
All Photos by Chishima,J.
(風力発電用風車の近くを旋回するオジロワシの幼鳥 2007年4月 北海道根室市)
4月とはいえ、まだ冬枯れの根室半島。その中にひときわ高く聳える白いプロペラ。風力発電という目的を遂行すべく、海からの風を受けて高速で回転し続けている。と、その近くの中空の一点に、オジロワシの幼鳥が旋回しているのを見つけた。
オジロワシは最初、風車より我々に近い側にいたが、徐々に風車に接近し、十分近付くと旋回・上昇を始めた。青空を切って回り続けるプロペラの、間を縫うようにワシは飛翔し、その影がプロペラに映るほどだ。何度目かの旋回の後、ワシは不自然な急上昇を行い、明らかに迫り来るプロペラをかわした。しかし、それで遠ざかることはなく、再び回転の間隙を穿つような飛翔を続けていると、さらに数羽のトビも飛来してその輪の中に加わった。
プロペラ近くを旋回(オジロワシ・トビ)
2007年4月 北海道根室市
左下の2羽がトビ。上はオジロワシ。

「エコでクリーンな」エネルギーとして、風力発電が一種の流行のようになっている。道内では2年前に既に200基を超えたそうで、海岸線を走っていて白くて巨大な風車を見かけないのが稀なほどである。その一方で、それらへの鳥の衝突(バードストライク)が問題になっていることは、知識としては知っていた、つい先日も、道内7例目とされるオジロワシの風車への衝突死が、新聞で報道されたばかりだ(ちなみに、この風車でも数年前にオジロワシが死んでいる)。
それでも、この分野に関して不勉強だったこともあり、交通事故や窓ガラスへの衝突のように、そこを通りかかった鳥の一部がたまたまぶつかってしまう程度のものだと思っていた。しかし、今回の観察からは、猛禽類は「たまたま」風車の近くを通りかかるのではなく、むしろ積極的に誘引されているような印象を受けた。あれほど巨大なものが回転することによって、上昇気流みたいなものが発生し、それを利用しようとするのかもしれない。そこまででなくても、風力発電をしようというくらいだから、元来風の強い場所であり、猛禽類はその風目当てで集まってくるのかもしれない。
世界的に二酸化炭素排出量の削減が求められ、原子力発電の様々な問題点が浮き彫りになる中で、風力のような非資源収奪式のエネルギー生産は大いに活路を見出されるべきであるが、そのやり方や場所を選定するに当たっては、野生生物の声なき声にも耳を傾ける必要があるだろう。
オジロワシ(成鳥)
2007年2月 北海道十勝郡浦幌町

(2007年4月13日 千嶋 淳)