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新連載 週刊小説 ミュータント狩り (第1回)

  第1章

 静寂は突如破れた。かたわらの草むらから、そいつらが飛び出した。人間、と呼ぶにはあまりに異様な連中である。
 腕が4本あるもの。一つ目の巨人。コウモリのような翼を持つ男。ルビーのような真紅の眼を持ち、雪のような白い肌の怪人。半人半馬のケンタウロス。身長50cmの侏儒。円盤に首がはえ、その下側からヒョロヒョロとした四肢をはやした男。
 彼らはミュータントと呼ばれる生き物たちである。10人のミュータントのうち、人間の姿形をしているのは2人だけ。
 エリカは物理的な衝撃を感じるほどの恐怖に襲われた。フッと気が遠くなりかけた。羞恥心が彼女の味方をした。かろうじて失神しなかったのは、一糸まとわぬ姿をしているから。エリカは水浴びをしている時に襲われた。
 あわてて服を取ろうとする。黒い物体が足元をかすめて飛んだ。チクッと太ももに鋭い痛みを感じた。白磁のような彼女の太ももに、一本赤い糸が流れる。かなり鋭利な刃物で切られたらしい。その黒い物体が彼女の服を持っていた。
 侏儒である。ほぼ4頭身で、身長50センチの侏儒だ。頭頂部が鋭く尖った頭が直接胴体にのっかっている。ドス黒いなめし革のような皮膚を持ち、短く貧弱な腕と、身長の3分の2を占める太い足を持っている。
 エリカは、今、一糸まとわぬ姿を化け物どもの目にさらしている。普通の娘なら、恐怖と羞恥心で発狂するかもしれない。彼女はなんとか持ちこたえた。両手で胸と性器をかくしながら、侏儒をにらみつけた。
「返して」侏儒に歩み寄った。
 侏儒は服を横の男に投げた。全身が雪のように真っ白な男だ。男は服を受け取ると、いきなり引き裂いた。そして歯をむき出して笑った。声を出さない笑いである。雪のように白い顔の中に真っ赤なものが現れた。口だ。その口の中にはピラニアのような鋭い歯がのぞいている。
 服が切り裂かれるのを見て、エリかは急に羞恥心に襲われた。その場にしゃがみこんだ。10匹の化け物が周りを取り囲んだ。
 白い男がおおいかぶさってきた。
「やめろ」
 鋭い声が響いた。声の主は、ミュータントの中で、普通の姿形をした二人のうちの一人。若い男性。どうやら一味のリーダーらしく、一番年若いが、他の9人を圧する“何か”を持っている。
 髪は黒く長い。背は高い。瞳に気品が見てとれる。赤銅色の肌に、分厚い筋肉で武装された肉体。それでいながら、鈍重な感じはしない。
「いっしょに来てくれ。お嬢さん」
 青年はエリカに、切り裂かれた服を手渡しながらいった。その瞳には、なぜか他のミュータントたちのような憎しみはなかった。

                                次回更新4月11日予定
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
« メッセンジャ... 安藤、良かったね »
 
コメント
 
 
 
気合、入ってますね。 (せぷ)
2012-04-06 22:57:35
週刊連載小説ですか。
気合、入ってますね。
自分も今年になって隔週で小説を連載していこうと企画したことがありましたが、読みたいという人がほぼ皆無だったので、連載一回目で打ち切ってしまいました。笑。

雫石さんの作品は読ませてもらいますね。
 
 
 
せぷさん (雫石鉄也)
2012-04-07 08:39:36
ショートショートは月に2本は書いているのですが、長いものも書けるんだぞ、ということで始めてみました。

>雫石さんの作品は読ませてもらいますね。

ありがとうございます。がんばって書きますから、どうかご愛読ください。
 
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