鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

十勝の自然6 ノビタキ

2015-05-05 17:25:56 | 鳥・春

Photo by Chishima, J.
ノビタキのオス 2009年6月 北海道河西郡更別村)


(FM JAGAの番組 KACHITTO(月-木 7:00~9:00)のコーナー「十勝の自然」DJ高木公平さん)


 4月も10日を過ぎると、中国南部や東南アジアで冬を越していたノビタキが十勝に帰ってきて、「ヒーヒョロリヒー」と朗らかなさえずりを聞かせてくれます。スズメより少し小さく、オスでは頭から背中の黒とお腹の白、胸のだいだい色のコントラストが美しい小鳥です。
 ヒバリと並んでもっとも普通の草原の小鳥で、農耕地や海岸、原野などのほか線路わきや住宅地内の空き地といった、ちょっとした草のある場所にも生息しています。また、山の中でも伐採跡地やスキー場など開けた環境があればいて、驚かされることがあります。
 十勝ではごく身近なノビタキも、本州では高原の鳥です。生まれ育った群馬では、毎年夏に、唱歌「夏の思い出」で有名な尾瀬ヶ原へ見に行くのを楽しみとしていました。北海道は寒冷なので、平地でもノビタキの好む環境や餌があるということなのでしょう。帯広周辺では市街地にも普通なゴジュウカラやヒガラなども、本州では山に行かないと見ることができない鳥です。
 生息数の多い鳥ですが、ほかの鳥の巣に卵を産んで育てさせる、托卵(たくらん)という習性を持つカッコウの、主な托卵相手になっています。托卵されるとカッコウのヒナが少し早く孵(かえ)って、本能的にノビタキの卵を巣の外に捨ててしまうので、ノビタキにとっては迷惑な話でしょう。


(2015年4月10日   千嶋 淳)

150412十勝川下流域

2015-05-05 16:46:41 | 鳥・春

Photo by Chishima, J.
夏毛へ換毛中のエゾユキウサギ 2015年4月 北海道中川郡豊頃町)


 沼の氷はほぼ完全になくなり、雪も日陰などを除くと消失しました。午前中は風も弱く、陽光が燦々と照りつける中、ヒバリが天に向かって談判し、ノビタキやオオジュリン、キジバトが囀りを奏で、アカエリカイツブリが賑やかに鳴き交わす、実に長閑な十勝川下流域でした。
 その長閑さを海岸でも味わおうかと思ったら、季節はずれの濃霧で寒く、早々に退散しました。
 所々でエゾアカガエルがマガンに似た甲高い声で大合唱し、防風林の林床にはエゾエンゴサク、キバナノアマナ、ウラホロイチゲ、ザゼンソウなどの花が咲き、夏毛へ換毛中のエゾユキウサギと出会うなど、鳥以外でも早春の十勝平野の自然を謳歌した一日でした。
 カモ類が種、個体数ともさらに少なくなりましたが、タンチョウ、オジロワシ、マガン、ヒシクイの天然記念物4種とハクガン、シジュウカラガンはコンスタントに観察できています。


確認種:ヒシクイ マガン ハクガン シジュウカラガン オオハクチョウ ヨシガモ ヒドリガモ アメリカヒドリ マガモ カルガモ オナガガモ コガモ キンクロハジロ スズガモ シノリガモ クロガモ ホオジロガモ ミコアイサ カワアイサ アカエリカイツブリ ドバト キジバト ヒメウ カワウ アオサギ タンチョウ オオバン カモメ オオセグロカモメ トビ オジロワシ ハイタカ コゲラ アカゲラ ハシボソガラス ハシブトガラス ハシブトガラ シジュウカラ ヒバリ ヒヨドリ キレンジャク ゴジュウカラ ムクドリ ノビタキ スズメ ハクセキレイ アトリ カワラヒワ ホオジロ オオジュリン


(2015年4月12日   千嶋 淳)

十勝の自然5 三日月沼周辺での野鳥観察

2015-05-05 16:36:15 | 水鳥(カモ・海鳥以外)

Photo by Chishima, J.
三日月沼周辺でガン類などを観察する人々 2015年4月 北海道十勝郡浦幌町)


(FM JAGAの番組 KACHITTO(月-木 7:00~9:00)のコーナー「十勝の自然」DJ高木公平さん)


 先週もご紹介したように、この時期の十勝川下流域にはたくさんのガン類やオオハクチョウが飛来します。最近ではデジタルカメラの普及で簡単に写真を撮れるようになったので訪れる人も多く、中でも人気が高いのが浦幌町の三日月沼周辺です。ハクガンやシジュウカラガンといった珍しいガン類が、沼で休み、周辺の畑で餌を食べる姿を観察できるからです。
 ただし、訪れる人が増えたことで、いくつかの問題も発生しています。一つは鳥に対して不用意に近づく人です。ガン類は非常に臆病な鳥で、人が近付きすぎると飛んで逃げてしまいます。この時期のガン類は渡りと繁殖を控えてエネルギー補給の真っ最中ですので、食事を邪魔されることは生命に関わるかもしれません。一定の距離を取って観察しましょう。車の中から見ていると意外と警戒されません。
 沼に隣接した畑や牧草地に立ち入る人もいます。牧草地は一見、畑に見えないかもしれませんが、大事な農地です。踏み荒らしだけでなく、作物や家畜の伝染病を運んでしまう可能性もあるので、農地への立ち入りは絶対に止めましょう。
 沼のまわりには駐車場がなく、取付道路などに駐車して観察しますが、人が増えると取付道路だけでは足りず、何台も路上駐車することになります。国道は大型トラックを含む交通量が多く、それ以外の道も農作業のトラックやトラクターが走り回るので、駐車する時はハザードを付ける、カーブや見通しの悪い場所には車を止めないなどして、交通事故を起こさないよう気を付けてください。
 マナーと安全を守りながら、いつまでも渡り鳥を楽しめるエリアにしてゆきましょう。


(2015年4月10日   千嶋 淳)

十勝の自然4 クジャクチョウ

2015-05-05 16:23:51 | 自然(全般・鳥、海獣以外)

Photo by Chishima, J.
クジャクチョウ 2014年9月 北海道河東郡音更町)


(FM JAGAの番組 KACHITTO(月-木 7:00~9:00)のコーナー「十勝の自然」DJ高木公平さん)


 草木もまだ芽吹かぬ4月上旬、住宅地内の空き地を、あるいは雪の残る林道をひらひらと舞う蝶に出会うことがあります。彼らは成虫のまま越冬した蝶で、擦り切れたボロボロの翅(はね)が冬の厳しさを物語っています。シータテハやルリタテハなどタテハチョウの仲間が多く、その中でもひときわ美しいのがクジャクチョウです。
 4枚に翅のそれぞれに水色や黒の目玉模様を持ち、鳥のクジャクの羽のように見えることからその名があります。この目玉模様は、鳥などの天敵から身を守る効果があるようです。
 北海道を含む東アジアの亜種の学名は、イナキス・イオ・ゲイシャといいますが、一番最後(亜種小名といいます)のゲイシャは、鮮やかな翅の模様を芸者に模したものです。 
 幼虫はイラクサやホップの葉を食べて育ち、成虫はいろいろな花の蜜や樹液を訪れます。庭先やちょっとした空き地でも簡単に見ることができるので、雪景色や枯れ草ばかりの風景に飽きたら、この目も覚めんばかりに鮮やかな蝶を探してみませんか。
 写真は秋に撮影したので周囲が緑ですが、4月の荒涼とした景色の中で見ると、美しさが一段と際立ちますよ。


(2015年4月9日   千嶋 淳)