謎の足跡
娘にメールしたら、電話がかかってきました。
知らないアドレスからへんなメールがきたんだけど、あけていいだろか。写真と、「謎の足跡」しか書いてない。
あっはっはっは わたしが送ったんよ。トウモロコシ畑についとった。
いつもショートメールで済ませて携帯のメールは滅多に使ったことがないので、不審メールと思ったらしいです。
ハクビシンの出る畑への散歩が日課になりつつあります。というよりポチが習慣付いちゃって、夕方になると矢のような催促なんです。トラオいわく、「じいちゃんと行くときより喜んでない?。」
トウモロコシ畑はあれ以来ハクビシンがやってくるのかどうか分かりませんが、先日、きれいに耕して新たな苗を植えた畝の上を何者かが横切っているのを見つけました。
この小さいのはハクビシンかもしれません。
近所のいたずらっ子か? いえ、こんな小さな足跡の子が一人でここまで来るはずがありません。それに、トラオの足跡は、靴の形につま先からかかとまで同じようにへこんでいますが、この足跡は明らかに後ろ(前)どちらか一方に重心がかかっています。こんなに深く土にめり込むのは、きっと体重の重い獣。
「ばあちゃん、足跡図鑑なんかないん?」
「足跡図鑑? そんなのあるんかいねえ」
家に帰ってから、
「ばあちゃん、検討会を開こう。会議室に来て。」
会議室というのはうちの玄関兼ギャラリー兼作業上のことです。
スマホで検索して
「あら、トラちゃん、足跡図鑑があったがね。」
そこから二人でああでもない、こうでもないと話し合ったのですが、どうも結論が出ません。
なんだかサルのようでもあるしーだったら前足の跡もあるんじゃない?
クマのようでもあるしーさすがにこの辺に熊はおらんじゃろ。だけど2足歩行みたいな跡よねえ。
じゃあ、やっぱりイノシシか。ーイノシシだったら蹄の跡があるだろ? これにはなさそうだよ。
小動物は体が軽くて足跡はつきそうもない。やっぱり重量のある動物だと思う・・・これが二人の結論でした。
翌日はメジャーを持って
足跡の大きさー 多分土が崩れて足跡が大きくなっているので正確なことは分かりませんでした。
歩幅ー次の足跡までだいたい34,5㎝。 これが前足と後ろ足との長さだとして、次の1歩までは約70センチ
イノシシがだいたい80㎝そこそこらしいのでほぼ一致します。そんなことをしているうちに決定的な特徴を見つけました。
二つに割れた蹄の跡。シカとイノシシとよく似ているらしいのですがこれはややふと目。
わたしは足跡をきれいにならして帰りました。
翌日は新しい足跡は見つかりませんでした。ただ、ポチが、ハクビシン対策で通ったときとは違う場所で反応するのです。で、その近くのトウモロコシを見てみると
無残なトウモロコシの姿。その辺にまともな実はありませんでした。
だいたい草だらけにしておくのも悪い。被害が見えにくいし、動物も隠れやすいですから。
しかし、何よりもショックだったのは、畑のそばには何軒かの民家もあり、ハクビシンやタヌキはともかく、イノシシが出るような山里ではないということです。こんなところにまでイノシシに出てこられたら、もう、作物なんか作れないのではないか、いやそれより、いきなりイノシシに遭遇したら・・・・・
それから2,3日して高校の実習園のそばを通ったら、トウモロコシの周りに水色のネットが張られているのが見えました。
ああ、やっぱり動物の被害があるんだ、と思いました。だけどこの実習園、人家の密集した街中にあるんですよ。こんなところにまで・・・信じられません。