さぶりんブログ

音楽が大好きなさぶりんが、自作イラストや怪しい楽器、本や映画の感想、花と電車の追っかけ記録などをランダムに載せています。

【読書録】ゲッチョ先生と行く沖縄自然探検

2023-02-19 12:52:05 | 読書録

盛口 満/岩波ジュニア新書

これは元生物部の私の心を揺さぶる本だ。私は若い頃、一度だけ沖縄に行ったことがあるが、ハブが怖くて草むらに一切近づかなかったのが残念だな。こんなふうに案内してくださる先生がいらっしゃれば安心して森の中も草むらも入って行けるのに。

本土とはまるで違う生態系。大きく琉球列島と総称される島々のなかで、沖縄県に属する島だけをみても、沖縄本島と宮古島、石垣島、西表島では生き物が違うのである。また大陸とくっついたり離れたりした島もあれば、一度もくっついてない島もある。海から流れてくるものもある。地道に森の中の生き物や、海岸への漂着物を調べる活動・・・実際にこの人に着いて行ったら、普通の人は音を上げるかもしれないね。

沖縄にはほとんどドングリがない・・という話からしてツカミOKだ。どんぐりはブナ科の植物に出来るが、沖縄は石灰岩地で、ブナ科は石灰岩地を好まない空なんだそうだ。

カンボジアの遺跡でよく見たガジュマルの木は沖縄にもよく生えていて、妖怪キジムナーのすむ木としても知られるそうだ。沖縄の昔の人はガジュマルの葉っぱをちぎって出てくる白い汁を葉っぱの上に塗っては乾かし塗っては乾かしして固まりを作り、ガムの代用品として噛んでいたとか。実もおやつとして食べたという。実はその実には受粉を助ける虫(小さなハチの仲間)が何匹もいて、でも子供たちはお構いなしに食べていたんだね。カンボジアではガジュマルは何も使えない木だと言っていたけれど、沖縄ではそんな楽しみ方をしていたんだね。

いろんな種類のカタツムリやホタルもわんさかいるそうだ。沖縄には人工ビーチが結構あるらしいが、落ちている貝殻を見れば人工ビーチかどうかわかるそうだ。ビーチの砂は沖縄の海の底の方からポンプで組み上げていることが多く、そういうところに住んでいる貝が痕跡としてビーチに残っているんだね。

ビーチには漂着物もくる。魚の目玉の骨なんてのもある。我々の目には骨はないけれど、魚や鳥とかには目の中に骨があるんだそうだ。また沖縄の海にはジュゴンもいて、人魚伝説がたくさん残っているそうだ。ただ明治に琉球が日本に併合されてから乱獲でほぼ絶滅状態になってしまった。

サンゴの中には渇虫藻が住んでいて、渇虫藻が光合成をして作った栄養をサンゴはもらって生きているが、その渇虫藻は透明な海でないと生きられない。海が汚れて光が届かないと渇虫藻は光合成ができないので、サンゴから出て行ってしまう。その状態がサンゴの白化であり、その状態が続くとサンゴは死んでしまうという。

そういう貴重な生物資源も、外来種に脅かされている。ハブ退治のために導入されたマングースはもちろんイタチや孔雀なども。実は同じ沖縄でも生物が島と島を移動すると、それぞれの固有の生態系が崩れるから外来種になってしまうのだ。バラエティに富んだ生態系もそれだけ繊細なものなんだね。

ゲッチョ先生は文章だけでなく絵も上手。詳細なイラストがたくさん載っていて、見やすくて勉強になる。


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サイエンスZERO 「もはやSFではない! “人工冬眠”研究最前線」を見て

2023-02-19 09:54:28 | 映画・番組等、各種鑑賞録

(2023年1月15日放映分)

冬眠・・・自分はしたくないなぁ・・と思ったけれど、「代謝を落として少ない酸素・栄養でも生きられるようにする」機能なんて、どっかに閉じ込められた時とか、呼吸や心臓が止まっていて救急搬送を待つまでの時間稼ぎとかにはいいような気がするし、クマのように冬眠で動かなくても筋肉量が減らないというのは、人間だとスポーツ選手でも3日寝たきりになっただけで今まで鍛えた筋肉がダメになってしまう・・のだから羨ましい限りである。また単に体温を下げただけでは脳をやられてしまうが、それを抑える仕組みも発見されているとなれば、興味を抱かざるを得ない。またネアンデルタール人より前の人類ホモ・ハイデルベルゲンシスには冬眠した形跡がある・・冬眠中は骨が形成されないので、冬眠と覚醒を繰り返すと年輪のように骨に筋ができ、それが発見されている。現代でも雪山に閉じ込められてガチガチに冷えていても蘇生する人というのは存在しており、そもそも現生人類は氷河期を生き残ってきた人の子孫であり、冬眠できる能力をもつ人というのは存在するのではないか・・などという話になってくると、全くの絵空事ではないのだなぁという気になってくる。

番組では以下の研究成果を放送していた。

・マウスの脳の視床下部のQニューロンと呼ばれる神経細胞群を刺激したらマウスが数日間冷たくなって動かなくなった。体温が37度から24度まで低下。酸素消費量は半分以下。(Qニューロンは哺乳動物に一般にあるもの→Qニューロンを刺激すれば、冬眠しない動物でも冬眠するようになるのでは?と期待。)

・人工恐怖臭(チアゾリン類恐怖臭)・・マウスの天敵に似せて作った臭分子をマウスに嗅がせるとマウスが7分で動かなくなり体温低下が観測された。低酸素環境でも生存率UP、脳の破壊も抑えられた。(→酸素吸入用ガスマスクにニオイを入れることで、救急搬送中の時間稼ぎに使えるのでは?と期待。)

・冬眠しているマウスには、体内の飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の割合をコントロールする能力がある。不飽和脂肪酸は低温でも固まりにくいため、低温時には飽和脂肪酸を体内で不飽和化。不飽和脂肪酸は体温が高いと酸化しやすいというデメリットがあり、ビタミンEを使って過剰な酸化を防いでいた。(肥満症や生活習慣病の改善に期待。)

・ツキノワグマ。冬眠中数ヶ月絶食・動かない状態。冬眠中はタンパク質を作る命令系統とタンパク質を壊す命令系統を双方抑制。活動期と冬眠期のツキノワグマから抽出した血清を培養した人の筋肉細胞にふりかけてみると、冬眠期の血清をかけたものの方が、人の筋肉細胞内のタンパク質量が20%多かった。(寝たきりやリハビリの分野で活用できないか?)

ということで、冬眠そのものができるようにならなくても、冬眠を研究することで、得られることは多いのかもしれない。ただし冬眠のデメリットとして、免疫能力は著しく下がるという話もあるので、事は簡単ではない。ただそういうことはあっても冬眠動物は冬眠しているわけで、生きるために最低限守らなければならないことを生き物として選択しているのであろう。


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