雫石鉄也の
とつぜんブログ
フック
ある日夜が明けると空からフックが下がっていた。かなり大きなフックだ。太いワイヤーの端にぶら下がっている。30トン程度のクレーンのフックと思われる。上空50メートルのあたりでじっとしている。
ワイヤーは空のずうっとずうっと上まで伸びていて上端がどこか分からない。
じっとしている所をみると飛行機ではなく気球かヘリコプターか、空中停止できる飛行物体からぶら下がっているらしい。しかしそれらしい物体は見えない。かなりの高空にいるのだろう。
だんだんと人が集まってきた。みんな上を見上げてフックを見ている。真下まで行って見上げる人もいる。そのうち警察が出てきてロープを張って人々を遠ざけた。
「危険物かも知れません。下がってください」 その時、フックが下がってきた。静かにそろそろと下りてきたフックは人の背丈ぐらいの所まで降りてきた。
フックはそのまま静かにしていた。それは何かをそこに掛けてもらいたいようだ。
昼近くになってもだれも何もかけない。そしてフックは静かに巻き上がって行った。あきらめたように見える。
次の朝もフックが空から下がってきた。そして、人の背丈まで下がってきて、昼近くに上空へ消えて行く。
こんなことが何日も続いた。そしてとうとう人々はフックに何かを掛けることにした。
何を掛けようか相談した結果、とりあえずいらない電気製品を掛けることにした。
大きなコンテナには壊れたテレビや冷蔵庫がたくさん積み込まれ、コンテナのアイボルトに玉掛けワイヤーが掛けられて、フックに玉掛けされた。
玉掛けが終了して、人々が下がって見ているとフックはコンテナをぶら下げて静かに巻き上がって行った。
ほどなくからのフックが下がってきた。まるでもっとくれといっているよう。
フックの降りてくるところはいつも同じところ。その周辺の建物は壊され広い広場ができた。その広場には、国中からいらない物をいっぱい詰め込んだコンテナが集められた。 広場の端に小さいプレハブ小屋が建てられ役人が常駐して荷物をフックに掛ける順番を決めている。
このフックはどこからぶら下がっているのだろう。だれしも疑問に思うこと。勇敢な人がいて、ワイヤーを登った。しかしすごすごと降りてきた。
「上がわからん。ずっとずっと上まで伸びていた」
ヘリコプターで行ける所まで行っても上端は分からない。
たまたま有人宇宙船が上空を通過するので見てもらった。
「こちらヒューストン。スペースホーク7号から連絡があった。ワイヤーは宇宙のずっと先の方まで伸びていて先っちょはわからんそうだ。以上」
「このワイヤーはじっとしているように見えますが、実はものすごい勢いで回転しているのです。地球は自転しています。そして太陽の周りを公転しています。太陽も地球たち惑星を引き連れてヘラクレス座の方に移動しているのです。そして銀河全体も回っているのです」
てなことをいう科学者もいるが、それがどうしたというのだろう。
こんな便利なフックはない。どんな物でもどこかへ持って行ってくれる。ところが1本ではとうてい足らない。
「もっとたくさん下してください」とのメッセージをつけた。
よく朝、世界各地に同じようなフックがたくさん下りてきた。
世界中の国が豊かになった。廃棄ということを考えないでどんどん生産すればいい。炭酸ガスも巨大なボンベに詰めればフックが処理してくれる。古い品物はどこにでもあるフックに引っ掛ければOK。最近はごく小さな一トン以下のご家庭用フックがあって一家に一フックの時代になった。
「もう充分だろう」
「そうだな。では針に餌をつけようか」
フックの先にいろいろな物が付いて下りてくるようになった。食料、工業製品、石油などのエネルギー源、その他人間に必要な物はすべてフックに付いて天から下りてくる。
いらない物は持って行ってくれる、いる物は下ろしてくれる。人類はなにもしなくなった。
そして、地球から人類は一人もいなくなった。みんなフックに引き上げられた。
「次の養殖池を作らなくっちゃ」
ワイヤーは空のずうっとずうっと上まで伸びていて上端がどこか分からない。
じっとしている所をみると飛行機ではなく気球かヘリコプターか、空中停止できる飛行物体からぶら下がっているらしい。しかしそれらしい物体は見えない。かなりの高空にいるのだろう。
だんだんと人が集まってきた。みんな上を見上げてフックを見ている。真下まで行って見上げる人もいる。そのうち警察が出てきてロープを張って人々を遠ざけた。
「危険物かも知れません。下がってください」 その時、フックが下がってきた。静かにそろそろと下りてきたフックは人の背丈ぐらいの所まで降りてきた。
フックはそのまま静かにしていた。それは何かをそこに掛けてもらいたいようだ。
昼近くになってもだれも何もかけない。そしてフックは静かに巻き上がって行った。あきらめたように見える。
次の朝もフックが空から下がってきた。そして、人の背丈まで下がってきて、昼近くに上空へ消えて行く。
こんなことが何日も続いた。そしてとうとう人々はフックに何かを掛けることにした。
何を掛けようか相談した結果、とりあえずいらない電気製品を掛けることにした。
大きなコンテナには壊れたテレビや冷蔵庫がたくさん積み込まれ、コンテナのアイボルトに玉掛けワイヤーが掛けられて、フックに玉掛けされた。
玉掛けが終了して、人々が下がって見ているとフックはコンテナをぶら下げて静かに巻き上がって行った。
ほどなくからのフックが下がってきた。まるでもっとくれといっているよう。
フックの降りてくるところはいつも同じところ。その周辺の建物は壊され広い広場ができた。その広場には、国中からいらない物をいっぱい詰め込んだコンテナが集められた。 広場の端に小さいプレハブ小屋が建てられ役人が常駐して荷物をフックに掛ける順番を決めている。
このフックはどこからぶら下がっているのだろう。だれしも疑問に思うこと。勇敢な人がいて、ワイヤーを登った。しかしすごすごと降りてきた。
「上がわからん。ずっとずっと上まで伸びていた」
ヘリコプターで行ける所まで行っても上端は分からない。
たまたま有人宇宙船が上空を通過するので見てもらった。
「こちらヒューストン。スペースホーク7号から連絡があった。ワイヤーは宇宙のずっと先の方まで伸びていて先っちょはわからんそうだ。以上」
「このワイヤーはじっとしているように見えますが、実はものすごい勢いで回転しているのです。地球は自転しています。そして太陽の周りを公転しています。太陽も地球たち惑星を引き連れてヘラクレス座の方に移動しているのです。そして銀河全体も回っているのです」
てなことをいう科学者もいるが、それがどうしたというのだろう。
こんな便利なフックはない。どんな物でもどこかへ持って行ってくれる。ところが1本ではとうてい足らない。
「もっとたくさん下してください」とのメッセージをつけた。
よく朝、世界各地に同じようなフックがたくさん下りてきた。
世界中の国が豊かになった。廃棄ということを考えないでどんどん生産すればいい。炭酸ガスも巨大なボンベに詰めればフックが処理してくれる。古い品物はどこにでもあるフックに引っ掛ければOK。最近はごく小さな一トン以下のご家庭用フックがあって一家に一フックの時代になった。
「もう充分だろう」
「そうだな。では針に餌をつけようか」
フックの先にいろいろな物が付いて下りてくるようになった。食料、工業製品、石油などのエネルギー源、その他人間に必要な物はすべてフックに付いて天から下りてくる。
いらない物は持って行ってくれる、いる物は下ろしてくれる。人類はなにもしなくなった。
そして、地球から人類は一人もいなくなった。みんなフックに引き上げられた。
「次の養殖池を作らなくっちゃ」
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10月10日(水) 被害者が出てからでは遅い
また詐欺まがい、というか詐欺そのものといってもいいかも知れない。例の「円天」のことである。現時点では詐欺と断定するのはさしひかえなければならない。それは裁判所が判断を下すべきであって、このような場で白だ黒だというべきではないと思う。しかし当局が詐欺の可能性が濃厚と判断して、出資法違反で強制捜査に動いたのは事実である。
この「円天」なる擬似通貨を発行しているのは「エル・アンド・ジー」という健康食品販売会社。この会社の設立者で代表取締役会長は波和二なる人物。この人物、1971年にマルチ商法の会社を設立。25万人に自動車関係の商品を販売。自殺者まで出している。1978年に逮捕され実刑判決を受けている。
この波会長は日本のマルチ商法の草分けで。業界ではカリスマ的な存在で有名な人物だそうだ。その人物が「円天」なる擬似通貨を発行してなにやら動いているということは当局は情報をつかんでいなかったのか。素人考えだが、このような有名な人物の動きは知っていたと思われる。
ではなぜ、「こんな人物がこんなことをしようとしている。みなさん、気をつけよう」と警告を発することができなかったのか。確かに合法的な会社を設立してまともな商売をしている間は、いくら詐欺の前科がある人物の商売でも、それに対して警告を発するのは営業妨害になるので不可能だろう。しかし「円天」の発行元「エル・アンド・ジー」は実刑を受刑中の仮釈放の時に設立されたというではないか。仮釈放中だから当然当局に観察されていたわけ。その時に新たな会社を作っている。ああ、波さんは心を入れ替えてまっとうな会社を創ってまじめに生きようとしていると判断したのだろうか。もしそうならその判断は間違いだったということになる。
ともかく被害者が出る前になんとかならなかったのか。性犯罪に関しては再犯の可能性が高く、矯正が困難とのことで、ある程度の情報が開示できるようになった。悪徳商法に関しても同様な処置ができないのだろうか。そのような商売を行う人物は、会社をつぶしては興し、つぶしては興し、手を変え品を変え、同じような悪徳商法を行う。このような人物も性犯罪者と同様に、再犯の可能性が高く、矯正が困難だと思うのだが。
被害者が出てから、こんな悪いヤツがいてこんな悪いことをしている、と報道されても手遅れだ。
この「円天」なる擬似通貨を発行しているのは「エル・アンド・ジー」という健康食品販売会社。この会社の設立者で代表取締役会長は波和二なる人物。この人物、1971年にマルチ商法の会社を設立。25万人に自動車関係の商品を販売。自殺者まで出している。1978年に逮捕され実刑判決を受けている。
この波会長は日本のマルチ商法の草分けで。業界ではカリスマ的な存在で有名な人物だそうだ。その人物が「円天」なる擬似通貨を発行してなにやら動いているということは当局は情報をつかんでいなかったのか。素人考えだが、このような有名な人物の動きは知っていたと思われる。
ではなぜ、「こんな人物がこんなことをしようとしている。みなさん、気をつけよう」と警告を発することができなかったのか。確かに合法的な会社を設立してまともな商売をしている間は、いくら詐欺の前科がある人物の商売でも、それに対して警告を発するのは営業妨害になるので不可能だろう。しかし「円天」の発行元「エル・アンド・ジー」は実刑を受刑中の仮釈放の時に設立されたというではないか。仮釈放中だから当然当局に観察されていたわけ。その時に新たな会社を作っている。ああ、波さんは心を入れ替えてまっとうな会社を創ってまじめに生きようとしていると判断したのだろうか。もしそうならその判断は間違いだったということになる。
ともかく被害者が出る前になんとかならなかったのか。性犯罪に関しては再犯の可能性が高く、矯正が困難とのことで、ある程度の情報が開示できるようになった。悪徳商法に関しても同様な処置ができないのだろうか。そのような商売を行う人物は、会社をつぶしては興し、つぶしては興し、手を変え品を変え、同じような悪徳商法を行う。このような人物も性犯罪者と同様に、再犯の可能性が高く、矯正が困難だと思うのだが。
被害者が出てから、こんな悪いヤツがいてこんな悪いことをしている、と報道されても手遅れだ。
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