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山猫の夏


 船戸与一   講談社

 エクルウ。ブラジル語で「憎しみ」という意味。この町はその名の通り「憎しみ」に満ち満ちた町。ビースフェルテルト家。アンドラーデ家。二つの勢力が憎しみあい殺し合いを繰り返していた。
 この憎しみの町エルクウに見慣れない日本人がやってきた。弓削一徳と名のるまだら髭の男は、からんできたビースフェルテルトの郎党をなんなくあしらった。かなりのしたたか者と思われる。この男山猫と呼ばれる。
 山猫はビースフェルテルトの娘の探索を依頼されてこの町に来たのだ。ビーステルフェルトの娘カロリーナはアンドラーテの息子フェルナンと相思相愛になりかけおち逐電。山猫へのビーステルフェルトからの依頼は娘を生娘のまま連れ戻してくれというもの。
 黒澤明の「用心棒」セルジオ・レオーネの「荒野の用心棒」にシェークスピアの「ロミオとジュリエット」を足して、拙作「ミュータント狩り」や西部劇「プロフェッショナル」を調味料として加えたような話だが、この作品はアツイ。舞台は炎天下の南米の荒野。欲望と憎しみで血塗られた世界が、この本で上下2段組小さな活字でびっしり380ページ1100枚、こってりと描かれる。山猫はビーステルフェルトに雇われたのだが、当然、アンドラーデも捜索隊を送り出している。そのアンドラーデ捜索隊の隊長というのが山猫とおなじくしたたかな男。その男と闘わなければならない。しかも、ビースフェルテルト捜索隊のリーダーは山猫だが、仲間も山猫の首を狙っている。一刻たりとも油断できない。
 まるで人の命がちり芥のように扱われ、犬猫の死体より人間の死体の方が多い。こういう世界を山猫は笑いながら行く。いったいヤツは何を考えているのだ。血、死、金、欲、そこは悪徳が咲きみだれる世界。その世界をカンカン照りのブラジルの太陽が照らす。アツイぞ。すごいぞ。読むべし。

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巡洋戦闘艦タイガーウィンドゥの航海 第20回 鎧袖一触

巡行速度30ノットで航海を続ける巡洋戦闘艦タイガーウィンドゥ。先行する船団に入って順調な航海といえる。
 バルカン砲の回転部分の不具合で、メンテナンス中だった防御用近接対空機関砲シン。とりあえずメンテナンスも終わり、右舷に設置されて実戦で射撃したが追尾レーダーの不具合はあいかわらずであった。
 輸入モノのレイルガンである中距離砲キャンを5番砲塔に設置。1発敵艦に命中させた。
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