yaaさんの宮都研究

考古学を歪曲する戦前回帰の教育思想を拒否し、日本・東アジアの最新の考古学情報・研究・遺跡を紹介。考古学の魅力を伝える。

〈授業版-4〉 オープンキャンパス!そしてリニューアルホームページ完成!!

2005-08-05 16:36:15 | 歴史・考古情報《日本》-1 宮都
 「考古学研究室は海の直ぐ側です。こんな格好でいても不思議ではありません。時々浜辺で塩作りもやります。大学校内にも「鬼が塩屋遺跡」という弥生時代から古墳時代にかけての遺跡があります。一度遊びに来てね。」

今日は三重大学人文学部のオープンキャンパス!
先にもご紹介した通り、今年の演し物は去年と同じ「勾玉作り」。最近はこの手の催し物は全国の博物館で行われているのでお恥ずかしい限りだが、結構人気があるのでやめられない。材料費も比較的安いし、それなりに心のこもった贈り物としても重宝されているらしい。以前から学生に、「大学祭で1個200円くらいで売ろうよ!」というのだが、なかなか乗ってくれない。今年こそ、一杯売って儲けよう!(もちろん受験生にはただで作ってもらったのですよ)。そんなゲゼワな話題は置いておいて、予想以上に今年もたくさんの高校生が来てくれた。

 蝋石(滑石)の粉で真っ白になりながら作っていました。作る手つきは真剣そのもの。三重県大山田村、(現伊賀市)の下中島古墳から出た勾玉や管玉を見せながら説明すると熱心に聞いてくれる。こんな目の輝きを保った高校生がオープンキャンパスに来てくれるなら、まだ三重大人文も見捨てられてないのかな、と少し嬉しくなる。この中の一人でも研究室に来てくれると嬉しいんだけどなー。



(今年はヤスリも買い足したし、なかなかスムーズにできあがっていた。みんな初めてにしては上手だ)

 今年のオープンキャンパスは担当の先生方の配慮で時間が十分にとってあったので、次々とやってくる。嬉しい悲鳴である。

と、こんな仕事をしながら、実は裏で別の作業が進行していたのである。

待望!??の「三重大学考古学研究室ホームページ」リニューアル!!である。

 もう1ヶ月近くも前になろうか、考古学研究室のHpをリニューアルするぞ!と高らかに宣言しながら様々な事情で進まず、とうとう訪問者は0になってしまった。尤も多くの方がこのブログに転じてもらっていたのでは・・・、と勝手に推測して、その間にリニューアル作戦(大袈裟な!)を敢行していたのである。

 そもそも何故リニューアルをしなければならなかったかというと、大学の広報担当から既存のHPに対してイチャモンが付いたのである。

 掲示板は排除しろ!と。「何故??」「宣伝が載っているから!」「でもあなた方が作っている大学のHPだって、リンクをたどれば宣伝のあるyahooにたどり着くじゃん?」「・・・・」「それがだめだというのなら大学の方で掲示板を作ってよ!」「・・・イヤ、あの、いろいろ難しい問題があって・・・」(せっかくオープンキャンパスに来てくれた学生がこんなにいるのに、三重大学人文学部は大魚をみすみす捨てているようにしか思えない。もっともっと自由に積極的にWEBを立ち上げるべきだと思うんだけどね)

 こんな押し問答が繰り返されて、他にも大学当局のわがままし放題、バラバラな対応にいい加減腹が立ってきて、「こんな大学のホームページに誰が載せてやるもんか!」とブチ切れて、とうとう大学から切り放して有料のサーバーを借りて自分のお金で運営することにしたのである。よって、このHPは正確には三重大学人文学部考古学研究室 山中章個人のHP なのだが、そんなけちくさいことは言いません。もちろん、我が研究室の公式HPであります。なおついでに申し上げておくとぶち切れたのは私だけではありません、あの温厚(そうに見えるだけですよ!本当は違う・・・(笑い)一番怖い(ホント))同僚の怨霊研究の第一人者Y先生もHPを独立させてしまいました。こんなことしてたら元国立大学なんてホント、どんどんだめになると思う。これを食い止めるのは学生しかいないんだけどなー・・・。マ、愚痴はさておき、

 ジャーン!! 

 http://yaa-archaologue.dialog.jp/

なのであります。皆さんこれまでのHP もしブックマークしてくれていたら、是非直しておいて下さい!これからはどこからでもアクセスしてどんどん新しい情報が入れられるので、もう少しましに運営できると思うよ。それに最近いろんな悪戯があって停止していた掲示板も再会しますから、このブログ記事も利用してどしどし書き込んで下さいネ。

 なおこのニューHPは愉快な3年生コンビM&Yがこつこつと楽しく、いろいろ議論しながら??やってくれました。有り難うネお二人さん。これからもたのんまっせ!!

(こんな看板で誘ってみました。お陰で大盛況でした。)



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連載・桓武考古-3 第1章 ②【修理司の活躍と廃止】

2005-08-05 05:34:17 | 歴史・考古情報《日本》-1 宮都
(写真は平城京から移建された長岡宮の某役所内西端を限る大規模築地跡。称徳朝設置の修理司発注修理刻印瓦が大量に出土し、平城京の築地塀から瓦が移動してきたことが証明された。)

【修理司の活躍と廃止】 

 平城宮跡は改造宮だと言われることがある。74年間の所在期間の内、5年間は恭仁→(紫香楽)→難波→恭仁と変転するが、その期間を除いても平城宮は改造に改造を重ね、ほぼ、天皇の代替わり毎に大改造を繰り返していた。用いられた建築資材は建物用の柱や梁、柱の基礎に使用される根石や礎石、屋根に葺く瓦、基壇化粧に使用する凝灰岩、建築に用いる釘を始めとする各種金具、壁に用いる漆喰や竹、そして建物に塗る丹や緑青などの塗料、当時の建築技術の最高峰のものが大動員された。もちろんこれらの資材を用いて建物とするための大工、造瓦工、鋳物工、鍛造工、さらに大量の物資運搬、土工を担当する仕丁が必要とされた。実は彼らこそ「都市民」予備軍だったのである。

 令の規定では、このような建築は木工寮が担当することになっていた。しかし宮城全体にまで及ぶことのある大規模な工事には対応できず、令外の官として造宮省が置かれた。この他、造東大寺司を始め、国営寺院の建設・修造・維持のために、造○○寺司が設置され、相互に技術や資材を提供し合いながら建設に当たった。
 ところが8世紀後半になると、こうした大規模な建設部局の他に「修理」という名の役所の置かれたことが知られる。西隆寺から発見された木簡によって、それは修理専門の修理司であるとわかった。

 松原弘宣氏によると、修理司は神護景雲元(767)年、西大寺・西隆寺の建立に並行して設置されたという。修理司の役割はその名の通り、修理であったとされる。
 この修理司を物によって証明したのが「修」「理」と刻印された瓦の発掘である。平・丸瓦の製造過程において、瓦の生乾き状態で木製印が押印されたものである。刻印は数種類ずつあり、押印場所にも一定のルールが認められるから、工房内に担当工人のグループが編成され、グループ毎に製造していたものであろう。出土瓦の胎土も共通するものが多く、同一瓦窯で生産されていた可能性もある。押印の目的は修理司発注瓦と以外とを区別し、その造瓦量をチェックするためだったと推定できる。



(長岡京の築地跡から発見された「修」字刻印瓦。「修」字は飛雲文軒平瓦にも中心の飾りとして刻まれる例がある。)

 これら修理押印瓦の分布を調べた森郁夫氏の研究によれば、その分布は築地に集中するという。築地塀や土塀は風雨に弱く、常に倒壊や崩落の危機に瀕している。特に瓦の損傷は築地本体に致命傷を与える。このため設けられたのが、築地などの修理を専門とする修理司だったのではなかろうか。

 なぜ修理司は奈良時代後半に設置されなければならなかったのか。私は、平城宮内の施設の老化が顕在化したことにあると考える。度重なる造営は平城京全体の維持に大きな負担を課していた。しかし財源的にも苦しい中、修理に手が回らない施設も多々あったに違いない(バブル経済の下、実に多くの施設が建設された。特に日本道路公団による無駄な高速道路の建設は枚挙にいとまがない。高架の下を通るたびに思うことはこれらがいつまで保つか、である。鉄はよほどの手当をしない限り必ず錆びる。今後錆の防止のために膨大な経費がかかることを建設担当者は想定していたのであろうか。いずれ「修理公団」こそ必要になるに違いない。)

 にもかかわらず孝謙天皇は父聖武天皇に習って平城京右京二条一帯に西大寺と西隆寺を建立する。それぞれ東大寺と法華寺に対応する僧寺と尼寺である。その西隆寺から修理司に関する木簡がまとまって出土している他、両寺の造営官人が修理司の四等官に重なるのである。両寺の建設によって必要となる大量の物資の一部を利用して、平城京の修理のために立ち上げられたのが修理司だったのではなかろうか。その証拠に、平城宮内はもちろんのこと、京内の条坊側溝を中心に大量の「修」「理」刻印瓦が出土する。修理は短期間の内に一気に実施されたのである。
 
 光仁天皇の末年、宝亀9年以降は修理司関係の資料が途絶えてしまう。桓武天皇の即位を前にして、新都が視野に入れられ、もはや平城京の修理・維持は不必要だったのである。新都の候補地の探索が始まる中、修理司の役割はもはや失われていた。

 新王朝の創始を視覚的に示すために新都の建設は不可欠であった。修理に修理を重ねた平城京が「顔」として不適切であったことは言うまでもない。



(「理」字刻印瓦。他に「司」字もあり合わせて「修理司」となる。その他若干の例があるが、文字を瓦に刻む発想は8世紀後半に始まる。)

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