【J1:第3節 鳥栖 vs 鹿島】レポート:流れを読み、流れを引き寄せ、流れをつかむ。全員が流れに乗って首位をキープした鹿島。流れの中で決めきれず、うまさと若さとに屈した鳥栖(14.03.16)
3月15日(土) 2014 J1リーグ戦 第3節
鳥栖 0 - 3 鹿島 (15:04/ベアスタ/13,013人)
得点者:40' 青木剛(鹿島)、59' 土居聖真(鹿島)、72' 豊川雄太(鹿島)
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勝利した鹿島・トニーニョ セレーゾ監督の言葉から紹介したい。
「我々は、ニュートラルな状態からどこかのタイミングでギアを入れていこうかなという入り方をした」
決して、意図した試合の入り方ではなかったようだ。一方で鳥栖の試合の入り方を「いつも通り、立ち上がりから100%のアグレッシブで来ていた」と感じていた。トニーニョ セレーゾ監督だけでなく、試合を観に駆け付けた13,013人のサポーターも同様に感じていただろう。だが、終わってみると鳥栖の0-3。GK林彰洋の「鹿島のしたたかさを感じた」という言葉にうなずける内容だった。と同時に、先制点の重みとサッカーの奥深さを再認識した試合でもあった。
キックオフは鹿島。それでも、開始20秒には左サイドMF金民友のクロスに中央でFW豊田陽平がシュートを放つことができた。トニーニョ セレーゾ監督(鹿島)が評した「アグレッシブに来ていた」姿はここにも見ることができた。12分にも、MF藤田直之のクロスにFW池田圭がヘディングでゴールを狙うシーンもあった。間違いなく、試合開始直後から鳥栖のペースで試合は進行していた。“流れに乗って”プレーをしていたといえる。この流れを支えていたのは、鳥栖の守備の距離感。センターバック菊地直哉は「距離感は悪くなかった」と感じていたし、MF谷口博之も「前半は鳥栖のゲーム」と言い切った。見ている側もプレーする側も、“鳥栖の流れ”を感じていた。
その流れを一変させたのが鹿島の“型”だった。40分に鹿島左サイド奥深くで得たFKをMF小笠原満男が低い弾道で、鳥栖ゴール前に蹴り込んだ。鳥栖の守備はゾーンで組んでいるので、その前に早いボールが入るとクリアをするのは難しい。DF青木剛がコースを変えて鳥栖のゴールに流し込んで鳥栖の流れを断ち切った。「一番警戒していたセットプレーで先制点を取られてしまったことが、今日一番大きかった」とDF安田理大は試合後に語った。それだけ、この先制点が鳥栖にショックを、鹿島にパワーを与えた。小笠原の1本のキックで鹿島に“流れを引き寄せた”ことになる。
鳥栖も“流れを引き戻す”べく果敢に攻め、集中して守った。53分には、左CKから豊田がシュートを放ち、55分にはGK林が素早い反応で追加点を阻止した。それでも、鹿島の流れは変わらなかった。59分には、FWダヴィが自ら持ち込み中央のFW土居聖真に合わせて追加点を挙げた。“流れを加速”した得点だった。鳥栖は、64分にMF水沼宏太とMF高橋義希を入れて得点を取りに来たが“流れは戻らず”じまい。72分に 鹿島・MF豊川雄太に3点目を奪われて今季初の敗戦となった。
失点を重ねた要因を菊地が冷静に振り返ってくれた。「失点を重ねていくと選手間が広がってくるし、ボランチのところも自由にやられてしまう。スペースできれば相手のトップ下の選手も受けられるようになる」。確かに、先制点以降は鳥栖の距離感ではなく、鹿島の距離感でサッカーが行われていた。谷口の言葉を信じて次節に期待したい。「(先制されるまでは) 内容が悪くはなかったので引きずらないようにしたい」。
と試合の振り返りはここまでで、最後にこの試合の“流れを変えた”理由を探っておきたい。試合の入りは、トニーニョ セレーゾ監督の指摘したとおり鳥栖の流れであった。20歳前後の選手を5人起用していることもあり、一気に試合に入り込むのは経験上難しいのかもしれない。「(若い選手は)試合に出続けることによっていろいろなものを得られるし、それらを選手たちが飲み込んで戦っている」(トニーニョ セレーゾ監督)ことを考えると致し方ないかもしれない。しかし、そこで失点しないのが鹿島のうまさなのであろう。34歳の小笠原のFKを31歳の青木が決めて“(鳥栖の)流れを断ち切り”、30歳のダヴィがお膳立てをして21歳の土居が決めて“流れを引き寄せ”た。最後は、19歳の豊川がとどめを刺して、ラスト10分間では20歳の伊東幸敏に代えて34歳の中田浩二を起用する手堅さを見せた。合わせてルイス アルベルトとカイオを公式戦で初起用し、今後の経験を積ませる交代も見せた。ベテランの試合勘を信じ、若手の勢いを買い、耐える時間帯と攻める時間帯を読むトニーニョ セレーゾ監督の手腕と日ごろからの練習で培った信頼関係が、この試合の流れを大きく動かしたのかもしれない。「試合の入り方を反省し…」と言ったトニーニョ セレーゾ監督の言葉を100%信じていいのかどうか、筆者の頭ではいまだにこの試合の流れをつかみ切れていない。
結果がすべてのプロフェッショナルの世界。しかし、結果に至るまでの過程を問われるのも事実。ワンプレーで状況を好転させ、1つのミスで結果を逃してしまうのがサッカー。流れを変えるのも、流れをつかむのも、プレーの質次第。常にアラートな状態で神経を集中させ、いかなる状況にも瞬時に対応しないといけないのがサッカーなのである。
以上
2014.03.16 Reported by サカクラゲン
トニーニョ・セレーゾ監督のコメント引用から入り、試合の経緯を説明したサカクラゲン氏のレポートである。
鳥栖番として悔しさもあろうが、手堅くまとめたと言ってよかろう。
しかしながら、この試合における重要なポイントであるPKについて述べぬのは片手落ちではなかろうか。
曽ケ端のスーパーセーブもさることながら、それに至るファールについてコメントすべきである。
そもそもペナルティエリア外でのプレイであり、青木は先にボールに触れておる。
つまりファールですらなく、そこを見損なったとしてもPKではない。
このジャッジには少々残念な気持ちにさせられた。
このプレイ以前にジャッジされたオフサイドの判定が正しかっただけに余計に悲しい。
この試合では、ダヴィのイエローカードも妥当ではないし、豊川に至っては足の裏を見せてきた相手にこそイエローカードが正しい。
偏ったジャッジに負けなかった強さこそが、この試合のレポートである。
強い鹿島が還ってきた。
これからも強さを維持していきたい。
期待しておる。
3月15日(土) 2014 J1リーグ戦 第3節
鳥栖 0 - 3 鹿島 (15:04/ベアスタ/13,013人)
得点者:40' 青木剛(鹿島)、59' 土居聖真(鹿島)、72' 豊川雄太(鹿島)
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勝利した鹿島・トニーニョ セレーゾ監督の言葉から紹介したい。
「我々は、ニュートラルな状態からどこかのタイミングでギアを入れていこうかなという入り方をした」
決して、意図した試合の入り方ではなかったようだ。一方で鳥栖の試合の入り方を「いつも通り、立ち上がりから100%のアグレッシブで来ていた」と感じていた。トニーニョ セレーゾ監督だけでなく、試合を観に駆け付けた13,013人のサポーターも同様に感じていただろう。だが、終わってみると鳥栖の0-3。GK林彰洋の「鹿島のしたたかさを感じた」という言葉にうなずける内容だった。と同時に、先制点の重みとサッカーの奥深さを再認識した試合でもあった。
キックオフは鹿島。それでも、開始20秒には左サイドMF金民友のクロスに中央でFW豊田陽平がシュートを放つことができた。トニーニョ セレーゾ監督(鹿島)が評した「アグレッシブに来ていた」姿はここにも見ることができた。12分にも、MF藤田直之のクロスにFW池田圭がヘディングでゴールを狙うシーンもあった。間違いなく、試合開始直後から鳥栖のペースで試合は進行していた。“流れに乗って”プレーをしていたといえる。この流れを支えていたのは、鳥栖の守備の距離感。センターバック菊地直哉は「距離感は悪くなかった」と感じていたし、MF谷口博之も「前半は鳥栖のゲーム」と言い切った。見ている側もプレーする側も、“鳥栖の流れ”を感じていた。
その流れを一変させたのが鹿島の“型”だった。40分に鹿島左サイド奥深くで得たFKをMF小笠原満男が低い弾道で、鳥栖ゴール前に蹴り込んだ。鳥栖の守備はゾーンで組んでいるので、その前に早いボールが入るとクリアをするのは難しい。DF青木剛がコースを変えて鳥栖のゴールに流し込んで鳥栖の流れを断ち切った。「一番警戒していたセットプレーで先制点を取られてしまったことが、今日一番大きかった」とDF安田理大は試合後に語った。それだけ、この先制点が鳥栖にショックを、鹿島にパワーを与えた。小笠原の1本のキックで鹿島に“流れを引き寄せた”ことになる。
鳥栖も“流れを引き戻す”べく果敢に攻め、集中して守った。53分には、左CKから豊田がシュートを放ち、55分にはGK林が素早い反応で追加点を阻止した。それでも、鹿島の流れは変わらなかった。59分には、FWダヴィが自ら持ち込み中央のFW土居聖真に合わせて追加点を挙げた。“流れを加速”した得点だった。鳥栖は、64分にMF水沼宏太とMF高橋義希を入れて得点を取りに来たが“流れは戻らず”じまい。72分に 鹿島・MF豊川雄太に3点目を奪われて今季初の敗戦となった。
失点を重ねた要因を菊地が冷静に振り返ってくれた。「失点を重ねていくと選手間が広がってくるし、ボランチのところも自由にやられてしまう。スペースできれば相手のトップ下の選手も受けられるようになる」。確かに、先制点以降は鳥栖の距離感ではなく、鹿島の距離感でサッカーが行われていた。谷口の言葉を信じて次節に期待したい。「(先制されるまでは) 内容が悪くはなかったので引きずらないようにしたい」。
と試合の振り返りはここまでで、最後にこの試合の“流れを変えた”理由を探っておきたい。試合の入りは、トニーニョ セレーゾ監督の指摘したとおり鳥栖の流れであった。20歳前後の選手を5人起用していることもあり、一気に試合に入り込むのは経験上難しいのかもしれない。「(若い選手は)試合に出続けることによっていろいろなものを得られるし、それらを選手たちが飲み込んで戦っている」(トニーニョ セレーゾ監督)ことを考えると致し方ないかもしれない。しかし、そこで失点しないのが鹿島のうまさなのであろう。34歳の小笠原のFKを31歳の青木が決めて“(鳥栖の)流れを断ち切り”、30歳のダヴィがお膳立てをして21歳の土居が決めて“流れを引き寄せ”た。最後は、19歳の豊川がとどめを刺して、ラスト10分間では20歳の伊東幸敏に代えて34歳の中田浩二を起用する手堅さを見せた。合わせてルイス アルベルトとカイオを公式戦で初起用し、今後の経験を積ませる交代も見せた。ベテランの試合勘を信じ、若手の勢いを買い、耐える時間帯と攻める時間帯を読むトニーニョ セレーゾ監督の手腕と日ごろからの練習で培った信頼関係が、この試合の流れを大きく動かしたのかもしれない。「試合の入り方を反省し…」と言ったトニーニョ セレーゾ監督の言葉を100%信じていいのかどうか、筆者の頭ではいまだにこの試合の流れをつかみ切れていない。
結果がすべてのプロフェッショナルの世界。しかし、結果に至るまでの過程を問われるのも事実。ワンプレーで状況を好転させ、1つのミスで結果を逃してしまうのがサッカー。流れを変えるのも、流れをつかむのも、プレーの質次第。常にアラートな状態で神経を集中させ、いかなる状況にも瞬時に対応しないといけないのがサッカーなのである。
以上
2014.03.16 Reported by サカクラゲン
トニーニョ・セレーゾ監督のコメント引用から入り、試合の経緯を説明したサカクラゲン氏のレポートである。
鳥栖番として悔しさもあろうが、手堅くまとめたと言ってよかろう。
しかしながら、この試合における重要なポイントであるPKについて述べぬのは片手落ちではなかろうか。
曽ケ端のスーパーセーブもさることながら、それに至るファールについてコメントすべきである。
そもそもペナルティエリア外でのプレイであり、青木は先にボールに触れておる。
つまりファールですらなく、そこを見損なったとしてもPKではない。
このジャッジには少々残念な気持ちにさせられた。
このプレイ以前にジャッジされたオフサイドの判定が正しかっただけに余計に悲しい。
この試合では、ダヴィのイエローカードも妥当ではないし、豊川に至っては足の裏を見せてきた相手にこそイエローカードが正しい。
偏ったジャッジに負けなかった強さこそが、この試合のレポートである。
強い鹿島が還ってきた。
これからも強さを維持していきたい。
期待しておる。