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鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイドを行っていた千嶋淳(2018年没)の記録

150901 十勝沖海鳥・海獣調査

2015-10-18 22:36:56 | 海鳥

コシジロアジサシの群れ 以下すべて 2015年9月 北海道十勝沖)


 十勝川沿いは深い霧に閉ざされていましたが、幸い、港に近付くと視界は良好。午前6時、防波堤の上にずらりと並んだウミネコ(十勝では秋に数が増えます)に見送られながらの出航です。前半は時折陽の射す薄曇り、後半は快晴で波も穏やかと、海況にも恵まれ、乾いた風が秋を感じさせるものの、日差しの強さはまだまだ夏でした。
 沿岸、沖合ともオオミズナギドリが多く、常に1~数羽が飛んでいたほか、数十~100羽以上がハイイロミズナギドリと混群を作って海上で休息する姿も随所で見られました。波が穏やかだったこともあってヒレアシシギも見付けやすく、アカエリを中心にあちこちで小群が浮いていました。
 出航して1時間弱。海上に大きな藻の塊が浮いていて、その上に複数の鳥が止まっているのが見えたため、そっと近付いてもらいます。それらがアジサシ類とわかると胸は高鳴り、顔がはっきり見える距離に入ると予感は確信へと変わりました。コシジロアジサシです(写真)。それも何羽もいるどれもがコシジロ!観察中にも新たに飛来して着地するなど、幼鳥2~3羽を含む10羽前後がいたことになります(正確な数は、これから写真判定を行います)。8月から9月はじめに定期的に通過することは過去の調査から確実で、今日も狙ってはいたのですが、一度にこれほどの数を見たのは初めてで興奮しました。
 沖合で船を止めるといつものごとく、操業中の漁船と勘違いしたアホウドリ類やカモメ類が集まって来ます。どこで嗅ぎつけるのか、不思議なものです。カモメ類の中にはセグロカモメも多く、季節の移ろいを感じさせてくれます。
 他にはオオトウゾクカモメやカンムリウミスズメ、イシイルカの小群などが相次いで出現し、興奮冷めやらぬクルーズでした。復路、港のすぐ近くでは、昨日から始まったという秋サケ定置網漁が水揚げの真っ最中でした。船べりに並んだ屈強な漁師さんたちが網を引っ張ると、箱網の中から銀の鱗が光り、たも網で船倉に移される、漁の様子をしばし見学させていただきました。秋サケにサンマ、イカ、シシャモ…と道東の海はいよいよ恵みの秋を迎えます。
 下船後は番屋で毛ガニ、塩イクラ(蒸かしたジャガイモと食べるとちょうど良い塩加減)、煮ツブなど浜料理の数々に舌鼓を打ちながら歓談し、昼過ぎに解散しました。参加・協力いただいた皆様、お疲れ様でした。そしてありがとうございました。

確認種:シノリガモ クロガモ アビsp. コアホウドリ クロアシアホウドリ オオミズナギドリ ハイイロミズナギドリ ヒメウ カワウ ウミウ アオサギ シギ科の一種 アカエリヒレアシシギ ハイイロヒレアシシギ ウミネコ セグロカモメ オオセグロカモメ ‘taimyrensis’ コシジロアジサシ オオトウゾクカモメ トウゾクカモメ カンムリウミスズメ ウトウ トビ ハシボソガラス ハシブトガラス ハクセキレイ 海獣類その他:カマイルカ イシイルカ ネズミイルカ サメ類 マンボウ タテハチョウ科の一種


オオトウゾクカモメ



(2015年9月1日   千嶋 淳)


*本調査はNPO法人日本野鳥の会十勝支部、漂着アザラシの会、浦幌野鳥倶楽部が連携しながら、本年度は前田一歩園財団の支援の下、実施しています。

150808 十勝沖海鳥・海獣調査

2015-09-16 17:50:48 | 海鳥

All Photos by Chishima, J.
カマイルカオオミズナギドリ 以下すべて 2015年8月 北海道十勝沖)


 日程の決定が直前となり、その日程も悪天候により土壇場で変更となったため、参加できたのは4名のみでした。朝6時、数日前の猛暑が嘘のように肌寒い漁港を出航。曇ってはいるものの、この時期に最も懸念される霧はまったく無く、帰港まで良好な視界が得られました。また、肌寒さも時間とともに解消され、遅い時間帯には日差しが顔を覗かせることもありました。
 港付近の沿岸ではウミネコが増え、トウゾクカモメも姿を見せるなど「秋」の要素が強くなっています(十勝ではウミネコは繁殖せず、7~10月に数が増えます)。出航して30分弱で、浮きに止まる1羽のアジサシ類を発見。船を近付けてもらうとコシジロアジサシ成鳥でした。その1分後にはオオトウゾクカモメも現れ、幸先の良いスタートです。
 その後はオオミズナギドリが数は少ないながら間断なく出現し、フルマカモメやハイイロミズナギドリがそれに混じります。洋上を漂うフルマカモメの死体を発見。タモ網で回収しました。こうして得られた死体は標本として残すことで教育用に活用できるだけでなく、外部形態や換羽に関する基礎的な、さらに栄養状態、胃内容物などからは海洋環境との関わりを示す情報を提供してくれます。
 水深150m前後の海域でオオミズナギドリを中心とした鳥山と出会い、しばらく観察。その間、船頭さんはイカ釣りを行い、数ハイを手に入れました。帰港後、我々の胃袋に収まったのは言うまでもありません。操業中の漁船と勘違いしたらしく、何羽ものクロアシアホウドリが船の周囲に飛来し、至近距離での観察を楽しみました。
 引き返して港に戻る途中、オオトウゾクカモメが何度も出現します。往路も含め10羽以上が確認され、過去最大の数だったと思います。南極大陸からやって来る、非常にごつくて格好良い海鳥です。


オオミズナギドリを攻撃するオオトウゾクカモメ



 割と沿岸まで戻って来た海域で、本日最大の見所が訪れました。カマイルカの群れに大きな鳥山が付いていたのです。じわじわと近付き、気が付くと周囲のそこかしこで数~10頭程度にバラけたイルカが「ブシュー」と噴気と飛沫を上げて海面近くにイワシの群れを追いやり、そこをめがけ何羽ものオオミズナギドリが「ピー」と歓喜の(?)声を上げて空中から突入し、イワシを捕えたオオミズナギドリを今度はオオトウゾクカモメが襲撃するという、何ともダイナミック光景が繰り広げられていました。コアホウドリも多く見られましたが、オオミズナギドリの群れと一緒に行動しているのはあまり見たことがなく、船頭さんも珍しいと仰っていました。
 その後もコシジロアジサシやカンムリウミスズメが立て続けに現れ、最後まで興奮覚めやらぬクルーズでした。コシジロアジサシは3羽(すべて成鳥)、カンムリウミスズメは6羽を記録しましたが、微妙な風波があって海上の小さい鳥は見付けづらかったため、カンムリウミスズメはもう少しいたかもしれません。
 防波堤のウ類やカモメ類を見ながら帰港し、岸壁に降り立ったのは既に11時半近く。その後は番屋で、ついさっき釣ったイカの刺身をはじめ、イワシのつみれ汁、シシャモの甘露煮など漁師料理を堪能しました。土壇場での日程変更にも関わらず参加いただいた皆様、長時間の海鳥観察に付き合って下さり、美味しい料理を食べさせてくれる船頭さんとご家族の皆様、どうもありがとうございました。

確認種:シノリガモ クロガモ コアホウドリ クロアシアホウドリ フルマカモメ オオミズナギドリ ハイイロミズナギドリ ハシボソミズナギドリ ヒメウ カワウ ウミウ キアシシギ アカエリヒレアシシギ ハイイロヒレアシシギ ウミネコ オオセグロカモメ コシジロアジサシ アジサシsp. オオトウゾクカモメ トウゾクカモメ トウゾクカモメsp. カンムリウミスズメ ウトウ ハシブトガラス スズメ 海獣類:カマイルカ イシイルカ ネズミイルカ


コシジロアジサシ(成鳥)
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(2015年8月8日   千嶋 淳)

150725 十勝沖海鳥・海獣調査

2015-08-11 10:28:26 | 海鳥

All Photos by Chishima, J.
コシジロウミツバメ 以下すべて 2015年7月 北海道十勝沖)


 予算やスケジュールの関係でなかなか開始できなかった今年度の十勝沖調査。本日ようやく初回を実施することができました。今年の道東の夏は風物詩の霧が少ないまま推移して来ましたが、少し前から例年通り霧のドツボにはまってしまいました。風・波は悪くなさそうな予報だったので、一番の懸念はやはり霧。午前5時半前。漁港は500m以上の視界があり、思いのほか視界良好と思ったのも束の間。出航して30分もすると濃い霧のベールに包まれます。その後も所々「霧だまり」みたいな視界のほとんど効かない区域があるのにくわえ、湿度100%、霧以上雨未満の「ジリ」が容赦なく髪や頬を濡らし、苦戦しました。
 沿岸部では鳥が少なめで、フルマカモメやハイイロミズナギドリ、ウトウ、ヒレアシシギ類などが散見される程度でした。この時期は割と岸近くまでウトウやハイイロミズナギドリの群れが観察されるのですが、この2年ほど、霧多布や根室沖も含め、夏の道東太平洋でこれら魚食性海鳥2種が激減したように感じます。
 出航しておよそ2時間。水深130m前後の海域でクロアシアホウドリやオオミズナギドリが姿を見せ始めると、鳥影が濃くなって来ました。何羽ものコシジロウミツバメが波間を飛び交い、水面すれすれを飛びながら、足踏みするように一ヶ所にとどまって採食する姿もありました。この海域では合計100羽を越えるコシジロウミツバメが観察されましたが、こんなことは本調査が始まって以来のことです。余りにも霧が濃く、オオセグロカモメやトウゾクカモメ類に襲われる危険が少ないので、比較的沿岸にいたのでしょうか。


コシジロウミツバメ飛翔下面


 船を止めると、これから操業する漁船と勘違いしたらしく、クロアシアホウドリやフルマカモメが続々集まって来ます。翼を広げると2mにもなるクロアシアホウドリが、両足を開き、尾羽を立ててブレーキをかけながら着水する姿は実に壮観です。今日はコアホウドリが1羽も観察されず、オオミズナギドリは例年の同時期よりかなり多かった点など8~9月前半の海鳥相に近く、釧路沖の暖水塊の影響を受けているのかもしれません。
 カンムリウミスズメは2群5羽を観察できました。視界が良かったら、もっといたかもしれません。いずれも至近距離で観察できました。船頭さんもすっかり慣れて、鳥に逃げられずに近付く術を体得されたようです。ただし、必要最低限の観察を行った後は速やかに離れるようにして、非繁殖海域とはいえ、十勝沖で少しでも快適に過ごしてもらえるようにしています。


カンムリウミスズメ



 沿岸に近付いて、霧の中から防波堤のようなものがうっすら見えて来ましたが、霧が濃く、双眼鏡で見てもよくわかりません。ふと、「防波堤」がバラバラになって広がり始めました!実は800羽ほどのクロガモの越夏群だったのです。十勝海岸ではかなりの数のクロガモが越夏していて、早朝には海岸から見えることもありますが、日中はやはり少し沖(とはいえ港から1、2km)に出るようです。換羽中なのか船が近付くと潜水して逃げる個体が大部分で、飛んだのは1羽だけでした。
 間もなくたどり着いた本物の防波堤には、どこからやって来るのか十勝では秋に多くなるカワウの群れや、キアシシギの姿もあり、沖で出会ったヒレアシシギの群れと合わせて鳥の世界では既に秋が始まっていることを実感しながら船を降りました。
 その後はいつものように番屋で旬の魚介に舌鼓をうちながら歓談し、適宜解散しました。今回は直前の実施決定だったにも関わらず、小学生や幼児を含む12名の参加者がありました(高校生以下は参加費無料なので、今後もお子さんの参加を歓迎します)。参加いただいた皆様、船頭さんとそのご家族様、どうもお疲れ様でした。そして、いつもありがとうございます。


確認種:クロガモ クロアシアホウドリ フルマカモメ オオミズナギドリ ハイイロミズナギドリ アカアシミズナギドリ コシジロウミツバメ ヒメウ カワウ ウミウ キアシシギ アカエリヒレアシシギ ハイイロヒレアシシギ ウミネコ オオセグロカモメ トウゾクカモメsp. カンムリウミスズメ ウトウ エトピリカ ハシボソガラス ハシブトガラス ハクセキレイ その他:マンボウ


クロアシアホウドリ



(2015年7月25日   千嶋 淳)

150616 道東沖

2015-07-18 08:29:42 | 海鳥

All Photos by Chishima, J.
フルマカモメ白色型 以下すべて 2015年6月 北海道東部)

 NPO法人エトピリカ基金主催の海鳥調査で、道東沖を巡ってきました。釧路を起点に根室半島先端まで往復するため、出港は朝の3時。前日夜に現地入りして岸壁で車中泊、2時半には起床して乗船というハードスケジュールです。帰港は14時過ぎ、11時間強の小型船での航海でした。
 所々濃霧や更に湿度の高い「ジリ」に悩まされたものの波は穏やかでした。最も多かったのはおそらくフルマカモメで、数十~数百の群れも点在し、日本近海では少ない白色型も散見されました。
 根室半島沖ではフルマカモメとウトウが卓越していましたが、釧路近海ではクロアシアホウドリの姿も目立ち、カンムリウミスズメも何度か観察されました。気象庁のHPを見ると釧路の南~南東沖の海水温が平年より1~3℃高くなっており、このあたりに暖水塊が入り込んでいるために、これら7月以降に多い海鳥が早くから現れているのかもしれません。
 帰り道、船頭さんが自身の出身地の近くにある尻羽岬へ船を近付けてくれました。厚岸湾の西側の玄関口に当たる岬で、断崖絶壁が落ち込む海には頂部に鳥居のある帆掛岩があります。海上安全や豊漁を祈願してのことなのでしょうが、よくあんな場所に鳥居を立てたものです。現在の鳥居は、陸上自衛隊が設置したそうです。

夜明け前の幣舞橋


尻羽岬と帆掛岩



(2015年6月16日   千嶋 淳)

150611~14 「フェリーで海鳥を見てみよう!」

2015-07-17 13:24:21 | 海鳥

All Photos by Chishima, J.
夕陽が茜色に染める海 以下すべて 2015年6月 苫小牧~大洗航路)


 商船三井フェリーと北海道の自然雑誌Fauraのコラボ企画「フェリーで海鳥を見てみよう!」にガイド兼トークショースピーカーとして参加させていただき、苫小牧~大洗航路を往復してきました。
 季節がら海域によっては霧や雨もあったものの、全般に穏やかな海で船酔いに苦しまれる人もおられなかったようです。往路、復路ともにオオミズナギドリやハイイロミズナギドリ、クロアシアホウドリなどの海鳥にくわえ、カマイルカやイシイルカの群れが何度も観察されました。さらに復路ではオオトウゾクカモメ、カンムリウミスズメ、尻屋崎沖前後では多数のキタオットセイも出現し、最後は北海道に沈みゆく夕陽が茜色に染める海を見ながら一日を締めくくるという贅沢な航海でした。
 Fauraの大橋編集長とともに行った船内でのトークショーでは写真を多用し、海鳥とはどんな鳥か、北海道から東北にかけての太平洋は海鳥たちの交差点となっていることなど、拙い言葉ではありますが紹介させていただきました。
 20時間近い航海の楽しみの一つとして、海鳥・海獣ウオッチングがもっと広まれば幸いです。観察会やトークショーに参加いただいた皆様、今回の企画を実施された商船三井フェリー、Fauraの皆様には厚くお礼申し上げます。実家への帰省時などに20年以上利用させていただいてきたこの航路でのイベントへ呼んでいただけたことに、ただただ感謝です。


オオトウゾクカモメ


観察種:キジバト シロエリオオハム コアホウドリ クロアシアホウドリ フルマカモメ オオミズナギドリ ハイイロミズナギドリ ハシボソミズナギドリ アカアシミズナギドリ ウミネコ オオセグロカモメ オオトウゾクカモメ カンムリウミスズメ ウトウ (海獣類+α)キタオットセイ カマイルカ イシイルカ マンボウ サメ類


キタオットセイ



(2015年6月15日   千嶋 淳)