tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

為替レートと賃金決定 (試論) 

2022年01月06日 15時56分43秒 | 経済
第二次大戦後1970年までは世界経済はブレトンウッズ体制のもと、固定相場制でやってきましたが、ご存知のように基軸通貨国のアメリカが赤字国になってしまったせいで70年代に入って、結局、変動相場制になりました。

つまり、赤字国というのは、一般的に言えば、その国の物価が高いので、輸出が不振になり、安い外国製品が入って来て国産品は売れなくなるからです。

アメリカが普通の国であれば、ギリシャやイタリア、韓国などのように、IMF管理になって、何年か緊縮経済をやり不況に耐えてコストを下げ、生産性を上げて、競争力をつけ黒字国になって国際経済に復帰という事になるのでしょうが、何せ、覇権国、基軸通貨国ですからそうはいきません。

基軸通貨であるドルを切下げてドル安にし、競争力を回復して赤字を減らそうという事になったわけです。それでブレトンウッズ体制は崩壊しました。

変動相場制になりますと競争力の強い国の通貨は高くなり、弱い国の通貨は安くなるという形で競争力の調整が「マーケット・メカニズム」によって行われ、それぞれの国の競争力に従って通貨の価値が変動し、自然に国際競争力のバランスが回復されるという理屈です。

例えば、固定相場制の時には、1米ドル=360円、1英ポンド=1008円でした。今は、それぞれ104円、156円辺りです。それで日米、日英の国際競争力の水準は日本が下がり米、英は上ったという事です。

ところで国際競争力というのは輸出入だけではありません国際・国内のあらゆるサービス料金なども関係してきます。つまり国の経済の総合力の競争です。(例えば、国内のバスタクシーの料金も、観光客の懐を通じて国際競争に曝されています)

という事ですから、その国のあらゆる物価の総合的なレベルが問題で、それが上がれば(インフレになれば)いずれは通貨を切り下げないと赤字国転落となってしまうという事になります。

では、どういう場合に経済がインフレになるのと言いますと、通常その原因は賃金インフレです。
賃金を実力(生産性)以上に上げ過ぎてインフレになって競争力が落ちるので、それを防ぐために自国通貨の切り下げを期待し、マーケットがそれを実現してくれるという事でしょうか。

しかし、マーケットはそんなにうまい具合に動いてくれませんから通貨が安くなり過ぎ、それがインフレを加速して経済が破綻などという事も起こります。今のトルコの情勢がそれに似ています。

逆にマーケットに通貨を高くされ過ぎて、苦労したのが日本です。プラザ合意で多少の円高なら受け入れますといったために、予想外の大幅な円高にされ、それに国内の賃金水準を合わせる(下げる)ために「平成長期不況」になりました。

ところでこの所、円安が進んでいます。日本がゼロ金利で、アメリカがインフレを抑えるために金利を上げるというのが原因です。
上記の理屈でいうと、円安になったら、それに見合った賃金の引き上げをしても、日本の競争力は落ちません。

放っておけば、競争力が強くなり過ぎるから、そのうちにマーケットが円高に戻してくれるのでしょうが、考え方によっては、円安が定着しそうだったら、「その分賃上げをした方が日本経済にとって都合がい」という理屈も成り立つのです。

勿論これは黒字国日本だから、また円安が定着するならばという条件があって成り立つ理屈で、それだけ日本は経済政策、賃金政策に余裕があるのだから言えることなのですが、今の日本では一考に値する政策テーマではないでしょうか。

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