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お父さんと伊藤さん


監督 タナダユキ
出演 上野樹里 リリー・フランキー 藤竜也 長谷川朝晴 安藤聖

 アヤ34歳。伊藤さん54歳。20歳の年の差カップルが同棲している。年の差は大きいが、つつましくも仲良く暮らしている。二人はそれなりの楽園を築いていたが、とつぜんその楽園に異物が侵入。生活に影響を受ける。だったら、その異物を排除すればいい。しかし、排除できない。なぜなら、その異物はアヤのオヤジだから。で、そのオヤジ、「東京物語」の笠智衆のオヤジのような謙虚なオヤジならいいが、なんとも困ったオヤジ。遠慮がない。口うるさい。さらに悪いことに帰るところがない。
 アヤのやることなすこといちいち文句をいう。夕食にとんかつを出す。
「また揚げ物かワシを殺す気か」
「中濃ソースは悪魔のソース。文明人ならウースター」
 などなど、口うるさいことはなはだしい。
 このオヤジ、もともとはアヤの兄夫婦宅にいたのだから、義姉がどんな目にあっていたか想像できる。なんせ、このオヤジの顔を見たとたん、義姉はゲロを吐くぐらい。とてもじゃないが兄宅には戻せない。しかたがないから、アヤ、伊藤さん、オヤジの3人で生活し始める。伊藤さんはとっても優しい人だから、オヤジともそれなりにうまくやっている。
 ところが、オヤジ、へたくそな字で書置きをしていなくなる。どこへいったのか。
 上野、リリー、藤、この3人の演技力で見せる映画といってもいい。とくに上野のうまさが際立っている。このこまったオヤジをどう扱うか。こまりつつも親として敬愛しているようでもあり、ムゲにじゃけんにはしてない。そのへんの表現が絶妙。もちろん、この上野の演技を受ける藤のオヤジもうまかった。頑固でヘンコ、それでいて妙にかわいげがある。そして、このおかしな親子の間をとりもつ、54歳の伊藤さんのリリー。包容力があり限りなく優しい。ヒューマンコメディの傑作といってもいい。 


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