yaaさんの宮都研究

考古学を歪曲する戦前回帰の教育思想を拒否し、日本・東アジアの最新の考古学情報・研究・遺跡を紹介。考古学の魅力を伝える。

台南国立歴史博物館参観①の条

2013-02-23 07:53:25 | 歴史・考古情報《日本》-1 宮都
 昨日は一日だけ与えられた安息日。

 研究会にご一緒しているSさんに案内をお願いして、台南への遺跡見学、博物館巡りを行った。

 朝、台北は三日間と同じくしとしと雨。夜帰ってみるとまだ降り続いていた。こんなに台湾で雨に降られるとは思わなかった。どこかで「雨男!」の声が聞こえてきそうだ。




 「台南もこんな調子だと大変だな~」と思って中央研究院からタクシーで最寄り駅の南港展覧館駅まで、地下鉄板南線に乗って台北駅まで移動。そこから地下道を歩いて高速鉄道(高鉄9の改札口へ移動。前日にSさんがファミマ(台湾中にファミマとセブンイレブンがある!!ついでに言うとマクドとケンタッキーも溢れている!さらにスタバも)で買っておいてくれた切符で入場。台南まで1時間50分。片道1350元(約4000円)。切符は自動改札なのだが、これが、バーコードを御読み込むシステム。なかなかおしゃれである。車体は日本と同じ企画らしく、ほとんど変わらない。白地に焦げ茶色のラインの下に山吹色の帯が付いている。ちょっとデザイン的にはセンスが悪い!!



ちょっとセンスが・・・/。



ほとんど同じだが・・・。



ファミマで予約。発券。

 内部もほとんど同じで、三席、二席の配置も、その幅も日本仕様である。少し違うのは荷物台の高さがやや低く、窓際に立つとその底が頭に当たる。その分女性でも荷物をあげやすくはなっている。

 電光掲示板も同じで、時々ニュースも流れるらしい。快適な新幹線旅であった。

 台南駅は在来線(台鉄という)の駅より東に位置し、全く新しく造られた駅である。そこからタクシーを雇って終日移動することにした。タクシーは10時から17時半まで7時間半乗って3100元(9300円)だった。3人で乗れば一人1000元の計算だ。



とてもきれいな駅だった。

 まず最初に目指したのが台南市の中心部から北西方向、海岸縁の七股というところにある「塩博物館」。前日にネットで調べてみると近世に始まった塩田を再利用したアミューズメントパークのようではあったが、誰も行ったことがないというので行ってみることにした。



入り口



塩でできたキャラクター?



入り口に置かれたジオラマ


 季節なら塩田体験もできるようだが、今回は季節でもなく、時間もないので大急ぎで見学した。
 台湾の塩業は17世紀中頃に始まるらしいが、戦前の日本帝国主義が台湾を植民地化して以後、漁場を破壊して大規模な塩田を開発したらしい。中国大陸侵略の後方物資補給基地としての役割が与えられたのであろう。塩田には娯楽施設や診療所まで併設されその力の入れようがよくわかる。



展示風景


 展示は予想通りというか、予想を大きく上回る工業製品(諸塩製品)の陳列場のような趣で、ちょっとがっかりした。ほとんど見学者もいないのだが、受付には専業の受付嬢もいて、愛想はとてもいい。


製品


塩田

 敢えていいところを見つけるとすると、戦前の塩田の作業風景が立体的に展示されていた点であろうか。もっともっと塩業に関する道具や17世紀初頭に始まったという古い時期の製塩法など歴史的な観点からの展示がほしかった。1時間弱でここを切り上げて安平のオランダ統治時期の拠点となったゼーランディア城(安平古堡)へ向かう。

 間もなく朝食。中央研究院の民俗博物館を見て空港に向かいます。
 続きは帰国後に。

 充実した一週間でした。


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居延漢簡との別れの条

2013-02-21 18:41:58 | 歴史・考古情報《日本》-1 宮都
 終わりました!

 紀元前50年から紀元後30年前後までの中国漢代(前漢から後漢の間)の辺境の木簡群の調査が終わりました。

 目がよく見えないので、老眼鏡を外したりかけたり、拡大鏡を当てたり外したりと、大忙しの実測でした。

 何せ、物に器具を当てずに「実測」するのですから目が疲れます。鉛筆の先、デバイダーの先0.5㎜の所で止めて変換点を押さえ、幅を測り、厚さを測りするのですから、なかなかのものです。若い頃ならまだしも、この年寄りにはかなり過酷でした。しかし、二日目辺りからなぜか調子が出てきて少々久しぶりに楽しい実測でした。

 とは言ってもさすがに今日の午後はくたびれました。明日がないので、必要なものを時間以内に終わらせないといけません。焦るわ、目は見えなくなるわ、肩は凝るわ、腰は痛いわ・・・(笑)マ、一種のいじめですな。

 今日は人面を墨画した木札の実測でした。この木札が三角柱をしていてあちこちの断面を採らないといけなかったのです。

 実測の成果についてはまだまだこれから研究の深化が必要ですが、ひとまず修了することができて、ホッとしています。




最近どこの博物館にもあるこのフレーム。台湾の歴史研究陳列館にもあって驚いた。



 さらにこんな「楽しいコーナー」も。
 中央研究院というのは研究ばかりしていたらいいところなのですよ。陳列館だった、一般に公開する必要など無いのです。その代わりに故宮博物館があるのですもの。でも、彼らはきちんと資料の公開のためにこんな工夫もし、水曜と土曜は一般公開もして市民に親しまれるようにしています。

 専門的な資料を専門的にばかり公開するのが研究機関の「博物館」「資料館」ではないことを改めて感じました。今準備を進めている三重大学での専門的資料の公開施設にしても、自分たちの専門領域にしか判らない展示施設なんていらないと思っています。

 明日は、台南へ出かけ、博物館巡りをします。さてどんな博物館が待っていてくれるのか、とても楽しみです。



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再び謹賀新年?!の条

2013-02-20 19:12:37 | 歴史・考古情報《日本》-1 宮都
 明けましておめでとうございます!??

 ハイ、惚けています。

 今、台湾に来ています。台湾では旧正月が終わったばかりで、やってきた日はその最終日でした。

 だから、「おめでとうございます」なのであります。

 よりによってこんな時に来なくてもいいのに、という声は参加者一同からも出ていましたが、「ついうっかり」こうなったそうです。

 23日まで1週間、中央研究院で居延漢簡を見ています。あと二日です。

 今回は「缶詰!!」 ほとんどどこへも行きません。わずか一日だけ、台南の方へ若干の遺跡などを見てきます。

 何せ、とある大先生から、一昨年台湾に連れて行ってやった「落とし前を付けろ!」と脅されて??(笑)、自費で論文のための資料調査に来る羽目になったのであります。その上、例のバカ総理大臣の円安誘導のため、旅費はたかいは、春節のために飛行機が取れず、高いチケットしかないわ、で最悪の台湾です。

 ま、唯一の喜び?は、毎日毎日2000年前の木簡とにらめっこできることでしょうか。

 今回の私のテーマは、「居延漢簡の作り方」であります。なんや日本版のリメークかいな、とその筋の人はピンと来るテーマであります。だって、全くの門外漢が何か書けるとしたらこれしかないでしょう。

 久しぶりに、「キリオリ」「バリ」「ケズリ」等々の用語を用いながら木簡とにらめっこしています。

 実際に木簡を見ることができるのは明日まで。果たして明日中に「原稿」のめどがつくのやら?さっぱり自信はありません。

 今回初めて判ったことは、「検」と呼ばれる封泥を詰めて送達文書の開封を防ぐ木簡群の作り方です。そんなに難しい作り方をしているわけではないのですが、改めて判ったことは、「封泥を固定するために敢えて雑に作っている」ということでした。二年前にも見て、その複雑な「匵」の作り方に四苦八苦したものですが、今回の結論は単純でした。

 「粘土を固定するために敢えて凸凹が残るように割きとっている」でした。中には穴を複雑に開けたり、紐をかける溝をたくさん彫って、頑丈に固定するものがあったりするのですが、大半ははぎ取り面に木目に沿った凹凸が残り、ほとんど平らにはなっていないのです。そのために「検」と呼ばれるものには柾目木簡が多いことも判りました。ささやかな成果です。もう一つ二つささやかな成果があるので、それを「木簡実見記録」とでもしてまとめないと仕方ないかな、と思っております。

 大先生始め、本研究に取り組んでおられる諸先生方には本当に申し訳なく思います。



 三本の切り目に紐をかけて固定し、その上から箱状になったところに粘土を詰めて「封」をし、封自体も外れにくいように紐で縛り、さらに粘土を加えた後、開封された時に判るように印を押します。今の日本の現金書留封筒の元祖です。




これの本物を目の前で見ることができました。お蔭で一本一本がどの様に作られていたかよくわかりました。意外と新しい発見かもしれません。



こいつも対象だったのですが、余りうまく分析できませんでした。

皆さん!!台湾、台北へ行ったら、南港にある中央研究院ですよ!!故宮に出されている元の資料群が所狭しと並んでいます。一般にも水曜日と土曜日に公開されています。是非お立ち寄りください。受付のお姉さんが美人な上にとても親切!!

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