ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

「ロミオとジュリエット」について Ⅱ

2023-01-25 21:51:14 | シェイクスピア論
① スピード感溢れる展開

二人の出会いから死に至るまでの経緯をたどってみた。

日曜 夜  仮面舞踏会で出会う
月曜 朝  乳母、ジュリエットの使いでロミオを訪ねる。ロミオ、今日の午後、ロレンス神父の庵に懺悔に来るようジュリエットに伝えさせる。
      縄梯子を下男に持って来させるとも。  
   午後 二人はロレンス神父の手でひそかに結婚式を挙げる
      広場でティボルトがロミオに襲い掛かる ⇒ マキューシオ殺される ⇒ ロミオ、ティボルトを殺す ⇒ ロミオ追放
   夜  ロミオ、縄梯子をつたってジュリエットの部屋に行き、二人結ばれる
      同じ頃、ジュリエットとパリスの結婚式が木曜日と決まる
火曜 午前 ジュリエット、神父を訪ね、秘薬をもらう
      結婚式が一日早まり明日と決まる
   夜  ジュリエット、薬を飲む
水曜 朝  (結婚式当日)ジュリエット、死体(実は仮死状態)で発見される ⇒ 葬儀 ⇒ 墓地へ埋葬
   午後 ロミオ、追放の地で知らせを受ける ⇒ 出発
木曜 午後 ロミオ、墓地へ ⇒ 自死
      直後(夕方6時頃)ジュリエット目覚める ⇒ 後を追う

このように、この物語は急流を一気に流されてゆくようなスピード感に溢れている。

② 主導権を握るジュリエット

男が毒を飲み、女が短剣で胸を刺すという死に方も注目に値する。
当時、マントヴァの法律では毒を売った者は死刑だった。
それなのにロミオは、貧しい薬屋の、言わば足元を見て、無理を言って毒薬を買う。
この後、薬屋がどんな処分を受けたのかについて、この芝居では何も語られていないが、元ネタとされるアーサー・ブルックの戯曲では、
ロミオは遺書に薬屋の名前を書いており、そのため薬屋は縛り首にされる。
(似たようなストーリーを持つ同時代のベン・ジョンソンの戯曲「あわれ彼女は娼婦」でも、毒薬を売った薬屋はその後処刑される。)
まったくはた迷惑な話ではないか。
何のために腰に剣を下げているのか。
13歳の女の子の方が、恋と、そして人生(命)の主導権を握っていたことが、彼らの死に方にも現れている。

考えてみれば、そもそも「結婚」を最初に口にしたのもジュリエットだった。
ジュリエットの方からロミオにプロポーズしたのだ。
やはり、この戯曲を締めくくる大公の最後のセリフにあるように、これは「ジュリエットと彼女のロミオの物語」なのだった。

PRINCE : For never was a story of more woe
Than this of Juliet and her Romeo.

大公:数ある物語の中でも 最も悲しいもの、
   それこそこのジュリエットとロミオの物語だ。(私訳)

原文の英語の her を日本語に訳したいが、「彼女の」と訳してしまうと、あまりに堅苦しくて重いので、どうしても省略せざるを得ない。
それが残念だ。
 





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