会計スキル・USCPA

会計はビジネスの共通語。一緒に勉強しましょ。

政府紙幣3 通貨発行益について(シニョリッジ)

2009-02-12 22:29:29 | 金融
まあ、不人気を承知で政府紙幣3回目です。

この問題は、スティグリッツが異端説だ、と言っているくらいなんですが、しかし、賛成するにせよしないにせよ、きちんとした、シロートにもわかる説明が欲しいですな。当局者は当局者なのだから、難しい話もシロートにわかるように、誠意をもって説明すべきです。あるいはそれができる位の実力者、第一人者が責任者であるべきなんでしょうな。

バーナンキの議会証言。実にわかりやすい。アメリカのマネすりゃ良いわけじゃ無いんですが、こういうとこ、日本の当局者も見習ってほしい、というのがパンピーの一人としては思うわけでして。

というわけで、木でハナをくくったような受け答えにはシロート目線で突っ込んだれ、というのがここで取り上げる趣旨なんですが、

さて、政府紙幣問題ときたら、どうしても通貨発行益の議論を避けては通れないようでして、ついでなんで、少しみておきます。

ネットで『通貨発行益』をググッてみると、いっちゃん最初にこの記事が出てまいります。

通貨発行益(シニョリッジ)をめぐる勘違い

『しばらく前、ある本の書評を頼まれた。かなり興味深い内容だったが、「一万円の原価は約20円。従って通貨発行益は原価を差し引いた9980円である」との部分があった。多分、勘違いだとは思うが、一万円の発行益が9980円と思っている人は意外に多い。私もその一人であったからだ。先日もある著名なエコノミストと通貨発行益の話をしていたら、「エーッ!、9980円じゃないの?、てっきりそうだと思っていた」と驚いていた』

ということは、私も、この方のおっしゃる勘違い組でして、9980円が通貨発行益だと理解しています。

そーじゃ無いっての? それ、どゆこと????

『日銀のバランスシート(B/S)を大雑把にみると、負債側に銀行券、資産側に国債がある。日銀は銀行券の見合いで国債を保有しており、国債買いきりオペが銀行券見合いと位置付けられているのもそのため。銀行券は金利コストのない負債であり、見合った国債の利子収入が通貨発行益となる。一万円だと一万円相当の国債がある格好で、この国債が10年物だとした場合、長期金利1.2%で、単純計算すると年120円が発行益となる。20円の一万円とは、世の中に出回る前に日銀の金庫に眠っている20円のコストがかかった「紙切れ」を指す。これが世に出た瞬間、日銀は1万円の負債としてB/S上に計上するわけだ』

なーるほど。つまりこういうことですね? 日銀が新たに日銀券を発行したって、それは負債にあがるんで、利益としては計上されないと。それで国債を買ったら利息が入るんで、その分は利益として計上されるけど、と。

なるほど、しかし、この説明には少し補足が必要ですな。これではそもそも通貨発行益など存在しない、と受け取られかねないわけで。

正しくは、

『日銀は、日銀券発行によって利益を上げることを許されていない』

とすべきなんじゃないですかね。

許されていないから、日銀券発行の際に負債計上させられているわけですな。許されているんなら、発行した1万円を売上に計上して、発行コスト20円を費用計上すれば良いだけのハナシで。差額は利益として残りますね。その利益が通貨発行益ということになるわけですな。

そんなことされたんじゃかないません。通貨を勝手に発行して、愛人に貢がれたり、ベンツ買われたり、風俗に通われたりでもしたら・・・。ってかたとえが偏ってますかね。

だから負債に計上させて、市中の金融資産を購入したり国債を引き受けることにしか使えないようにしてあるんでしょうな。通貨発行を儲けだと認識させたら、自由に使って良いってことになりかねないわけでしてね。

ですから、通貨発行益は存在しないのではなく、日銀においては生じさせない、ということなんですな。会計処理で通貨発行益が出ないのはその考え方を反映しているだけです。負債計上を義務づけ、資産サイドと常にバランスさせることでポッポに入れられないように管理しているんですね。

で、問題は政府紙幣なんですが、政府が紙幣を発行した場合、これは発行益が発生します、ってかそのためにやるわけですね。20円のコストをかけて1万円の政府紙幣を発行する。それで財政支出や減税に使う。使ってしまうってか使えるわけでして、発行益は歳入の部にあがるんですかな。日銀のように制限は無いでしょうからね。

以上なんですが、日銀のバランスシート。言葉だけではちょっとイメージしにくいですよね。
こちらがわかりやすいようで。

図解シニョリッジ







政府紙幣その2 スティグリッツ

2009-02-11 22:49:45 | 金融
ちょいと昨日は一杯やっていたこともあって、ソーサイ様にたてつくようなマネをしていましました。こういう議論、興味ないひとには全くドーデモだと思いますが、ネタとしては結構奥深で、賛成派、反対派それぞれいろんなのがあって・・・。

で、昨日冒頭で、政府紙幣の議論はこのところの世界金融危機の前から主張してた人がいたはず、と書いたんですが、

どこで読んだんだっけ、とネットで調べてみたら、ネタもとはどうもスティグリッツさんのようで。

スティグリッツについては以前、書かせていただいたこともある、IMFを批判したりイラク戦費を独自に試算しておられたり、フェアトレード論を展開する、ノーベル賞を受賞した、あえてレッテル貼りをするならばリベラル派経済学者って感じのお方ですな。


関税・外国為替等審議会 外国為替等分科会
最近の国際金融の動向に関する専門部会
(第4回)議事録


それが、なんと財務省の専門部会でスティグリッツは説明しているわけで、H15年とあるので、やはり随分前ですな。

『これから申し上げることはほとんど異端的な考え方であることから、信頼あるエコノミストとしての私の切り札を失うのではないかと危惧しています。エコノミストしては大罪かもしれませんが、政府紙幣の発行を提言したいと思います』

なんかしびれますな。ノーベル賞を受賞して、政府のためにも働いて、教科書も売れて、著書は世界的に評判になっているスティグリッツさんですが、別に神棚に祭られるわけでなし、一線から退いて説教講演して回るでなし、日本まで来て名声をリスクにさらして異端説を唱えまっせー、と言うんですからね。

『私が政府紙幣の発行を提言すると、皆さんは私を見つめ、この男は一体どこで博士号を取得したのかとおっしゃるでしょう』

ハハハのハ。おっしゃるわけないやろ。

『しかし、デフレ経済では、事情は全く逆なのです。少なくとも、議論に値する考え方だと思われます。政府紙幣の発行により債務のファイナンスを行います。不連続性については例証はありません。つまり、「政府紙幣の発行を始めれば、ハイパーインフレを招かないか」と質問される方がおられるでしょう。理論の上では、世界は非常に不連続的であり、日銀と財務省の適切な政策についての私の観察では、たとえ政府紙幣の発行を始めたとしても印刷機のスピードをただ速めるようなことはしないと確信しています。政府紙幣の発行スピードは非常に緩やかなものとなるでしょう。真の問題は、政府紙幣を増発しすぎるということではなく、むしろ政府紙幣の増発が不十分な量で終わるということです。したがって、不連続性については例証は存在せず、緩やかに増発すればハイパーインフレを引き起こすことはありません。経済理論によれば、適正なインフレ率が存在し、この水準となるように供給量を調節することができるのです』

いや、全く説得力があるように思えますがね。なんでハイパーインフレやねん、とスティグリッツも予想される反対論に予め突っ込んでいるわけですな。


『利点として、会計上の枠組みにおいて政府の債務の一部として計上されないことが指摘できます。現在日本が抱えている諸問題の一つが、毎年財政赤字を計上し、債務のGDP比がG7諸国の中でも突出していることが挙げられます。このような財政状態から格付機関の格付けに影響が出始め、ご存知のように市場は非合理的で、パニックに陥る可能性があり、債務のGDP比が非常に高くなることでインターナショナルな資本市場においてある種のパニックが発生するというシナリオが心配されています。債務のGDP比が1年で7%であれば、5年後には35%となるでしょう。この数字を現在の135%(債務のGDP比)に加えると、その比率はますます膨らんでいくことになります。このように現在の戦略が持続しないことは明らかであり、代替案について考える必要があります』

おお、スティグリッツさんも、財政赤字が問題だ、と指摘しているじゃないですか。昨日書かせていただきましたが、日銀のバランスシートの悪化が国債金利を引き上げる、みたいな理屈ってそもそも議論すべき問題なんですかね。


この提言に対し、日銀サイドから当然の反論が出てくるわけでして、岩田副総裁です。

『政府が自由に紙幣を発行し、租税政策と財政政策も行うと、歳出に対するコントロールを失ってしまうと思います。これは極めて重要な問題で、貨幣への信認を維持するうえで問題が出てくるのです。アルゼンチンの場合、地方政府が独自に紙幣を発行したために、一体何が起こったでしょうか。金融政策と中央銀行に対する信頼が失われてしまいました。日本では明治時代、大正時代に7回にわたって政府は紙幣を発行していますが、結果的には日銀により吸収され、貨幣の発行に取って代わられただけでした。そして贋金の流通と金融市場の混乱を生じさせただけでした。したがって、政府が直接紙幣を発行することによって、政府の歳出をまかなうという提言は良い提言とは思えません』

日銀バランスシート論はいただけませんが、この理屈はわかります。ドーロやら、ユーセーやら、ノーセーやらコーセーやらゾクの頭が政府をトップにいて、自分トコの業界予算だけ考えてて、政府支出に歯止めがなさそうな状況で自由にカネをすられたんじゃあ、大変でっせ。はい納得。


『より小さな論点として、通貨発行益の分配の問題があります。現在のシステムにおいては、日本銀行が通貨発行益を有し、それは政府に納付されなければならないが、その一定割合は、日本銀行の金融政策及びマクロ・プルーデンス政策のために用いられています。最近、日本銀行は邦銀が莫大な株式資産を保有しているという現実を踏まえて実施した銀行保有株買取りなど、マクロ・プルーデンス政策を発動しています・・・。これは政府、中央銀行のどちらが通貨発行益を保有すべきかという微妙ではありますが重要な問題も含んでいるのです』

これは納得いかない。なんで通貨発行益を日銀が独占する必要があるのか。金融安定化だけに使うべきなのか。全く根拠不明。

で、これに答えてスティグリッツ曰く、

『日本の制度的枠組みでは政府が紙幣を発行するのは難しいと多くの方が指摘されました。それに対しては2つの答え方があるかと思います。第一の答えとして、では、制度を変えなさいと。変革も難しいとは思います。IMFも、よく痛みを伴う選択が必要だと言っていますが、これがその痛みを伴う選択の1つかもしれません。政府が紙幣を発行することができるようにすると、特に日銀にとっての痛みが一番大きいのではないかと思います』

あらー、結構言っちゃってくれてますな。


『ご指摘頂いた制度面の問題点、例えば中央銀行の独立性、また政府が紙幣を勝手に発行すればインフレにつながるのではないかというリスク、それらはいずれも重要な問題です。このようなご質問も出るだろうと予想しながらコメントしていました。つまり、日銀の独立性の有無にかかわりなく、私としては財務省が自制することなく今日から紙幣の印刷機を動かし始めるとは思っていません。そういう可能性はないと思っています。一般論として今の世の中を見てみると、独立性のある中央銀行があれば経済のパフォーマンスが良くなるという証拠はほとんどありません。日銀の方にとっては今のコメントは失礼だったとは思いますが、実際に重要であるマクロ経済上の課題、例えば経済成長、失業、あるいはフィリップス曲線の失業とインフレのトレード・オフ、つまり、インフレを安定水準に保つための代償となる失業率の水準において、中央銀行の独立性があるかどうかであまり変わりはないのです』

総裁選びの時に日銀の独立性について、随分議論になりましたっけ。あんまし関係ないそうです。


『中央銀行の独立性に意味があるとすれば、僅かな効果ですが、独立性を保っている中央銀行はインフレを下げることには少しは成功しているという点です。だからといって、経済成長率が上昇するとか、失業率が下がるとか、他の重要な変数には何の影響もありません。そこで、中央銀行の独立性というアイデアはあまりにも過大評価されているのではないかと思います。特に中央銀行自身が過大評価していると思います』

カンケーあっても、効果はごくわずかなんだそうです。


『さらに、財務省が紙幣を過剰に増発してしまうのではないかという懸念に対して、2点ほど補足したいと思います。第一に、非民主主義国家とは異なり、民主主義社会ではこのような制御できないようなインフレは選挙により牽制されます。国民はそれを求めてはいません。そういう意味で、民主的なプロセスを私は信頼しており、牽制機能が働くものと確信していますし、実際、多くの民主主義国家ではそういう問題はほとんど起こっていません。第2に、仮に民主主義の機能をあまり信頼していないとしても、政府の行動に対して制約をかけることは可能です。例えば政府は紙幣を発行する権限を有するけれども、失業率やデフレ率に見合った割合でしか発行できないようにすることは可能です。制約を課すことで牽制する方法はいくつかあります。勝手に政府がどんどん紙幣を増発するのではないかという不安が存在する場合には、制約をかけることは可能だと思います』

まあ、当然の議論ですね。フツーです。

『最後の点になりますが、政府紙幣の発行ができないというのであれば、それに代わる機能を果たす政府債券を発行することです。無利子の永久債は結局紙幣に極めて近い訳です。無利子の永久債を発行すれば、紙幣同様に流通します。これはにせ金ではありません。代替的な紙幣とでも言いましょうか。これによって問題を解決することも出来ます』

これは、昨日、ソーサイのハナシで出てきたのとはちょっと違って、償還されない無利子国債を政府紙幣の代わりに出して市中で使わせろ、といっているんですな。ソーサイは無利子無期限国債を日銀が引き受ける(ことと政府紙幣発行は同じ)と言っていたわけで。

ここまで、スティグリッツは言ってるわけですな。制度的に難しければ制度を変えろ、制度を変えるのが難しければ無期限国債で代替すれば良いじゃん。

スゴ過ぎですが、シロート目にですが、理屈として不自然なところはないし、検討に値するんじゃないですかね。














政府紙幣反対論って

2009-02-10 22:39:55 | 金融
最近、政府紙幣発行論が話題になったりしてますな。
私自身はシロートなもんで賛成とも反対ともわからないんですが、しかし、感想としては、こんなハナシがメジャ-な議論として新聞やテレビで報道されるようになったんかいな、とちょっとした感慨はあるのですな。

この大不況の入り口で出てくるのは当然という気もするんですが、そもそも、こうなる以前、何年も前から、日本経済の需要不足にはこんな政策が必要なんじゃないか、と指摘してた人もいたはずでしてね。

政策の是非はともかく、気になるのがこれに反対する人たちの反論の仕方です。反対、賛成はあってしかるべきで、どちらにもそれなりの主張があるわけですが、どうもこの反論には納得いかないんですな。


白川総裁記者会見


****

(問) 先ほど総裁は「通貨としての信認」に言及され、今までの決定会合の
記者会見でも同じことを述べていたかと思います。それに通ずることですが、
一部の政治家の中で、政府保証の紙幣を発行したらどうかということをいって
いる方がおられますが、中央銀行としてこのような議論があることについてど
のようにお考えでしょうか。

(総裁) ご質問はいわゆる「政府紙幣」についてかと思います。「政府紙幣」
の発行は、その仕組みの如何によって、実質的には将来の返済が必要な資金調
達である「国債の市中発行」と同じとなるか、あるいは、通貨の信認を損なう
など大きな弊害を伴う「無利息永久国債の日銀引受け」と同じとなるか、その
いずれかになるものと考えられます。

****

もう、いきなり『なんでやねん』、と突っ込みたくなるんですな。だれの立場で考えているか、まあ、総裁なんで日銀の立場なんでしょうが、日銀のバランスシートのことだけ考えているんじゃないんですかね。

****

(総裁)もう少し詳しく説明します。まず、「政府紙幣」が現在の貨幣、コイ
ンと同様の仕組みで発行されるというケースを仮定して考えてみますと、次の
ようなことになります。現在の貨幣、コインは市中から日本銀行に還流してき
た段階で、政府においてこれを回収するための財源が必要となるという点で、
「政府紙幣」もこれと同じ仕組みになります。従って、「政府紙幣」の発行は、
「政府紙幣」が日本銀行に戻ってきた段階で結局は資金調達が必要になるとい
う意味で、これは国債の発行と具体的に変わりはないと思います。

***

なんで日銀に還流してきた段階で資金調達が必要なんでしょうな。日銀が通せんぼするってことなんですかね。コインと政府紙幣の扱いをなんで同じにしなきゃいけないんですかな。

***
(総裁)他方、「政府紙幣」が市中から日本銀行に還流してきたときにも、仮
に政府がこれを回収せず、日本銀行に保有させ続けるという形で「政府紙幣」
が発行されるというケースを仮想的に考えてみますと、この場合、確かに政府
は回収のための財源を必要としないことになります。しかし、この仕組みは、
日本銀行に無利息かつ償還期限のない政府の債務を保有させる点で、「無利息
の永久国債を日本銀行に引受けさせる」ことに等しく、大きな弊害が生じます。

***
なんで政府が回収しなければ日銀に保有させ続けることになるんですかな。政府紙幣を日銀が受け入れたら、また市中に放出すれば良いんじゃないんですかね。日銀としては、できるだけ政府紙幣なんで市中に流通させたくないから、日銀に来た政府紙幣は日銀券に変えた上で市中に還流する、ということなんですかね。なんでそんな風に考えるんですかな.まあ、仮に日銀がそうするというんならそれで良いとして、日銀が政府紙幣を保有することに何の問題があるんでしょうね。

***
(総裁)この弊害の中身、意味合いについてですが、日本銀行券の裏付けとな
る日本銀行の資産として、無利息かつ転売不能な資産を保有することとなり、
円滑な金融調節が阻害されたり、日本銀行の財務の健全性が損なわれたりする
ことへの懸念を通じて、通貨に対する信認が害されるおそれがあります。

***
中央銀行の財務が悪化して金利が上がったとか、インフレになったとか、通貨安になったとか、金融システムが不安定になったとか、聞いたことありますかな。そんな心配する必要があるんですかね。世界で例がありますかね。今は経済全体の危機のハナシをしているんですが、日銀のバランスシートの方が優先なんですかな。

バランスシートが悪化するといっても、政府紙幣が世間一般で流通するんなら、仮に日銀のバランスシートに政府紙幣が計上されていても、何の問題も無いんじゃないですかね。政府紙幣ってクソみたいなもんだ、という前提で考えているからこんな議論になるんでしょうな。

***
(総裁)政府が、日本銀行による国債の直接引受けと同じ仕組みにより恒久的な資金調
達を行うことが、国の債務返済に係る能力や意思に対する市場の疑念を惹起し、
長期金利の上昇を招くおそれもあると考えられます。

***
財政赤字の方はどうなんですかね。国の債務返済能力や意思について懸念が大きいのは巨額の赤字の方じゃないですかな。大恐慌対策で政府紙幣を発行することで債務返済能力に疑念を惹起しますかね。アソーさんだろうが、オザワさんだろうが、巨額の財政出動は必至な情勢だと思いますが、そんな中で、赤字国債を積み増すのと政府紙幣発行するのと、国の債務返済能力への懸念にどんな違いがあるんですかな。どっちも同じだとしたならば、ですね、国債発行して市中からお金を吸い上げてしまうのではなく、政府紙幣を発行してお金を吸い上げることなく、財政出動するほうがこの状況では望ましいんじゃないですかな。政府紙幣で財政出動したら、国債みたいに償還する必要もないんで、返って国債への信認は高まると考えることもできるんじゃないんですかな。

とここまでくると最初の議論に戻るんですが、

総裁のおっしゃる、

『この仕組みは、日本銀行に無利息かつ償還期限のない政府の債務を保有させる点で、「無利息の永久国債を日本銀行に引受けさせる」ことに等しい』ってことなんですね。

政府紙幣が世間で流通する限り、日銀がバランスシートに政府紙幣を抱えていても誰も気にしないし、そもそもこのご時世、無利息無期限の永久国債を日銀に引き受けてもらっても、それでインフレになるとは到底思えないんですな。

デフレ対策でやるわけで、インフレ方向に世の中が動くんならそれで良いんじゃないか、というのがそもそも推進派のご意見のはずですな。

政府紙幣反対論には十分な根拠があることは、なんとなくわかるんですが、この、日銀バランスシートベースの反対論にはシロート目にもツッコミを入れたくなるんですがね。

まあ、あたしがわかってないだけなんでしょうが、もうちょっとフツーの説明があると良いんですがね。




マクドナルド 絶好調続く

2009-02-10 00:19:10 | 飲食
どこもかしこも苦しい中、日本マクドナルドが好調だというニュースがでてまして。

日本マクドナルドHD、2008年12月期連結で売上高、最終利益とも過去最高を更新

過去最高益だそうで。確かに、ホームページを見る限り

去年の4月をのぞけば過去2年間ずっと既存店売上は伸び続けてますな。いやあ、一時期の不調がうそのようで。

まあ、ところで、ですな、日本マクドだけが良いってわけじゃなくてですね、

McDonald's same-store sales up 7.1 percent in Jan

米マクドナルドもかなりよさそうですな。

McDonald's Corp (MCD.N) said on Monday that worldwide sales at its restaurants open at least 13 months rose 7.1 percent in January, driven by strength abroad, and its shares rose in premarket trading.

既存店は世界全体では7.1%の伸び。

The world's largest hamburger chain said January same-store sales rose 5.4 percent in the United States due to demand for McDonald's core menu and breakfast items.

米国は5.4%.


Same-store sales rose 7.1 percent in Europe, driven by strong results in Britain, France and Russia.

ヨーローッパが7.1%

The company said sales in its Asia/Pacific, Middle East and Africa segment rose 10.2 percent due to strong growth in Australia, China and other countries. Locally tailored chicken and beef menu items, convenient operating hours and Chinese New Year promotions aided sales, McDonald's said.

アジア太平洋、中東、アフリカで10.2%

ちなみに、日本マクドナルドの1月は5.1%の伸びなので、

まあ、米国並ってことですね。不景気で安いものが売れていて、まさにマクドナルドの時代ってとこですが、

日本と米国って、ファーストフードまで連動してるんかいな。



ちょっと休憩

2009-02-09 00:52:45 | 生活
いや、経済はどうも良くないニュースばかりですな。

政治もネタとしては面白いんですが、シャレになってないんで、あんまり良い気持ちがしませんな。

こんな時はちょっと休憩してお笑いなんぞ。

ずっと探していた黒沢キューティーハニーが見つかったんで。

ホントは、ダウンタウンの二人と倖田來未本人の目の前で歌うバージョンがあって、そっちが観たいんですが、

これもかなり面白いですな。



アソーさん トドメを刺す

2009-02-07 11:48:55 | 政治
演説を聞いて、政治シロート、ノンポリの私から見てもアソーさんの理念としての政治センスには疑問が生じたんですが、今回は理念的には良いんですが、また別の疑問が生じるわけで、


自民破滅?麻生首相「郵政民営化に反対だった」

これ、歴史に残るでしょうな。『貧乏人は麦を食え』だとか、『国民政府を対手とせず』、だとか、歴史を動かしたご発言、というヤツ。

アソーさんは『郵政民営化に反対だった』発言で歴史を動かした首相として記憶されることになるんじゃないですかね。

『官僚内閣制』や『省庁代表制』を支持するかしないかを軸に政治が動いているのに、

あたかもアソーさんは、そんな問題自体が存在しないかのような演説をしている、

こういう政治情勢なのだから、支持するかしないかを明確にしないとわけがわからない、支持するならはっきり支持すると態度表明をすべき

と前回書かせていただいたわけですな。まあ、できるわけないよね、との含みもあったわけですがね。

今回の発言は、官僚内閣制、省庁代表制への支持を、突然明確にしてしまったわけでして、前任者路線の斬り捨て、ある意味、政治家としてすべきことをしたんですが、これ大方針転換なわけでかなりの周到な準備を要するはずですな。


記事では、『このタイミングでの首相発言については見直し派からも「勝負時でもないのに唐突すぎる。党内対立をいたずらにあおるだけだ」との不満が漏れた』

とあるんですが、今回の発言は時期といい、内容といい、トドメ撃ちというんでしょうか、ダメ押し、というんでしょうか、これを受けて政治家の皆さんは改めて郵政民営化路線に賛成か、反対か、の意見表明を否応なしに迫られるわけですな。

郵政民営化は改革路線の象徴ですからなあ。

この発言で、政治の軸が本来のあるべきところに明確化されたわけで、自民党さんは今度の選挙をどっちで戦うか、決めなくてはならなくなったんじゃないですかね、ってか、『官僚内閣制』『省庁代表制』支持の『ドーロ』『ユーセー』なんかのゾク集団、地方で勝負、グループとして立つしか無くなったように見えるんですけどね。居酒屋政治談議的にですがね。

アソーさんが、政治の硬直を打ち破るために、ここで一気に政界再編に持ち込むべく一か八かの政治的賭けに挑んでこの発言をした、というんなら、大政治家とたたえられるようになるかも知れませんがね。

勝算があってのことなら、という前提付きですが。

そもそも勝負に出たんでしょうか。


モトローラ 米国を失う

2009-02-03 23:09:35 | ハイテク
いよいよ、といいますかね。

Motorola Forecasts Wider Loss, Suspends Dividend

Motorola shipped about 19.2 million handsets in the fourth quarter, compared with about 41 million in the year-ago period

モトローラの第4Qは19.2百万台のケータイ出荷。昨年は41百万台だったんで、半分に減ってしまったってことなんですな。半分ですか。

Motorola’s top ranking in the U.S. mobile-phone market vanished in the third quarter as its share of sales slid to 21.1 percent from 32.7 percent a year earlier, according to researcher Strategy Analytics in Newton, Massachusetts.

米国のシェアは第3Qにトップの座を失っていて、32.7%から21.1%に落ちている。

Sales at Samsung Electronics Co., based in Suwon, South Korea, rose to 22.4 percent of the market from 17.9 percent.

一方サムスンは17.9%から22.4%に増やしている。

つまり、米国トップシェアがモトローラからサムスンに移った、ということですね。トヨタがGMを抜いたとかいうニュースが出たとこですがね。

以前ご紹介しました、ケータイ部門を分社化するプランも、あんまり状況が悪いんで延期になったようですが、まあ、クライスラーじゃないですが、ここまで落ちると・・・。




アメリカ人の半分は・・・ ダーウィン生誕200年

2009-02-02 23:29:00 | 政治
この間、米国人は、リベラルで、気前が良くて、公平で、公正で厳格で・・・、というイメージがあるけど、それは半分でしかなくて、残りの半分は・・・、と書いたんでした。

実は、今年はダーウィン生誕200年にあたるんだそうして。

Evolution war still rages 200 years after Darwin's birth

Public opinion surveys consistently have shown that Americans are deeply divided over evolution. The most recent Gallup poll on the issue, in June 2007, found that 49 percent of those surveyed said they believed in evolution and 48 percent said they didn't. Those percentages have stayed almost even for at least 25 years.

2007年に実施された世論調査では、米国人の49%が進化論を信じていて、48%が信じていない。このほぼ半々の数字は少なくとも25年間変わっていないんだそうで。

Gallup found a political angle to the split. Two-thirds of Republicans rejected Darwin's theory, while majorities of Democrats and political independents accepted it.

共和党支持の3分の2がダーウィニズムを信じておらず、民主党支持者や、共和党、民主党どちらも支持しないインディペンデントの大部分はダーウィニズムを信じている。

ってことなんですな。あの米国で、科学の国、啓蒙の18世紀の申し子みたいなあの米国で、半分の人たちは進化論を信じていない。

そういう人達はどう考えているのかというと、

Among them are "creationists," who take literally the Genesis story that God created the world and mankind in six days no more than 10,000 years ago. Others support "intelligent design," the idea that life is too complex to have arisen without a supernatural "designer," presumably God.

人間は1万年以上前に6日の間に神によって創造されたのだと創世記を文字通り信じる創造説を採る。あるいは、こんなに複雑な生命には自然を超えた設計者・・・つまり神が存在していないはずはないと考える。

ということなんですな。

米国の半分はトンデモ系、というわけですが、

とは言え、ですな。進化論を信じていない共和党支持者だけがコワイわけじゃないですな。日本に原爆を落っことしたのは民主党のトルーマンだし、

現代の指導者で原爆を日本に落とすとしたらどっちだ、と聞かれたら、ブッシュよりヒラリー。ヒラリーはコワイって感じがするのは私だけでしょうか。






施政方針演説2

2009-02-01 11:26:46 | 政治
もう少し議論を整理しておきますかね。

オバマさんが、大きな政府、小さな政府の問題じゃない、といったのは議論の余地無く前任者への批判を含んでいますな。

ブッシュさんの時代に、新自由主義のイデオロギー、政府の関与は自由を限定→小さな政府が良い→減税、として格差を拡げた。金融業に好き勝手させておいて、それは規制緩和としてよき物として取り扱われた、というわけでした。

市場の機能は他に並びないくらい優れている。問題は市場や自由ではなく、『政府がどう機能するか』である。

というものでしたな。

一方でアソーさんはどうですかね。アソーさんは、何を批判して大きな政府、小さな政府といった発想だけではあるべき姿は見えないといったんでしょうな。

アソー演説では、景気対策として大胆な財政出動前提の予算を策定するにあたり、

『その際には、「生活者」「中小企業」「地方」の3つに重点を置きました。公共事業など従来型の景気対策ではなく、生活や雇用を守ることを目的とするものです。「生活防衛のための大胆な実行予算」。平成21年度予算を、こう呼びたいと存じます』 

まあ、重点の置き方を変えたってことですな。

『不断の行政改革の推進と無駄排除の徹底の継続が大前提です。例えば、公益法人への支出を、平成18年度に比べ約四割削減します。「私のしごと館」など、無駄が指摘されている事業を廃止します。国の行政機関の定員については、社会保険庁の廃止によるものを含め、約1万5000人を純減します。道路特定財源は、すべて一般財源化します。 国の出先機関の二重行政を排除するため、その事務や権限を地方自治体に移譲し、抜本的に統廃合します。縦割り行政の弊害を打破するため、内閣人事局を設置するとともに、公務員制度改革全体の工程表を策定し、改革を前倒しで実行します。天下りなど、公務員の特権と批判される慣行についても厳しく対応し、押しつけ的あっせんを根絶します』


小泉さんはじめ前任者の仕事もしっかりと引き継ぐ、ということですな。骨抜き批判はありますが、方針として前任者を踏襲しています。

そして、いよいよ増税についてなんですが、

『大胆な財政出動を行うからには、財政に対する責任を明確にしなければなりません。また、持続可能な社会保障制度を実現するには、給付に見合った負担が必要です。そのために、社会保障と税財政に関する「中期プログラム」を閣議決定しました。経済状況を好転させることを前提として、遅滞なく、かつ段階的に消費税を含む税制抜本改革を行うため、2011年度までに必要な法制上の措置を講じます。その実施時期は経済状況をよく見極めて判断しますが、私としては、2011年度に向けて景気が回復するよう、全力を尽くします。これは、社会保障を安心なものにするためです。子や孫に、負担を先送りしないためであります』

と、いうわけですな。

①不況対策として大胆な財政出動を行うこと、
②財政出動の内容は無駄な公共事業でなく生活者に重点を置くこと、
③行政の無駄を排除すること、
④財政出動の赤字と今後増えてゆく社会保障負担をまかなうために消費税を上げること、

が主な説明内容です。

なんと言いますか、フツーです。今の議論をまとめたものですな。特に前任者を批判するでもなく、これまでの方針をそのまま受け継いでいるだけです。前任者も無駄な行政、公共事業を減らそうとしたわけで。

アソーさんが冒頭、オバマさんの言葉をパクってくるほどのイデオロギー的なテーマは演説内容には含まれていませんね。

なんでここにこだわるかといいますと、問題設定がテキトー過ぎるからですな。オバマさんがこう言ったんだから、演説の枕に持ってくるか、ってな感じがイヤですな。過去の小さな政府論を批判しているわけではないし(前任者もブッシュみたいにイデオロギー的に小さな政府を追求していたわけじゃないですな)、むしろ踏襲しているのだから、フツーの感覚があれば、大きな政府小さな政府論を枕に持ってくるのはおかしいと思わないと変です。

前任者はどっちかといえば小さな政府だったかも知れないが、アソーさんもどっちだと言えば小さな政府でしょう。これまでも政権に居たわけでしてね。

今の日本の政治は、どうみても、『省庁代表制』、『官僚内閣制』をこれまでどおり支持するか、しないか、という軸をベースに動いているんですな。アソーさんのオバマ演説から持ってきた問題設定がピンボケに見えるのはそのせいなんでしょう。アソーさんの問題設定から見れば、官僚の渡りを特権で認めるかどうかは枝葉議論ですが、そうは行かないわけでしてね。

省庁代表制を支持するかしないか、という軸で態度を鮮明にせざるを得ない政治状況で、アソーさんはそうした軸が、そんな問題が、無いかのような演説をしているんですな。一時が万事で、政治感覚がいまいちじゃないんですかね。支持するなら支持すると表明して、そのうえでただすところはただすとしてきっちり処理しないと、読んでて良くわからなくなるんですな。

それで、増税する、と言われましてもねえ。

ちなみにロンドンエコノミストでは、

The Fat Lady is about to join in

In his policy speech to the Diet on January 28th, the prime minister promised to bring Japan out of recession before the rest of the world, yet he gave few clues as to how. Admittedly, he expounded on the need for sweeping changes to the tax system, including raising the consumption tax. By mentioning the tax, Mr Aso meant to signal his commitment to responsible politics. Yet nothing he said hinted at tough structural changes to promote growth.

アソー首相は全世界に先駆けてリセッションから回復させると演説したが、どうやるかについてはほとんど説明していない。それでいて税制は改革する必要があって消費税を上げるとしている。アソーさんはそれが政治的責任を示すことになると考えているようだが、成長を進めるための構造改革については一切触れていない。

とか。