鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

十勝の自然10 エゾアカガエル

2015-05-12 16:20:01 | 自然(全般・鳥、海獣以外)

Photo by Chishima, J.
エゾアカガエルと卵塊 2009年4月 北海道十勝郡浦幌町)


(FM JAGAの番組 KACHITTO(月-木 7:00~9:00)のコーナー「十勝の自然」DJ高木公平さん)


 この時期、太陽の暖かさに誘われて散歩していると、水辺から「キャララ、キャララ…」と甲高い声が合唱のように聞こえてくることがあります。長い冬眠から覚めたエゾアカガエルが、産卵のため水辺に集まってきたのです。
エゾアカガエルは5~7cmほどの土色のカエルで池や沼、湿地などの水の中に卵を産み、山の方では雪どけでできた水たまりを利用することもあります。適切な環境があれば緑ヶ丘公園や農業高校の林など、帯広市街地周辺でも生息しています。
 昼夜問わずの大合唱に近付いてゆくと、カエルは鳴き止んで水に潜ってしまい、今までの大騒ぎが嘘のように静かになります。でも、しばらくじっと待っていれば一頭また一頭と顔を現し、大合唱が再開されることでしょう。数百から1000以上の卵が球状の塊となって産まれた卵塊(らんかい)や、もう少し遅い時期には小さなオタマジャクシも見られるかもしれません。
 エゾアカガエルは、学名をラナ・ピリカといいます。後半のピリカは、「美しい、きれい」を意味するアイヌ語から付けられました。昔はヨーロッパや朝鮮半島のアカガエルと同じ種類と考えられていたのですが、1991年に別種であることがわかり、新たに命名されました。早春を告げるこの身近なカエルは、世界でも北海道と北方四島、サハリンだけに分布する貴重な動物なのです。


(2015年4月13日   千嶋 淳)

十勝の自然9 アオジ

2015-05-12 16:01:39 | 鳥・春

Photo by Chishima, J.
囀るアオジのオス 2011年5月 北海道中川郡池田町)


(FM JAGAの番組 KACHITTO(月-木 7:00~9:00)のコーナー「十勝の自然」DJ高木公平さん)


 4月15日前後に、冬を過ごしていた本州などから十勝へ帰ってくる、スズメ大の、お腹の黄色い小鳥です。アオジの「アオ」はブルーではなく、昔の言葉で緑色のことを青と呼んだことに由来するもので、頭から背中にかけては、灰色みを帯びた緑色をしています。「ジ」も昔の言葉で、小鳥のことを指しますが、意味はよくわかっていません。
 平地から低い山の明るい林を好み、農耕地内の防風林や河原の林にもたくさん住んでいます。夏の十勝平野では、一番数の多い小鳥かもしれません。私が在学していた頃の帯広畜産大学では、あまりにも数が多いので、学生からは「畜大スズメ」などと呼ばれ、からかわれていました。
 しかし、その歌声は美しく、オスは木の梢などに止まって、「チョッピー チョ チッ チョリー…」と音楽的な節回しでさえずります。鳥のさえずりを、人間の言葉に当てはめて覚えやすくしたものを「聞きなし」といいますが、アオジのさえずりを「千代ちゃん、ちょっと、ビール飲みたいナ」と聞きなすことがあります。


(2015年4月14日   千嶋 淳)


十勝の自然8 エゾエンゴサク

2015-05-12 15:46:32 | 自然(全般・鳥、海獣以外)

Photo by Chishima, J.
エゾエンゴサク 2008年4月 北海道十勝郡浦幌町)


(FM JAGAの番組 KACHITTO(月-木 7:00~9:00)のコーナー「十勝の自然」DJ高木公平さん)


 雪こそ消えたものの、まだ草枯れ木色の4月の林に足を踏み入れると、地面に色とりどりの花が咲いて、まるでお花畑のようになっていることがあります。アズマイチゲの白、キバナノアマナの黄色などにくわえ、ひときわ目を引くのが紫色や青色の、筒みたいな花を、茎の上の方にいくつも咲かせるエゾエンゴサクです。
 これらは、日当たりの良い早春の林の下で一斉に花を咲かせ、夏には葉や茎といった地上部分を枯らして、地中で休眠状態に入る「春植物」といわれる植物たちです。春の一時期のみ姿を現すことから、英語で「スプリング・エフェメラル(春の妖精)」とも呼ばれます。
 エゾエンゴサクの花粉を運ぶのは主に昆虫。マルハナバチの仲間をはじめ、多くの虫が花を訪れます。
 毒のあるケシの仲間には珍しく食用となり、花付きでサッと茹でて、おひたしやゴマ和え、酢の物などにします。


(2015年4月14日   千嶋 淳)

150418 戸蔦別川河畔林観察会

2015-05-12 15:34:33 | 鳥・春

Photo by Chishima, J.
観察会の様子 2015年4月 北海道帯広市)


 帯広市郊外の戸蔦別川河畔林での自然観察会(主催:十勝の森とひとを結ぶ会)でした。林内の所々に雪が残るほかは地表が見え、周辺の畑ではヒバリが賑やかに囀り…とすっかり春の雰囲気です。防風林を突っ切ってたどり着いた、河岸段丘の上から見た河畔林は雪解け水でいたく冠水していたため、今回は下まで降りるのは見送って段丘上から概観するにとどめ、あとは防風林での自然観察を楽しみました。
 会が進むにつれ上がった気温に誘われてか、ゴジュウカラやハシブトガラの活動がとても活発で、葉も展開する前なので双眼鏡でじっくりその行動を観察できました。藪のある場所ではベニマシコが「ピ、ポ」と鳴き交わし、カラマツの頂ではカワラヒワがいつもの「キリキリコロロ」にくわえ、「ビーン」と朗らかな囀りを繰り返していました。
 林床のクジャクチョウやフッキソウに目を奪われながら歩を進めていると、地表に張り出した横枝に足を取られ、派手に転倒してしまいました。痛む腰をさすりながら顔を上げると、目の前にはなんと新鮮なヒグマの糞。まだ湿っています。量が少なめで木の実や昆虫などの内容物が認められないあたり、いかにも冬眠明けという感じです。河畔林伝いに移動しながら、夜間や薄暮時には台地上の防風林や畑に姿を現しているのかもしれません。周囲にはエゾシカの糞も多数転がっており、参加者の外国人の方は「こっちにベア(熊)、あっちにディア(鹿)」と楽しいジョークを飛ばされておりました。
 集合場所に戻り、紅茶を飲んだり鳥談義に花を咲かせたりしていると、オオタカとノスリが相次いで現れ、ノスリは青空をかなり高くまで上り詰めてゆきました。当初、雨の予報でどうなることかと思われましたが、後半は汗ばむくらいの陽気の中、鳥を中心に早春の自然を満喫した午前でした。朝、まだ気温の低い時間に現地へ向かう時には、畑から立ち上る地霧も綺麗でした。


確認種(鳥類のみ):キジバト トビ オオタカ ノスリ コゲラ アカゲラ ハシボソガラス ハシブトガラス ハシブトガラ ヒガラ シジュウカラ ヒバリ ヒヨドリ ゴジュウカラ キバシリ ノビタキ ノビタキ スズメ ハクセキレイ アトリ カワラヒワ ベニマシコ ウソ ホオジロ アオジ (25種)
参加者:15名


(2015年4月18日   千嶋 淳)

150416 プライベートガイド(十勝川下流域)

2015-05-12 15:21:47 | 鳥・春

Photo by Chishima, J.
シジュウカラガンやマガンの群れとキタキツネ 2015年4月 北海道十勝川下流域)


 午後、名古屋からのお客さんを案内させていただきました。娘さんの移住されている帯広を訪ねるついでに趣味の鳥も楽しめたらとネットで探していたところ、野鳥の会十勝支部のHPが目にとまり、ガイドをご用命下さったとのことでありがたい限り。
 時折小雨もちらつく生憎の曇天でしたが、その分、鳥との距離は近く、マガン、ヒシクイはもちろん、ハクガン、シジュウカラガンの群れも割と近くで観察でき、お住まいの地では馴染みの薄い大型水鳥の群れの迫力を感じていただけたかと思います。タンチョウやオジロワシもしっかり見られました。4月に入ってからは、この天然記念物4種+希少ガン類2種にはパーフェクトに出会えています。
 水鳥の観察後に訪れた孤立林は肌寒く、キバナノアマナやウラホロイチゲの花も閉じがちでしたが、近くのハルニレの梢では北帰行を控えたツグミが複雑な節回しでぐぜっていました。
 池田発着の3時間程度の周遊(海はなし)で確認できた鳥は、以下の35種でした。


確認種:ヒシクイ マガン ハクガン シジュウカラガン オオハクチョウ ヨシガモ ヒドリガモ マガモ カルガモ コガモ キンクロハジロ ホオジロガモ ミコアイサ カワアイサ キジバト アオサギ タンチョウ オオバン カモメ トビ オジロワシ アカゲラ ハシボソガラス ハシブトガラス ハシブトガラ シジュウカラ ヒバリ ヒヨドリ ムクドリ ツグミ ノビタキ スズメ ハクセキレイ カワラヒワ オオジュリン

 ガン類を観察中、群れの一部が急に飛び上がったので「ワシ!?」と思って見ると、キタキツネが1頭、群れのすぐ後ろを爆走していました。そしてふと立ち止まり、残ったガン類が一斉に首を上げて警戒しているのが写真です。以前はマガンの群れの中にシジュウカラガンを探すのが普通でしたが、最近ではシジュウカラガンの群れにマガンが混じっている感じです。


(2015年4月17日   千嶋 淳)