鹿島、想定外の失速で
J1優勝争いは大混戦に。
二宮寿朗 = 文
text by Toshio Ninomiya
J1の優勝争いが混沌としてきた。一時は2位に勝ち点10差をつけて独走状態に入っていた鹿島アントラーズがここにきて急ブレーキ。第28節(10月4日)でアルビレックス新潟に0-1で敗れ、5カ月ぶりに首位の座を明け渡した。
鹿島と勝ち点50で並んだリーグ戦13戦不敗中の清水エスパルスが、得失点差で今季初めてトップに。2位に転落した鹿島の後に、ガンバ大阪(勝ち点49)、川崎フロンターレ(49)、アルビレックス新潟(46)、サンフレッチェ広島(45)と続き、勝ち点5差内に6チームがひしめく大混戦となったのだ。
この“戦国J1”をはからずも演出しているのが鹿島だ。夏場から秋口にかけて調子を落とすのは、今年に限った話ではない。昨年も8、9月のリーグ戦で3勝2分け2敗と、もたついている。フィジカルコーチ出身のオリヴェイラ監督は開幕からしっかりと戦えるコンディションをつくり、一時期ペースダウンすることも織り込み済みで、10月あたりからラストスパートを仕掛けるやり方でリーグ2連覇を果たしてきた。
メンバー固定化と控え組の低調。鹿島レギュラー陣は疲弊した。
だが今年は我慢すべき8月、9月で2勝5敗。主力の青木剛は1-4で大敗した名古屋グランパス戦(9月26日)の後、「鹿島に入ってから、一番悪いゲーム」と連係ミスのオンパレードを嘆いた。チーム失速の要因の一つに「勤続疲労」があるのは明らかだ。
ベスト16に終わったアジアチャンピオンズリーグ(ACL)出場は昨年も経験したこと。しかしながら、同じACL出場組でリーグ上位にいる川崎、G大阪と明らかに違うのは、鹿島がメンバーをほぼ固定してシーズンを戦っている点だ。オリヴェイラ監督が今のメンバーに固執しているとも言えるが、見方を変えれば控えのメンバーが先発メンバーを脅かしていないとも映る。大迫勇也、パク・チュホら有望な若手や助っ人のダニーロも、後半戦は流れを変えられるような活躍ができていない。
昨年、終盤戦に入って小笠原満男がケガで離脱したとき、中後雅喜(今季千葉に期限付き移籍)が台頭して、チームが活気づいた。控え組を含めたチーム全体の底力で、危機を脱したのだ。だが、今年はその「底力」が足りない。本山雅志が8月1日の広島戦後に左太股裏肉離れで戦列を離れたとき、チーム力の低下を食い止められなかったのが顕著な例だ。
残り6試合。上位チームのつぶし合いが始まる……。
Jリーグは残り6試合。2週間の中断明けとなる17日から、上位チームによるつぶし合いが始まる。
鹿島が失速したとはいえ、どのクラブにも不安要素はある。首位清水は堅守を支えていた青山直晃がケガで離脱。影響は今のところ出ていないが、最終ラインが手薄になった感は否めない。
川崎は8強まで進んだACLの連戦の疲れが見え始めている。特にチームと日本代表でフル回転している中村憲剛のコンディションは気になるところだ。遠藤保仁が調子を上げてきたG大阪にしてもレアンドロの代わりに獲得したペドロ・ジュニオールがどこまでフィットするか、まだ不透明。いずれにせよ、代表ウィークの中断期間をうまく活かしたチームが、優勝に近づくことは間違いない。鹿島にとっても、建て直すには十分な時間と言える。
優勝想定ラインは勝ち点63ぐらいか。5チームが最終節まで優勝の可能性を残した'05年シーズンの状況によく似ている。あのときはG大阪が初優勝した。果たして今年は……。
Number739号掲載|Number バックナンバー(更新日:2009年10月16日)
ナンバーのコラムである。
メンバー固定について述べておる。
ここしばらくの不調でチームに新しい風を吹き込んで欲しいと、メンバーの変更を望む声も聞く。
しかしながら、このコラムでは二宮氏が、下からの突き上げがないと憂いておる。
サテではヤスや小谷野が素晴らしいプレイを見せておるが、トップでは結果を出せずにおる。
出せば成長して活躍するというのはゲームの世界の話であろう。
現実では練習でレギュラー選手を凌駕し、トップへ上がってくるものである。
同じ程度の能力であれば実績でレギュラーが勝る。
ポジションは与えられるものではなく、奪うものなのだ。
激しい競争に勝ち抜いた者だけがトップのポジションを得られるのである。
そのレギュラー争いの勝者を我等は試合で観ることが叶うのである。
その勝者のメンタリティを持つ者と共にシーズン終盤を戦っていきたい。