が出せた。非常にいい練習が出来た」と、充実した表情で宮崎キャンプを総括した。
「今年は……勝ちたいっすね」
試合後、小笠原はそう言った。
過去6年連続で必ず何かのタイトルをとってきた鹿島。
リーグ戦は2009年以来獲れていないが、2010年には天皇杯、2011年と2012年にはナビスコ杯2連覇を達成するなど、2007年以降6年連続で何かしらのタイトルを獲ってきている。にも、かかわらず、物足りなさを感じるのは、鹿島というチームに対する期待の表れでもある。
「そういう風に思われるクラブって、Jではないでしょ。だから、鹿島っていいなって思うし、だからこそ今年は全タイトルを獲って、ACLの出場権も獲って、2000年の3冠達成を越えていきたいと思う」
小笠原は、強い決意で、そう語った。
選手は勝利とタイトルに飢え、そのための準備も着々と進んでいる。
合宿最終日、朝まで冷たい雨が降っていたが試合開始前には止み、陽も射してきた。
雨のち晴れ――。
それは、昨シーズンの不調を乗り越え、躍進する鹿島の今シーズンの予兆のように見えた。
ナンバーの佐藤氏によるキャンプレポートである。
特筆すべきは、今回のトニーニョ・セレーゾ監督の指導は科学的なトレーニングが導入されておるというところであろうか。
前回の就任時には練習時間が長くハードであったが、今回はより科学的になり短時間でも密度の濃い練習になっておる模様。
これにてベテランの現役寿命も延びるのではなかろうか。
トニーニョ・セレーゾ監督自身も41歳まで現役プレイヤーを続行しており、ベテランの経験というモノを理解しておる。
世代交代は叫ばれておるが、老獪なテクニックを持つ経験者の実績は簡単には外せまい。
ベテランと中堅、若手が融合する強き鹿島がこのキャンプで出来上がったのではなかろうか。
今季は昨季以上のタイトルを得、更なる躍進が期待出来る。
シーズン開幕が楽しみである。
鹿島が春季キャンプで準備したもの。
佐藤俊 = 文
text by Shun Sato
photograph by Kyodo News
2013/02/18 12:00
15日、鹿島アントラーズは、11日間の宮崎キャンプを打ち上げた。
宮崎は晴天率が高く、2月の最高気温が13.8度とこの時期にしては比較的暖かく、日差しの当たる場所はアウターも必要ないほどだ。周囲の練習場からは、プロ野球のキャンプが行なわれているのだろう、ポップな音楽が流れ、宮崎がプロスポーツの一大キャンプ地であることを実感させられる。
鹿島は今季、2000年にJリーグで唯一となる3冠を達成した指揮官だったトニーニョ・セレーゾが8年ぶりに監督に戻ってきた。2009年以来のリーグ戦制覇を始め、“強い鹿島”の復活を託されての監督復帰だった。その期待に応えるべく、宮崎キャンプは、セレーゾ監督の王座奪回への執念が垣間見える厳しいものだった。
キャンプ前半は2部練習で、フィジカル中心。さすがに後半は疲労などが考慮され、1部練習だけになったが、キャンプがハードだったか否かは、選手の表情を見れば一目瞭然だ。
各選手とも、やや疲れ気味だが、顔のラインがシャープになり、体は非常に絞れていた。キャンプ前はウエイトがオーバー気味だったダヴィでさえ、「いい調整が出来た。明日、開幕でも大丈夫」と、最終日のホンダロック(JFL)との練習試合では軽快な動きを見せていた。
試合終盤で弱かったチームに、徹底的に持久力をつけさせた。
ややホッソリした中田浩二は言う。
「昨年は、どちらかというとアジリティ系、瞬発系などスピードを重視したトレーニングが多かった。でも、今年はミドルパワー、持久力系のトレーニングがすごく増えた。それは、昨年、後半に動きが落ちたり、追い付かれたり、そういうのを監督が見て、考えたんだと思う。そのトレーニングが出来たので、今年は体力的にはすごくバランスが取れていると思う」
中田が指摘した通り、昨年の鹿島は後半30分以降に失点するケースが多く、追い付かれることもしばしば。逆に、そういう場面で勝ち越したりすることも出来なくなっていた。後半に運動量が落ち、集中力を持続出来なかったことが影響しているのは間違いなかった。
その反省を活かし、セレーゾは90分間走れる体力作りをこのキャンプのメインにした。
J2得点王ダヴィは大迫、ジュニーニョとの相性も良し。
過去、鹿島が最後まで諦めずに攻撃をし続け、押されても巧くいなしながら勝てたのは、厳しい練習によって育まれた豊富な運動量という裏付けがあったからだ。ただ、以前のセレーゾは練習時間が長く、ハードだったが、今回は科学的なトレーニングを導入し、中田曰く「短時間でも密度の濃いトレーニングが出来ていた」という。
昨年末、鹿島は新井場徹(→C大阪)、興梠慎三(→浦和)、増田誓志(→蔚山現代)ら主力が移籍で抜けたが、代わりに野沢拓也(←神戸)が復帰し、ダヴィ(←甲府)、中村充孝(←京都)らが加入した。ホンダロック戦では、その新加入組の活躍を始め、昨年の鹿島とは違ういくつものシーンが見られた。鹿島は昨年、チャンスは作れるが得点できずにシーズンを通して得点力不足に苦しんだ。だが、それは今季では改善されそうだ。
練習試合後半、出場したダヴィは、チャンスとあれば積極的にシュートを放ちゴールを決めるなど、昨年J2得点王の勢いそのままにプレーしていた。大迫勇也、ジュニーニョとの相性も良く、前線の迫力は格段に増し、得点力は大きく向上するだろう。
鹿島の伝統“繋ぐサッカー”の復活をチーム全員で目指す!
また、戦い方にも変化が見られた。
昨季は攻撃の時、縦に急ぎ過ぎるため中盤がついてこれず、厚みのある攻撃が出来ていなかった。だが、今シーズンは「しっかり繋いで回す」というセレーゾ監督の考えが浸透している。ミニゲームでもとにかく「しっかり繋げ」と、声を張り上げ、繋ぐ意識を徹底させていた。柴崎岳も「慌てないでボールを回しながらチャンスを窺う。もちろん早く攻める時もあるけど、監督はそのメリハリをつけることを求めている」と言うように、中盤で時間とリズムを作り、緩急をつけて攻める意識付けをしていたのだ。
鹿島の伝統とも言える繋ぐサッカーの復活は、選手起用からも窺えた。
練習試合では、センターバックに岩政大樹と青木剛が入り、左サイドバックには中田が入った。
青木は、「自分がセンターバックとして求められているのは、ビルドアップの部分」と語り、中田も「サイドで起点になること」と、守備のみならず、攻撃での役割を期待されていることを認識していた。青木は元ボランチで繋ぎがうまいところを評価されての起用。中田も元ボランチでトゥルシエが代表監督だった時は、フィードの精度を高く評価されて代表入りも果たしており、2人ともしっかりとビルドアップできる選手といえる。
ベテランの中田が、サイドバックで豊富な運動量を披露。
中田は、サイドを何度も行き来するサイドバックで起用されているが、プレーはもちろん運動量的にも全く問題はなかった。
小笠原満男や本山雅志と同じ'79年組で今年34歳になるが、ホンダロック戦では再三、サイドを駆け上がり、ベンチで見ていた選手から冷やかしの歓声を浴びていたほどだ。
「今年は、左サイドバックだけど、自分的には問題はない。メンバーが大きく変わったわけじゃないので、コンビネーションも問題ないしね。左右のサイドでの攻撃の作り、全体の戦術的なことは、これから鹿島に帰ってから本格的にやると思うけど、選手の意識付けなど、今の時点でこれだけ出来ているのはいいことだと思う」
そう語って、中田は満足そうな表情を浮かべた。
攻撃のオプションも期待できそうだ。
新加入の中村もホンダロック戦でゴールを挙げたが、試合では再三、裏を取る動きで相手を翻弄した。鹿島には、スピードがあって裏を取る動きができる選手が少なかっただけに貴重な戦力となるだろう。
「今年は……勝ちたいっすね」
ホンダロック戦は、7-0で圧勝。
ボールはほぼ鹿島が支配し、ほとんど相手に攻撃をさせなかった。
セレーゾ監督も「自分たちが常にゴールを狙うという姿勢、ボールを取られてもすぐに奪ってゴールを狙うという姿勢が出せた。非常にいい練習が出来た」と、充実した表情で宮崎キャンプを総括した。
「今年は……勝ちたいっすね」
試合後、小笠原はそう言った。
過去6年連続で必ず何かのタイトルをとってきた鹿島。
リーグ戦は2009年以来獲れていないが、2010年には天皇杯、2011年と2012年にはナビスコ杯2連覇を達成するなど、2007年以降6年連続で何かしらのタイトルを獲ってきている。にも、かかわらず、物足りなさを感じるのは、鹿島というチームに対する期待の表れでもある。
「そういう風に思われるクラブって、Jではないでしょ。だから、鹿島っていいなって思うし、だからこそ今年は全タイトルを獲って、ACLの出場権も獲って、2000年の3冠達成を越えていきたいと思う」
小笠原は、強い決意で、そう語った。
選手は勝利とタイトルに飢え、そのための準備も着々と進んでいる。
合宿最終日、朝まで冷たい雨が降っていたが試合開始前には止み、陽も射してきた。
雨のち晴れ――。
それは、昨シーズンの不調を乗り越え、躍進する鹿島の今シーズンの予兆のように見えた。
ナンバーの佐藤氏によるキャンプレポートである。
特筆すべきは、今回のトニーニョ・セレーゾ監督の指導は科学的なトレーニングが導入されておるというところであろうか。
前回の就任時には練習時間が長くハードであったが、今回はより科学的になり短時間でも密度の濃い練習になっておる模様。
これにてベテランの現役寿命も延びるのではなかろうか。
トニーニョ・セレーゾ監督自身も41歳まで現役プレイヤーを続行しており、ベテランの経験というモノを理解しておる。
世代交代は叫ばれておるが、老獪なテクニックを持つ経験者の実績は簡単には外せまい。
ベテランと中堅、若手が融合する強き鹿島がこのキャンプで出来上がったのではなかろうか。
今季は昨季以上のタイトルを得、更なる躍進が期待出来る。
シーズン開幕が楽しみである。
いつも欧州出身の監督ばかり持ち上げてる媒体なので。
セレーゾがコンディショニング専門のコーチを連れてきたのが効を奏したのか、大きな怪我人なくハードなキャンプを終えられホッとしています。
ベテランですが、今年は怪我無く、素晴らしいシーズンを送ってください。
前野選手、獲得して正解かも!と思いました。
同じ移籍加入の中村選手やダヴィなども期待大ですが
まだメディアにスルーされてしまいがちなのはちょっと寂しいけれど
前野選手、期待しています