図鑑と古書店

2017年04月30日 09時31分16秒 | ドラマのかけら

知り合いにRさんという年配の陶芸家がいる。

Rさんが近所の古書店に行くと必ず手に取る本があった。
分厚い図鑑である。
自分の手元に置いて、作品の参考にしたかった。
だが、いささか高額だった。

棚から出しては中を眺め、買うかどうか悩む日々。

そんなある日、棚から図鑑が消えていた。
誰かが買ってしまったのか。
そうがっかりしていると、

「あの図鑑ならこっちにありますよ」

顔見知りの店主がRさんに声をかけた。
店主の背後の棚を見ると、そこに図鑑があった。

「Rさんが買うんだろうと思って、こっちに避けておきました」

まだ買う決心は出来ていないのだけど、
そう心苦しく思いながら、手渡された図鑑を開いた。

ページをめくるうち、最後のページを見て、Rさんは驚いた。

値札の値段がかなり安くなっていたのだ。

ということで今、その図鑑はRさんの陶房にある。
 
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