yaaさんの宮都研究

考古学を歪曲する戦前回帰の教育思想を拒否し、日本・東アジアの最新の考古学情報・研究・遺跡を紹介。考古学の魅力を伝える。

『国宝 蟹満寺釈迦如来坐像』出版・蟹満寺シンポジウムの案内の条

2011-12-21 18:22:58 | 歴史・考古情報《日本》-1 宮都
 今朝、木津川市の中島さんから下記のようなご案内が来た。

 蟹満寺は中島さんが執念で発掘調査し、仏像が今の位置に当初からあったことを考古学的に実証した「遺跡」である。
 その後、仏像そのものの研究がこのように進んでいたことを全く知らなかったが、このような素晴らしい書籍が刊行されたことを知って驚いている。中島さんからも是非ご紹介を!という強い依頼があったのでここにその宣伝マンの役割を果たさせて頂く。

 書籍の方は26250円とかなり高価ですが、二割引21000円(送料別)となっています。ただし明日22日まで!!

 三船温尚・奧健夫編 蟹満寺釈迦如来坐像調査委員会著

『国宝 蟹満寺釈迦如来坐像-古代大型金銅仏を読み解く-』

八木書店刊

是非買ってやって下さい。









また来年4月には以下のようなシンポが行われます。今から予定を空けておいて下さい。

木津川市制5周年記念シンポジウム

  国宝蟹満寺釈迦如来坐像の再検討 
     
      ―体内調査から見えはじめたもの―




平成24年4月15日(日) 
会場:京都府木津川市山城総合文化センター(木津川市山城町平尾前田24  JR奈良線棚倉駅から徒歩3分 TEL:0774-86-5851)

<開会挨拶>
9:20 ~ 開会挨拶             中野泰孝(宗教法人 蟹満寺 長老) 
9:25 ~ 祝  辞             河井規子(木津川市長)
<報告>
9:35 ~ 開催趣旨(蟹満寺像の周辺)    奥 健夫(文化庁)
10:00 ~ 蟹満寺像の考古学         中島 正(木津川市)
10:20 ~ 蟹満寺像の成分分析        長柄毅一(富山大学)
10:40 ~ 蟹満寺像中子土の年代測定     吉田邦夫(東京大学総合研究博物館)
11:00 ~ 蟹満寺像の三次元レーザー計測   田畑徹也(株 アコード)
11:20 ~ 蟹満寺像の修理現場から      八坂寿史(美術院)
11:40 ~ 蟹満寺像の鋳造技術        三船温尚(富山大学)
<討論会>
13:00 ~  「再検討する白鳳・天平時代の大型金銅仏の製作技術とその背景」
司会:奥 健夫、討論者:会場参加者、遠藤 透(愛知教育大学)、田畑徹也、戸津圭之介(元東京芸術大学)、長柄毅一、中島 正、三船温尚、八坂寿史、吉田邦夫、釆睪真澄(高田短期大学)
<閉会挨拶>
15:55 ~ 閉会挨拶     木村浩三
(財)木津川市緑と文化・スポーツ振興事業団 理事長

主催:蟹満寺、蟹満寺釈迦如来坐像調査委員会、(財)木津川市緑と文化・スポーツ振興事業団
後援:木津川市、木津川市教育委員会、朝日新聞社

諸関購入方法

12月22日まで2割引特価!!

三船温尚・奧健夫編 蟹満寺釈迦如来坐像調査委員会著
国宝 蟹満寺釈迦如来坐像
【調査委員会割引専用注文書】予約申込期限2011年12月22日
この専用注文書でお申込みいただければ、2割引にて事前予約を承ります。
刊行次第、送本させていただきます。
ご注文は以下の必要事項をご記入の上、FAX・メール等で直接小社担当までお申込み下さい。
※書店にお申し込みいただく場合は割引になりませんのでご注意下さい。
※割引は個人購入に限ります。ご所属の大学図書館等、機関からのご注文は、割引の対象外とさせていただきます。

●FAX 03-3291-6300 ●メールkoi@books-yagi.co.jp(担当:恋塚)
メール、電話でご注文の場合も以下の必要事項をお知らせ願います。
【FAX注文用記入欄】
国宝 蟹満寺釈迦如来坐像 〔   〕冊
【2011年12月刊行】 定価26,250円→割引特価21,000円(税込・送料別)
※送料は別途頂戴いたします
お名前      様 メールアドレス
電話番号 FAX番号
送付先住所 〒
購入予算の別
(公費の場合、下欄にもご記入下さい)
公費  ・  私費 調査委員会紹介
ご担当者名
中島 正    様

■公費ご購入 書式ご指定欄
◇必要書類  見積書   通 ・ 納品書   通 ・ 請求書   通
◇機関指定の所定書式    あり  ・  なし   
◇ご請求の宛名について:  指示有り  宛名                      
◇消費税の表示方法:   内税 (1点ずつ商品価格に合算して表示)   外税 (価格と別表示)
◇送料について :商品代金に   含めて表示  ・  含めないで別表示

〒101-0052 東京都千代田区神田小川町3-8 八木書店出版部企画編集課 宛 担当:恋塚
FAX:03-3291-6300 電話:03-3291-2969 メール:kaneko@books-yagi.co.jp


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国境なき朗読者たち「ガザ、希望のメッセージ」上演の条

2011-12-12 16:10:14 | 歴史・考古情報《日本》-1 宮都
 わずか9ヶ月が経っただけで福島の原発の大事件が記憶から薄れさせられようとしています。最近になって次々と、しかし少しずつ出される情報は、極めて深刻なものであるにも関わらず、マスコミはその深刻さを全く解説することなく淡々と伝え、原発廃炉への道を絶とうとしています。それどころか国会は原発輸出の道を開き、武器どころか原爆の基になり、今回のように破損すれば地球全体を汚染する危険性を大いに含む原発の世界中へのばらまきを決定しました。

 福島どころか、あの九州のやらせ原発玄海原発でも冷却水が漏れ、一時急激な炉内温度の上昇が起こるという極めて異常な事故が次々と起こっているにも関わらず、日本の技術は安全だ!日本の経済にとって原発産業は貴重な輸出産業だなんていいながら、猛毒を世界中にばらまいているのです。

 これすべて日本人の忘れやすい体質によります。

 一昨日のニュースによりますと、次期アメリカ大統領選挙に出馬予定の共和党有力候補は「パレスチナ人はでっち上げだ!」と公言し、欺瞞的な和平どころか、パレスチナそのものを否定し、この世から抹殺しようとしているのです。しかしオバマ再選の見通しがはっきりしない中で(もちろんオバマだって本質は変わらないが)こんなのが大統領になったら大変な事態が起こります。パレスチナもFUKUSIMAも結局は根は一緒です。弱者を切り捨て、権力に群がる強者のみを保護し豊かにする.一体いつから私たちはこんな醜い動物に変身したのでしょう。


 私の友人達が主催している「国境なき朗読者たち」による表記の朗読劇が開催されます。友人自身は今回長期闘病中なので出席できないようですが、その友人達が開催してくれます。
 中心メンバーの岡真理京都大学教授から以下のような呼びかけが来ましたので転送し、ご案内申し上げます。私は17日に参るつもりです。


 FUKUSIMAを

 GAZAを

忘れないために参加してみませんか。以下、岡さんからのメッセージを転載します。

*********************************************

みなさま、

京都の岡真理です。

長文ですが、どうか以下をお読みいただき、ご協力ください。



■忘却に抗するためにーー

 3年前、ガザ攻撃のさなか、ガザの集会はどこも、数日前のメール告知だけで、会場に入りきらないほどの、定員の2倍、3倍の人が集まりました。あれから3年…。攻撃から3周年の12月今、あらためてガザを想起しようと企図された朗読劇は、公演の5日前になっても、まだ70名の予約しか入っていません。
3年たって、ガザはまた、私たちの関心の埒外に行ってしまったということなのでしょうか。結局のところ、私たちが、関心を寄せるのは、一時に大量に人が殺されているときだけなのだ、ということでしょうか…。

 イラクも、アフガニスタンも、原発も同じ。
スリーマイル、チェルノブイリ…、何か大事故があって、人が死ねば関心をもたれるけれど、あとは忘却される。人々の苦しみは続いているのに…。事故があろうとなかろうと、作業員は恒常的に被ばくし、からだがぼろぼろになるまで消費され、命を削っているという構造は問われずに…。

忘却が次の虐殺を準備するーー。3年前、各地で講演させていただきながら、この韓国の詩人の言葉を繰り返し紹介してきました。「今は、大量に人が殺されているからこれだけの人が関心を寄せてくれているけど、ひとたびこの殺戮が終わったならば、私たちは果たして記憶し続けるだろうか、もし、私たちが忘れ去るなら、私たちは次の虐殺への道を整えているということ、私たちはガザのあとにいるのではない、次の<ガザ>の前にいるのだ」と…。

あのとき、頷きながら、涙を拭いながら話を聴いてくださった方たちは、今、どこにいらっしゃるのでしょ…。

パレスチナ人のこの60年の歴史は虐殺の歴史でした。来年2012年は2000名以上が殺された、1982年のサブラー・シャティーラの虐殺から30周年を迎えます。

この虐殺を証言したAng Swee-Chai 医師の『ベイルートからエルサレムへ』という本があります(日本語版の翻訳出版の準備を今、進めています)。封鎖され、一方的に破壊され、殺戮されるサブラーとシャティーラの難民
キャンプの描写を読んでいると、これは82年のベイルートなのか、2008年のガザなのか、分からなくなって
きます。

 サブラー、シャティーラの虐殺は、民衆法廷も開かれました。でも、やがて忘れ去られ、そして、ガザの殺戮が起こりました。そして、次の虐殺がまた、遠からぬ未来、起こるのでしょうか。


 私たちはいつまで、こんなことを繰り返すのでしょう?

 「もう、こんなこと、終わりにしたい!」

 ガザでイスラエルのブルドーザーに轢殺されたレイチェル・コリーさんの叫びです。


 攻撃から3年目の12月にさえ思い出さないなら、私たちはいつ、思い出すというのでしょう!


 京都および関西在住の方の中には、2009年のかぜのね公演、今年5月の京大公演をご覧になった方も多数、いらっしゃると思います。かぜのね公演をご覧になった方はぜひ、この2年の私たちの「進化」を観にいらしてください。

 5月の京大公演をご覧になった方は、ぜひ、あのとき、ご覧になった感想を、お友だちに、家族の方に伝えて、宣伝してください。

そして、まだ、ご覧になっていらっしゃらない方は、状況が許すなら、ぜひ、足をお運びください。そして、どうか周りの方々に宣伝してください。


 ガザへ、福島へ、東北へ、思いを込めて朗読します。

 忘却に抗して、昨日とは違う明日をともに創るためにーー。



*太田さんが昨日の毎日新聞朝刊で朗読劇を紹介してくださいました。

主演のダイスケが体験した占領下パレスチナについても詳しく書いてくださっています。

(太田さん、ありがとうございます!)

以下で読むことができます。

http://mainichi.jp/area/kyoto/news/20111209ddlk26040559000c.html



*以下、案内文です。みなさまの一言を添えて、転送していただければ幸いです。


―――――――――――――

[転載・転送歓迎]

みなさま、

京都の岡真理です。

5月に上演いたしましたガザ朗読劇を再演いたします。
-------------------
イスラエルによる、あのガザ攻撃から間もなく3年を迎え
ようとしています。攻撃の記憶が風化しつつある今、「忘却
が次の虐殺を準備する」(韓国の詩人の言葉)のだとすれば、
私たちはすでに次の虐殺への道を整えているのかもしれま
せん。

忘却に抗し、昨日とは違う明日をともに創るための、ささ
やかな試みとして、ガザ攻撃3周年のこの12月、朗読劇
「The Message from Gaza ~ガザ、希望のメッセージ~」
(脚本・演出 岡真理、出演:国境なき朗読者たち)を
12月16日(金)、17日(土)の両日、京都市国際交流会館
にて上演いたします。同会館の東日本大震災チャリティ企画
の一環です(収益は被災地支援のN・u桙fOに寄w)付します)。
私たちの〈肉声〉を通して、ガザの人々の思いを伝える
とともに、震災に見舞われた東日本の方々への思いを込めて、
朗読します。ぜひ、お聴きください。
以下、詳細です。

*チラシの開演時刻・問合せ先に一部、間違いがありました。
正しくは以下のとおりです。ご確認ください。

******************************************
朗読劇「The Message from Gaza ガザ、希望のメッセージ」
出演:国境なき朗読者たち(京滋・大阪 市民・学生有志)

■日時
1)12月16日(金)19:00~20:30
2)12月17日(土)14:00~15:30
3)12月17日(土)18:30~20:00

*開場はいずれも開演の30分前。
*回によって開演時間が異なります。お間違いのなきよう、
ご確認ください。

■会場 京都市国際交流会館 特別会議室
http://www.kcif.or.jp/jp/access/

■料金・前売り 一般1 500円、学生1200円
当日  一般1800円、学生1500円

■予約・お問い合わせ
事前予約制となっております。下記の連絡先に、
氏名・希望の公演日時・人数をご連絡ください。

電 話 080‐5314‐1539(つくい)
メール gaza.kibou@gmail.com
*当日、満員の際は、入場をお断りすることもあります。

*事前予約された方は、遅くとも開演の10分前までには
受け付けをお済ませください。

■HP http://message-from-gaza.com


*******************************
■「ガザ、希望のメッセージ」と「国境なき朗読者たち」
について

2008年から翌09年にかけてのイスラエルによるガザ攻撃
を受けて書かれたこの朗読劇は、3つの異なるテクストから
構成されています。いずれも、ガザから外の世界に向けて
書かれた手紙という形で書かれたテクストです。

ひとつはガザのサイード・アブデルワーヘド教授が、爆撃の
さなか、世界に向けて発信した一連の電子メール(『ガザ通信』・u桷タ首鞜迸赱鈑就杜㏄哂昭碣昭・鞜郛青土社)、二つ目はパレスチネ人作家・uェッサーン・カナファー
ニーが1956年に発表した短篇「ガザからの手紙」。3つ目は、
占領下のパレスチナ人の人権擁護活動のためガザに赴いた、
アメリカ人女子大生、レイチェル・コリーさんがアメリカに
いる家族に宛てたメールです。

本朗読劇は、2009年7月、京都AALA連帯委員会美術班
主催第35回頴展で、京都大学総合人間学部「思想としての
パレスチナ」ゼミ生有志によって初演されました。同年9月、
京滋市民有志による朗読集団「国境なき朗読者たち」が立ち
あげられ、これまで京都、広島などで上演を重ねteまいりました。
(2009年12月には、神戸の劇団「どろ」が合田幸平演出に
より神戸アートビレッジで上演してくださいました)。今年
5月には、日本中東学会年次大会の一般公開企画として上演
され、160名が鑑賞。肉声がはらみもつ力が、多くの方に
感動を与えました。

ガザ攻撃3周年のこの12月、肉声を通して語られるガザ
からのメッセージにぜひ、耳を澄ませてください。

■「ガザ、希望のメッセージ」を観て…
「約半世紀の時間を経て、一つのテクストの中で構成される
ことによってガザというひとつの地・u梭諱Aローカルな地域が
発し続・u桙ッる問題w)性が時間を超えて訴えかけられている。」
(太田昌国/編集者・民族問題)

「イスラエルは、「我々はこの隣人と暮らしたくないんだ」
ということを隠すこともなく宣言している。この挑戦を受けて
いるのは人類全体である。私たちもそのメッセージを向け
られているし、このことをどう跳ね返すかということには、
思想的そして集団的パワーが要る」
(鵜飼哲/フランス文学)

「本当の意味で「分かる」とか「理解する」ということ。体の
中で声にして振るわせる、あるいはそういうことをしている
人たちのところに居合わせているということが、「分かる」
ということに違う次をつけ加える」
(細見和之/詩人)

「この朗読劇の圧倒的な凄み。本来「劇」とは激しいものだ。
言語としての記憶は「絶望」だったのに、再演を願うのは、
「感動」を得たからだ。もしかしたら、この感動こそ「希望」
なのかもしれない」
(井上由里子/文筆家・舞人)
――――――――――――――――――

以上



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発掘調査のてびきの条

2011-12-11 14:26:28 | 歴史・考古情報《日本》-1 宮都
 12月2日、愛知県埋蔵文化財センターに呼ばれて「試掘調査・範囲確認調査の現状と課題」という話をさせて頂いた。こんなテーマの話に県下の調査関係者40余人も集まるというのには驚いた。

 私は自分の経験から「試掘調査や範囲確認調査」なんていらない!都極論を論じた。

 常日頃からこうした行政のための行政のためでしかない調査方法に疑問を感じていたのだが、今夏の校内遺跡の調査で、その現実を目の前に突きつけられてその思いをさらに強くしていたところだったので、きっと理解はしてもらえないだろうが、この点を強調した。

 話の主旨は「試掘調査という免罪符によって、遺跡が十分に調査されることもなく破壊されているのではないか」という問いかけであり、「所詮遺跡の調査というのはその遺跡に対する調査者の情熱ではないのか」と言うことであった。現在のようにサラリーマン化した調査員に果たしてどこまで通じたのか、きっと「そんな精神論で・・・??」と思われたに違いない。しかし、文化を飾り物としてしかとらえない今の為政者郡の中で、これに抗するには一人でも多くの熱血漢が、遺跡を体で護るという気概なくしてなしえないのではないかというのが今の私の正直な感想である。

 役人に役人の論理で戦って活路が見えるとは思えないのである。もちろん資本家に資本の論理以外のものをぶつけても理解されるはずもない。しかし、今は全世界資本主義の世の中である。みんなが「儲け」を最優先させている。彼らの論理に打ち勝つには全く時限の異なる「こいつら何を考えてんね??さっぱりわからん!けったいな奴やな!]と思わす以外にないと思うのである。訳のわからない執念を見せて、彼らを呆れさせること!これしかないのではないだろうか。所詮儲かるはずもない博物館に利益を求める為政者達に打ち勝つには、しつこく、しつこく、粘り強く、一度食らいついたら離さないくらい執念深く、遺跡の重要性を訴え続ける以外にないと思うのである。


 だから私は試掘なんていらないと主張した。試掘で葬り去られる「遺跡」がどれだけたくさんあるかはこの38年間、いやと言うほどみせつけられてきた。特別史跡級(遺跡の国宝)の遺跡であったはずの長屋王邸が何の保存運動もなく闇から闇へと葬り去られたのはその象徴であろう。特別史跡級の長岡京東院も資本の論理の前に簡単に破壊されてしまった。自らの自己批判も含めて考古学界全体がこの事実をどう重く受け止めているのかが問われ続けるのだと私は思っている。

 試掘をしようが、範囲確認調査を使用が、その遺跡をどう明らかにし、どう護っていくかが最終目的でない調査(そしてそうできなかった調査)なんて自慰行為に過ぎないと思うのである。だからといって「情熱」だけで遺跡が残せるかというともちろんそうでないことは山ほど承知である。しかし、まず「情熱」あっての仕事だと思うのである。サラリーマンに、朝から晩まで、休みもなく、「仕事」を求めることなんて無理である。

 もちろん当日の他の三人の報告者の方々のお話はとても現実的で、「役に立った」報告だったと思う。それだけに私の話はきっと「空を漂っていた」のではないだろうか。悲しいことである。

 ところでこのお話を聞いて、私は改めて文化庁が刊行している『発掘調査のてびき2010』なる書物に目を通した。そして驚いた。

 なぜ今頃、このようなことを国の行政調査のトップが刊行し全国に通達?!しなければならないのだろうか。もちろん私のようにまともに勉強もしてなかった人間が突然現場に出されるというような場合なら、これほど親切な書物はない。しかしあれから35年余、近頃の調査担当者は基本的に皆大学の考古学研究室を卒業し、極めて厳しい試験を通り抜けてきたものばかりのはずだ。この書物に書かれていることはすべて大学で教えられることばかりである。こんなことも知らずに6000人余と言われる行政調査担当者が発掘調査をしてきたのだろうか?

「恐ろしい!!」

としかいいようがない。どおりで発掘調査報告書を読んでも何が何だかさっぱりわからない報告書が山ほどある。これすなわち発掘調査ではなく遺跡の破壊!!なのである。

 さらに輪をかけてわからないのが、こうした調査をさらに利潤を追求している民間企業にやらせると言うことなのである。儲かりもしない遺跡の調査に企業が十分な資金を投入して利益をどがえしした調査をするはずがない!!そしてそんな企業を「指導」する行政の調査担当者がこのざまである。約50年以上続く日本の行政調査がいかに問題の多いものであるかを『てびき』は見事に描き出しているのである。

 たった9㎡の「試掘調査」??であった今夏の鬼が塩屋遺跡第3次発掘調査の報告書を出すことが可能になりつつある。おそらく私たちが関与しなければ実現しなかった発掘調査であり報告書である。その根源は「鬼が塩屋遺跡」を発見したという自負である。そしてその結果、私たちは東海・東南海地震の履歴を明らかにし、将来の防災計画に大いなる役割を果たしたと思っている。文系学問は現実社会に直ぐに役に立つものではないと言われている。確かに性急な「成果」を求め、これに応えることは学問の本質をゆがめる可能性がある。だからといって、役に立つことを卑下することもないはずだ。もちろん「妬まれる」筋のものでもないはずだ。しかし、学問の府を覆う、このわけなおわからない空気は何とか払拭しなければならない。

 改めてそんなことを感じさせた愛知県での講演会でもあった。

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