tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

為替レートと物価と賃金の関係を考える

2022年01月05日 22時08分34秒 | 経済
前回インフレの事を書いたので、今回もその続きで物価問題を中心に、物価に影響する要因について考えてみたいと思います。

最近、加工食品などを始めとして日常生活に関係する値上げの動きが報道されていますが、主な原因は世界中で資源価格が上がっている事と円安になっている事が響いているなどと説明されています。

現実も確かにその通りでしょうが、そのほかに最低賃金が大幅に上がったり、介護などの福祉関係で、職種によっては人手不足や賃金格差拡大への批判などから、賃金引上げの動きがあったりすることも影響しているようです。

値上げする側にしてみれば、もう何年も、コストが上がっても値上げ出来ない状態で、苦しんできているので、この際なんとかしたいといった事情もあるようです。

確かに日本の物価は上がっていません。主要国の物価の動きを見ても、どの国もある程度の上昇はしているのですが、日本はずっと横ばいなどというグラフもよく見ます。

確かに日本は物価の上げにくい国になっているようです。その分家庭の主婦や年金生活者などには有り難いわけですが、一部に皺が寄り過ぎるというのは矢張りよくないでしょう。

なぜ日本は物価が上げにくい国になったのかには、実はそれなりの理由があるようです。
かつてのバブル経済以前は、物価は結構その時の事情を反映していたと思いますが、確かにこの所は本当に動きが少なくなってきています。

物価だけではありません。賃金も極端に上がらなくなってきているのです。
現実を見れば、、賃金も上がらない、その上に家計は将来不安から貯蓄に励み、消費を抑える、結果は値上げしたら売れないので値上げしないといった状態でしょう。

こんな癖が、この所の30年にもわたる不況の中で定着してしまっているのです。
そんなことになってしまった原因を数字の面から見てみますとこんな状態です。

プラザ合意で円高になる前の年1984年の日米の消費者物価を共に100として2020年の水準を見ますと
アメリカ 100→259
日本   100→122
この36年間で、アメリカの物価はほぼ2.6倍になっているのに対し、日本は36年間で僅か22%の上昇です。

その原因は、実は為替レートにありました。円レートはこの間1ドル=237円から106.8円に大幅円高です。これも1984年を100としますと
円レート 100→44.97 この円レートで日本円の価値をドル建て(ドル換算)にしてみますと
日本 消費者物価ドル換算 100→270.6
となって、日本の消費者物価は(為替レートが変わらなければ)アメリカより上がっているのです。

日本は、この円高に耐えて、2.7倍になるべき物価を22%の上昇に抑えたのです。
当然賃金も上げられませんし値上げなどとても無理ということになりました。

この癖はなかなか抜けません。今、40歳ぐらいまでの人は、物心ついてから、「物価は上がらないもの」という経験しかないのです。

為替レートというものは、一国の賃金や物価に直接影響を与えます。そして一国経済に多大な影響を与えるということです。
という事であれば、今後は、為替レートと賃金の関係をどのように考えていったらいいのでしょうか。次回考えてみたいと思います。

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