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とつぜん対談 第39回 扇子との対談

 酔っぱらっていなければいいのですが。いや、なに。今日の対談の相手なんですが、ずいぶんとご酒がお好きな方です。昼間っから飲んでおられることもあるとか。あ、いらっしゃいました。ああ、良かった。しらふのようです。
 今日の対談相手は扇子さんです。扇子さんは長い間上方落語の世界に身を置いてこられました。上方落語滅亡の危機から、現代の隆盛まで。上方落語の盛衰をつぶさに見てこられた方です。

雫石
 どうも。よく来てくれました。

扇子
 いやいや。あんたは上方落語ファンやからな。会わへんわけにはいかへん。

雫石
 最近、お忙しいですか。

扇子
 いやいや。ヒマで困っとるんや。

雫石
 え、今は上方落語はちょっとしたブームやないんですか。

扇子
 ワシらロートルはなかなかお座敷がかからん。それにワシは扇子やから。使ってくれる噺家がおらんとあかんねん。

雫石
 そういえば扇子さんは、上方落語中興の祖といわれた、あの師匠のもとに長い間おられましたね。

扇子
 そやねん。大変やったね。なんせあの通りのご仁やったから。

雫石
 あの師匠といえば、豪放磊落、大酒のみが代名詞でしたが、家では案外飲まないという、ウワサも聞きましたが。

扇子
 そやな。家ではあんまり飲まなかったな。せいぜい一日に1升程度やったな。

雫石
 師匠は弟子によく手が出たらしいのですが本当ですか。

扇子 
 ほんまやな。怒ると、ワテをば振り上げて、よく弟子の頭を叩いとったな。

雫石
 あなたにもこたえるでしょう。

扇子
 そやねん。弟子をわたいで叩いたあと、「池田の猪買い」やらはった。わたい、その時裂けとって、そんなわたいで鉄砲作ったさかい、筒先がバラバラな暴発した鉄砲みたいなんでやったことあったな。

雫石
 やっぱり、あの師匠といえば「らくだ」ですが。

扇子
 そやな。おやっさん、しばらく「らくだ」やらへん時があったやろ。

雫石
 ありましたね。

扇子
 なんでやと思う。

雫石
 なんでですのん。

扇子
 質に入れとったんや。なんせ、あの通りのお人やさかい、借金の山。なんも質草がのうなって、しゃあないから噺を質に入れたんや。「らくだ」で足らんかったら「三十石」も入れるつもりやったみたいやで。

雫石
「らくだ」でどれぐらい借りられたたんでしょ。

扇子
 さあ。判らんなあ。

雫石
 ところで、扇子さんは最近高座にあがってませんね。

扇子
 そやねん。わたいも上がりたいねんけど。わたいを持つ噺家が出てこやへん。おやっさんの跡を継いで、わたいを高座に上げてくれる噺家が出てくるのんを待っとんのやけどな。

雫石 
 きっと出てきますよ。そんな噺家。 
 
 
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
扇子 (まろ)
2012-04-21 04:31:55
扇子が落語家を語るとは、なかなかのアイディア!
いつもながら対談シリーズには脱帽してしまいます。
松鶴師匠のあの独特の語り口や表情がみごとに浮かんで
来るようですなあ・・・
私は甥っ子でエッセイストの和多田勝さんと親しくて
よく師匠のエピソードを聞かせてもらったものですが
そらもうムチャクチャ面白い人だったようです。
また落語、聴きたくなってしまいました。

横浜に負けるなんて本当に悔しい!
新井はなんであんなに信頼感ないんやろ・・・
しょせん二流選手や!
 
 
 
まろさん (雫石鉄也)
2012-04-21 09:02:22
そうですね。松鶴師匠、ハタで見ているぶんには大変面白い人だと思います。でも、家族や弟子にとっては大変な人ではなかったでしょうか。
昔はよく、島之内寄席に行きました。入り口で松鶴師匠がコワイ顔で立ってはりました。
師匠の「らくだ」が聞きたくなりましたね、また映画「寝ずの番」も見たくなりました。
 
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