
All Photos by Chishima,J.
(以下すべて ホオジロガモ 2012年1月11日 北海道十勝川中流域)
道東へは冬鳥として10月中旬から翌5月中旬まで渡来し、稀に夏期の記録があるもののその多くは単独の個体。漁港や内湾、河口、主に砂質海岸の海上といった沿岸域のほか大きな川や、結氷前後には山間部も含めた湖沼等内陸にも飛来する。一連の写真は河川でのもの。
本種の飛翔時のシルエットは、オス(手前)メスともそれ自体が識別に有用なほど特徴的。翼開長は62~77cmでシノリガモと近いサイズだが、よりコンパクトでまるまる太って見える。短い嘴からやや切り立った額を経て頭頂部へ上り、そこから後頭部にかけて下るおにぎり型の頭部は、不釣り合いなくらい大きい。翼は割と短めで、幅広い。

メス7羽の群れ。右から2番目が幼鳥で、ほかは成鳥と思われる。体の軸は水・地平線より上方を向くことが多く、そのため体の後半部に重心のある印象を受ける。翼の拍動は大変速くて力強く、必死な感じがする。人や船の接近で飛び立った場合、大抵はすぐに高度を上げ、頭上を通過する。そのため、野外において飛翔は見下ろすより見上げる機会の方が圧倒的に多い。飛翔は基本的に直線的だが、人や天敵、障害物等を避けるため左右に、群れが散開するような急降下を示すことがある。近距離であれば英語でwhistle(口笛)と呼ばれる、翼が空を切る甲高く金属的な音を聞くこともできる。

生殖羽のオス成鳥は、シルエットとともに、光線条件が良ければかなりの距離からでも識別可能な特徴的な羽衣を持つ。上下面の白黒のコントラストが強く、見上げる状態では白い部分が目立つ。顔の黒色は、距離と光線条件が良ければ緑色光沢を帯びる。その中の嘴基部の両側に、和名の由来ともなった円形の白斑がある。虹彩は英名Goldeneyeの通り、金色みを帯びた鮮やかな黄色。短い嘴は全体が黒色。黒色の翼上面には次列風切から雨覆に及ぶ広い白色部があり、その部分が見えればよく目立つ。画像では一部しか見えていないが、肩羽の白線も同様に目立つ。脚はオレンジ色。

メス成鳥。白黒のコントラストの強いオスと比べ、全体に暗色な印象。頭部は暗褐色、胸の上部と脇は灰色で、腹は白い。頭部の褐色と胸以降の灰色の間に明瞭な白色部があり、首輪状を呈する。翼上面のパターンはオスに似るが、白色部は中雨覆、大雨覆の先端が暗色なため、2本の暗色線に分断される。虹彩はオスより黄色みに乏しく、白っぽい。黒い嘴の先端には、やや橙色みを帯びた黄色の部分がある。脚はオス同様。

左上の個体は虹彩や脚の色、嘴や翼上面のパターン等からメス成鳥であろう。右下の個体(本記事2枚目画像の、右から2番目の個体)は虹彩が暗色で脚の色も鈍く、白い首輪が不明瞭なことから幼鳥と思われ、嘴先端に黄色のあること、翼上面の白色部のうち中雨覆がやや暗色なことからメスと思われる。

左は虹彩や脚の色、首輪の明瞭さ等からメス成鳥と思われる。右の個体は虹彩や脚の色、首輪の欠如等から幼鳥と思われ、嘴は全体が黒い。翼上面のパターンは画像からは確認できず、性は不明。

真下から見上げた4羽で、下側2羽がオス成鳥。通常、オスはメスよりも大きい。側面からとはまた違った印象だが、胴体部分の膨らみと丸み、それがもたらす下半身の強い重心感は一緒。すべての羽衣を通じて、次列風切以外の翼下面は暗色。画像では風切部分がより淡色だが、実際には均一な暗色に見えることが多い。
(2012年1月13日 千嶋 淳)