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とつぜん対談 第40回 角帽との対談

 今日の対談の相手は若い青年です。大学生です。大学生って別に珍しくないですね。いまどきどこにでも棲息していますね。ところが、紹介してくれた扇子さんによると、たいへん珍しい大学生だそうです。なんでも、扇子さんが、某有名私大の落語研究会に呼ばれて行った時に知りあって、対談相手として私に紹介してくれました。
 さて、大学生というから、どんな青年でしょう。ま、いまどきの大学生ですから、だいたい想像できますが。あ、あの人かな。でも、あれは大学生じゃないな。

角帽
 おはようございます。雫石さんですか。

雫石
 あ、びっくりした。きみが角帽くんか。扇子さんから紹介してもらった。

角帽
 はい。私が角帽です。どうぞよろしく。

雫石
 しかし、いまどき、角帽かぶって詰襟の大学生なんているかなあ。ひょっとして応援団かなんか。

角帽
 いいえ。私は応援団ではありません。

雫石 
 だったら、なんでそんなかっこうしてんの。

角帽
 どのようなかっこうでしょうか。

雫石
 角帽に詰襟の学生服。

角帽 
 おかしいでしょうか。

雫石 
 大学生らしくないな。

角帽
 なにをおっしゃるのですか。学生は学生らしい服装をすべきです。学生ですので、角帽をかぶって学生服を着るべきです。

雫石
 そんなかっこうしてるの、この大学できみ一人だろう。なぜなんだ。

角帽
 学生の本分は学問です。私は学問に打ち込みたいのです。服装に気をとられたくないのです。ですから学生らしい服装をしているのです。

雫石 
 学生らしい服装ね。うん。そんなかっこうでコンパなんかにも行くわけ。コスプレと思われるんじゃない。

角帽
 コンパとは何ですか。

雫石
 友だちが集まって、酒飲んだりしてワーワーしないの。

角帽
 私は学問が忙しく、かような酒宴に参加している時間はありません。

雫石
 だったら、女の子と知り合う機会ないんじゃない。ガールフレンドいるの。

角帽
 わが家では先祖代々、不純異性交遊は禁じられております。男女7歳にして席おなじゅうせず、と教えられています。

雫石
 だったら結婚とかどうするの。

角帽
 学業を終えましたら、両親がしかるべき人を、いいなづけとして私に引き合わせることになっております。

雫石
 親が決めた人をね。きみにも好みがあるだろ。

角帽
 父の恩は山より高し、母の恩は海より深し。両親の勧めてくれた人に間違いはありません。

雫石
 ふ~ん。ところで学部はなに。サークルは。

角帽
 政経学部と文学部です。課外活動はしておりません。

雫石
 二つもの学部なの。

角帽
 昼間は政治を勉強しています。夜間部では国文学を勉強しています。

雫石
 そんなんじゃアルバイトもできないな。学費はどうしてんの。

角帽
 家庭教師をしております。

雫石
 ふ~ん。将来はどうするの。最近は就職も大変なんじゃない。

角帽
 私の目標は、末は博士か大臣です。

雫石
 博士ね。今は大学院の博士課程を出たら、年齢が行ってるしそれなりの待遇をしなくてはならないので就職しにくいらしいよ。修士の方が就職に有利だよ。

角帽
 私は就職のために学問を修めているのではありません。

雫石
 大臣だけど、まず議員にならなくてはね。そのため選挙で当選しなくては。地盤、看板、かばんの三つ、支持者後援者、知名度、資金、これがないと当選は難しいといわれているね。世襲が多いけど、きみの親は議員なの。

角帽
 いいえ。私の両親は農民です。私も親も無名ですし、お金もありません。

雫石
 だったら大臣は難しいな。

角帽
 お言葉を返すようですが。この国にとって私が必要なら、私にも大臣への道が開けます。そのため日々勉学に励んでおります。

雫石
 ま、とにかくがんばって。

角帽
 はい。お励まし、ありがとうございます。私、身を粉にしてこの国のために働く所存であります。
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