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6月17日(火) 富士スピードウエイが訴えられた

 富士スピードウェイが訴えられた。昨年のF1日本GPを観戦しに行ったら、運営に不手際があって、不愉快な思いをしたとのことで、観客109人が、チケット代の全額返還と、慰謝料の支払いを求めて裁判を起した。この件に関して、いくつかのブログで原告側を全面的に応援する人もいるが、小生はちょっと違う感想を持った。
 訴状によると、レース期間中の、レース場への足は、専用のシャトルバスに限られていた。ところがレース場周辺は大渋滞。
 原告のいいぶんは「雨の降る中、長時間バスを待たされた」「トイレ、売店の数が少ない。観客の誘導が不十分」だったので、精神的苦痛を受けたとして、訴えを起したとのこと。なんでもチケット代は1万1千円から6万1千円。GPのチケット代とは高いものだ。初めて知った。小生だったら、これだけで数か月分の小遣いが吹っ飛んでしまう。
 この報道だけでは判らないが、レースはちゃんと行われたのだろう。もし、レースも主催者側の不手際で、中止ということだったら、もっと大騒ぎになっていただろう。そして、そのレースは観客の満足の行くレースだったのか。小生、車好きだが、モータースポーツの分野は良く知らない。
 原告たちの言い分は理解できる。こんなに高いチケット代を取りながら、こんなお粗末な運営ではだまっておれない。小生が原告と同じ立場に立たされたら、同じように怒っていたであろう。しかし、小生ならば、肝心のレースが満足のいくものならば、バスの時間や、トイレの数に腹を立てるものの、ま、しかたないわ、で、すませたと思う。体験していないからエラそうなことはいえないが。原告たちはがまんできなかったわけ。その不手際がどの程度のものかわからないが。許容範囲か許容出来ないかは、これから裁判所が判断するだろう。
 このようなモータースポーツに限らず、興行ものは、客に快適な時間と空間を売っているわけ。プロ野球なら、野球場にいる間、映画なら映画館にいる間、落語なら寄席にいるあいだ、客に快楽に過ごしてもらうことで、お金を取っている。ものすごく面白い映画を、快適な環境で観たら、お金を払っただけのことはあると満足する。上質の時間をその映画館で過ごしたわけ。
 ところが同じ映画でも、隣が、マナーを心得て静かに映画を観る人と、映画を観るマナーを知らず、私語を交わしたり上映中に物を食って音を立てる人となら、とうぜん後者の方が不愉快なわけ。どちらの時間が上質かというと、わかりきったこと。ところが両方とも映画館の入場料は同じ。映画の観方も知らない人と隣席になって、不愉快な思いをしたらそれだけ料金を割り引いてもらいたいが、当然、そんな理屈は通用しない。
 甲子園に阪神の試合を観に行っても、阪神が勝った時と、負けた時では、帰りの阪神電車の中での、愉快さが違う。この場合も同じ値段。
 6代目笑福亭松鶴は、大変に出来、不出来の激しい落語家だった。不出来の時は、特に晩年は、何をいっているのかよく判らない。上出来の時はめちゃくちゃ面白い。もちろん落語会の木戸銭は両方おなじ。
 芝居にしても歌舞伎にしても、リサイタルにしても、オーケストラの演奏会にしても、生身の人間がやっているのだから、毎日同じ質の芸を客に提供できるわけではない。
 以上のように、このような興行物の場合、不可抗力によって、客が求める時間とは違う時間を提供することはさけられない。このことを考えると、このたびの富士スピードウェイ提訴は、少々違和感を禁じえない。さてさて、どういう判決がでるものやら。
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