ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

井上ひさし作「きらめく星座」

2009-06-06 22:34:58 | 芝居
 5月20日井上ひさし作「きらめく星座」を観た(こまつ座&ホリプロ公演、栗山民也演出、天王洲銀河劇場)。
 
 若い後妻役の愛華みれは、美しいし歌も芝居もうまい。しかし、彼女だけが常に明るく前向きで、何が起ころうと皆を励まし支えてゆく、という物語の単純な構図があまりにも単調で、絵空事のようだ。
 長女の夫源次郎役の相島一之も歌が結構うまい。後半は彼が主役級に重みを増してゆく。
 長女みさを役の前田亜季は少し早口過ぎる。台本から見えてくるのはエキセントリックな女性像だが、これも少々リアル感に欠ける。

 歌の入った井上ひさしの芝居、というと、警戒してしまう。昨年観た「太鼓たたいて笛ふいて」でも一昨年観た「ロマンス」でも、芝居の最中にみんなが歌い出すと、恥ずかしくていたたまれなくなって困ったからだ。宇野誠一郎の音楽は私には合わないらしい。だがこの作品では、幸いそれほど苦にならなかった。

 蓄音機の中に隠れた長男正一が飛び出してくるシーンは、往年の名画「フロント・ページ」を思い出させた。

 間借り人役の木場勝己の口を通して、作者の言いたいことが終始ダイレクトに語られる。こういうところが「井上の芝居は説教臭い」と言われる所以だろう。勿論作者の主張はいつも通りまっすぐだし、弱者の側に立つ姿勢はぶれることなく尊重に値するものではあるが、こういうやり方は芝居の面白さを半減させてしまう。

 いつ終戦になるかとずっと待っていたが、とうとう戦争は終わらなかった。だが考えてみれば、昭和20年8月15日の光景はテレビドラマなどであまりにも有名になってしまったから、改めて芝居にして見せる必要はないのかも知れない。しかし、戦争中の逸話というにしては、この芝居は長い。長過ぎる。

 ラストは尻切れトンボもいいとこだ。作者もこのままでいいか、きっと迷ったことだろう。

 

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