鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

150418 戸蔦別川河畔林観察会

2015-05-12 15:34:33 | 鳥・春

Photo by Chishima, J.
観察会の様子 2015年4月 北海道帯広市)


 帯広市郊外の戸蔦別川河畔林での自然観察会(主催:十勝の森とひとを結ぶ会)でした。林内の所々に雪が残るほかは地表が見え、周辺の畑ではヒバリが賑やかに囀り…とすっかり春の雰囲気です。防風林を突っ切ってたどり着いた、河岸段丘の上から見た河畔林は雪解け水でいたく冠水していたため、今回は下まで降りるのは見送って段丘上から概観するにとどめ、あとは防風林での自然観察を楽しみました。
 会が進むにつれ上がった気温に誘われてか、ゴジュウカラやハシブトガラの活動がとても活発で、葉も展開する前なので双眼鏡でじっくりその行動を観察できました。藪のある場所ではベニマシコが「ピ、ポ」と鳴き交わし、カラマツの頂ではカワラヒワがいつもの「キリキリコロロ」にくわえ、「ビーン」と朗らかな囀りを繰り返していました。
 林床のクジャクチョウやフッキソウに目を奪われながら歩を進めていると、地表に張り出した横枝に足を取られ、派手に転倒してしまいました。痛む腰をさすりながら顔を上げると、目の前にはなんと新鮮なヒグマの糞。まだ湿っています。量が少なめで木の実や昆虫などの内容物が認められないあたり、いかにも冬眠明けという感じです。河畔林伝いに移動しながら、夜間や薄暮時には台地上の防風林や畑に姿を現しているのかもしれません。周囲にはエゾシカの糞も多数転がっており、参加者の外国人の方は「こっちにベア(熊)、あっちにディア(鹿)」と楽しいジョークを飛ばされておりました。
 集合場所に戻り、紅茶を飲んだり鳥談義に花を咲かせたりしていると、オオタカとノスリが相次いで現れ、ノスリは青空をかなり高くまで上り詰めてゆきました。当初、雨の予報でどうなることかと思われましたが、後半は汗ばむくらいの陽気の中、鳥を中心に早春の自然を満喫した午前でした。朝、まだ気温の低い時間に現地へ向かう時には、畑から立ち上る地霧も綺麗でした。


確認種(鳥類のみ):キジバト トビ オオタカ ノスリ コゲラ アカゲラ ハシボソガラス ハシブトガラス ハシブトガラ ヒガラ シジュウカラ ヒバリ ヒヨドリ ゴジュウカラ キバシリ ノビタキ ノビタキ スズメ ハクセキレイ アトリ カワラヒワ ベニマシコ ウソ ホオジロ アオジ (25種)
参加者:15名


(2015年4月18日   千嶋 淳)

150416 プライベートガイド(十勝川下流域)

2015-05-12 15:21:47 | 鳥・春

Photo by Chishima, J.
シジュウカラガンやマガンの群れとキタキツネ 2015年4月 北海道十勝川下流域)


 午後、名古屋からのお客さんを案内させていただきました。娘さんの移住されている帯広を訪ねるついでに趣味の鳥も楽しめたらとネットで探していたところ、野鳥の会十勝支部のHPが目にとまり、ガイドをご用命下さったとのことでありがたい限り。
 時折小雨もちらつく生憎の曇天でしたが、その分、鳥との距離は近く、マガン、ヒシクイはもちろん、ハクガン、シジュウカラガンの群れも割と近くで観察でき、お住まいの地では馴染みの薄い大型水鳥の群れの迫力を感じていただけたかと思います。タンチョウやオジロワシもしっかり見られました。4月に入ってからは、この天然記念物4種+希少ガン類2種にはパーフェクトに出会えています。
 水鳥の観察後に訪れた孤立林は肌寒く、キバナノアマナやウラホロイチゲの花も閉じがちでしたが、近くのハルニレの梢では北帰行を控えたツグミが複雑な節回しでぐぜっていました。
 池田発着の3時間程度の周遊(海はなし)で確認できた鳥は、以下の35種でした。


確認種:ヒシクイ マガン ハクガン シジュウカラガン オオハクチョウ ヨシガモ ヒドリガモ マガモ カルガモ コガモ キンクロハジロ ホオジロガモ ミコアイサ カワアイサ キジバト アオサギ タンチョウ オオバン カモメ トビ オジロワシ アカゲラ ハシボソガラス ハシブトガラス ハシブトガラ シジュウカラ ヒバリ ヒヨドリ ムクドリ ツグミ ノビタキ スズメ ハクセキレイ カワラヒワ オオジュリン

 ガン類を観察中、群れの一部が急に飛び上がったので「ワシ!?」と思って見ると、キタキツネが1頭、群れのすぐ後ろを爆走していました。そしてふと立ち止まり、残ったガン類が一斉に首を上げて警戒しているのが写真です。以前はマガンの群れの中にシジュウカラガンを探すのが普通でしたが、最近ではシジュウカラガンの群れにマガンが混じっている感じです。


(2015年4月17日   千嶋 淳)

十勝の自然7 エゾユキウサギ

2015-05-12 15:10:22 | 自然(全般・鳥、海獣以外)

Photo by Chishima, J.
エゾユキウサギ 2012年4月 北海道中川郡豊頃町)


(FM JAGAの番組 KACHITTO(月-木 7:00~9:00)のコーナー「十勝の自然」DJ高木公平さん)


 エゾユキウサギというと、2円切手にも描かれている純白の姿を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、夏には茶色の夏毛へと毛替わりします。今時分はちょうど毛替わりの時期で、茶色と白の混じった、雪解けの景色のような毛色の個体をよく見ます。
 本来は夜行性で、見る機会も少ないのですが、長い冬が終わり、繁殖に入ったこの季節は大胆になるのか、昼間に活動していることも少なくありません。森林性のものが多い日本の哺乳類の中では珍しく、河川敷や農耕地、伐採跡地といった開けた環境に生息します。
 あらゆる植物を食べるため、1970年頃には植えたばかりのカラマツ苗木への食害が問題になったそうです。ただ、その後は環境の変化や天敵のキタキツネが増えたことによって激減しました。もっとも、この10年くらいで少し持ち直してきたようで、最近は足跡や姿と出会う機会が増えたように感じています。
 イギリスからユーラシア大陸にかけて広く分布するユキウサギの1亜種で、学名をレプス・ティミドゥス・アイヌといいます。レプス・ティミドゥスは「臆病なウサギ」を意味し、最後のアイヌはアイヌに因んだものです。
 雪の解けた4月の原野に、残雪のようなウサギの姿を探してみませんか?


(2015年4月10日   千嶋 淳)

十勝の自然6 ノビタキ

2015-05-05 17:25:56 | 鳥・春

Photo by Chishima, J.
ノビタキのオス 2009年6月 北海道河西郡更別村)


(FM JAGAの番組 KACHITTO(月-木 7:00~9:00)のコーナー「十勝の自然」DJ高木公平さん)


 4月も10日を過ぎると、中国南部や東南アジアで冬を越していたノビタキが十勝に帰ってきて、「ヒーヒョロリヒー」と朗らかなさえずりを聞かせてくれます。スズメより少し小さく、オスでは頭から背中の黒とお腹の白、胸のだいだい色のコントラストが美しい小鳥です。
 ヒバリと並んでもっとも普通の草原の小鳥で、農耕地や海岸、原野などのほか線路わきや住宅地内の空き地といった、ちょっとした草のある場所にも生息しています。また、山の中でも伐採跡地やスキー場など開けた環境があればいて、驚かされることがあります。
 十勝ではごく身近なノビタキも、本州では高原の鳥です。生まれ育った群馬では、毎年夏に、唱歌「夏の思い出」で有名な尾瀬ヶ原へ見に行くのを楽しみとしていました。北海道は寒冷なので、平地でもノビタキの好む環境や餌があるということなのでしょう。帯広周辺では市街地にも普通なゴジュウカラやヒガラなども、本州では山に行かないと見ることができない鳥です。
 生息数の多い鳥ですが、ほかの鳥の巣に卵を産んで育てさせる、托卵(たくらん)という習性を持つカッコウの、主な托卵相手になっています。托卵されるとカッコウのヒナが少し早く孵(かえ)って、本能的にノビタキの卵を巣の外に捨ててしまうので、ノビタキにとっては迷惑な話でしょう。


(2015年4月10日   千嶋 淳)

150412十勝川下流域

2015-05-05 16:46:41 | 鳥・春

Photo by Chishima, J.
夏毛へ換毛中のエゾユキウサギ 2015年4月 北海道中川郡豊頃町)


 沼の氷はほぼ完全になくなり、雪も日陰などを除くと消失しました。午前中は風も弱く、陽光が燦々と照りつける中、ヒバリが天に向かって談判し、ノビタキやオオジュリン、キジバトが囀りを奏で、アカエリカイツブリが賑やかに鳴き交わす、実に長閑な十勝川下流域でした。
 その長閑さを海岸でも味わおうかと思ったら、季節はずれの濃霧で寒く、早々に退散しました。
 所々でエゾアカガエルがマガンに似た甲高い声で大合唱し、防風林の林床にはエゾエンゴサク、キバナノアマナ、ウラホロイチゲ、ザゼンソウなどの花が咲き、夏毛へ換毛中のエゾユキウサギと出会うなど、鳥以外でも早春の十勝平野の自然を謳歌した一日でした。
 カモ類が種、個体数ともさらに少なくなりましたが、タンチョウ、オジロワシ、マガン、ヒシクイの天然記念物4種とハクガン、シジュウカラガンはコンスタントに観察できています。


確認種:ヒシクイ マガン ハクガン シジュウカラガン オオハクチョウ ヨシガモ ヒドリガモ アメリカヒドリ マガモ カルガモ オナガガモ コガモ キンクロハジロ スズガモ シノリガモ クロガモ ホオジロガモ ミコアイサ カワアイサ アカエリカイツブリ ドバト キジバト ヒメウ カワウ アオサギ タンチョウ オオバン カモメ オオセグロカモメ トビ オジロワシ ハイタカ コゲラ アカゲラ ハシボソガラス ハシブトガラス ハシブトガラ シジュウカラ ヒバリ ヒヨドリ キレンジャク ゴジュウカラ ムクドリ ノビタキ スズメ ハクセキレイ アトリ カワラヒワ ホオジロ オオジュリン


(2015年4月12日   千嶋 淳)