tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

消費主導の日本経済に必要なこと

2024年07月10日 15時25分54秒 | 経済

今春闘の賃上げについては連合も目指した大幅賃上げが実現したと満足のようです。経団連も主要企業の多くが満額回答を出し、中には要求を超える回答をしたところもあって、賃上げの社会的責任を果たしたと胸を張っているのではないでしょうか。

確かに賃上げ率そのものは、33年ぶりの水準などと言われ、バブル崩壊後円高不況で賃下げが必要と叫ばれた時期の水準に戻ったかもしれません。

然しそれが今年度の日本経済にとって適切な賃上げ水準だったのかという検証はやられていないようです。

直接比べることにあまり合理性はありませんが、日経平均のほうは、バブル崩壊直前の38900円を疾うに超えて42000円に近づいています。

多くの人は何か日本経済のアンバランスを感じているようですが,そこに発表になったのが、実質賃金の対前年上昇率がこの5月もマイナスで、そのマイナスは26か月連続という現実です。

毎月勤労統計の賃金指数(5人以上事業所の現金給与総額)と消費者物価指数の総合の数字を並べて見ればわかりますが、2022年1~3月は確かに現金給与総額の対前年同月上昇率が消費者物価指数の上昇率(同)を上回っています、そこに、値上げの遅れた食料品日用品の一斉値上げが起き4月以降は今年5月まで消費者物価指数上昇率が賃金上昇率を上回っています(2022年の12月は資料の取り方で、0.1ポイントのプラスという数字も出ます)。

実質賃金のマイナス幅は23年秋にピークに達し、その後縮小傾向にありますがこの5月も未だ-0.9ポイントと1%近いマイナス幅です。

今春闘で賃金も上がりましたが、円安で物価の上昇の心配も消えません。6月以降の数字がどうなるかですが実質賃金の黒字転換はそう簡単ではないでしょう。

今になって考えてみれば、労使が共に手応えあったと感じた賃金上昇も、現実の経済・物価の動きから見れば決して日本経済に適切なものではなかったようです。

折しもまた別の困った数字が出ました、内閣府からの、日本経済のGDPギャップです。今年の1-3月期の日本経済の需給ギャップが-1.0%から-1.4%に修正されたというのです。

これは潜在供給能力はあるのに、それを利用していない分が1.4%という事で、もし潜在能力を100%利用すればGDPは1.4%分増える、それだけ経済成長率も上がるという事です。

どの部分で潜在能力を使い切っていないかについてはいろいろな見方があるでしょう。しかし、経済活動や需要構造といったものは、相応の弾力性があるものですし、アベノミクス以来日本で不足しているのは消費需要だという事は明らかですから、このギャップを消費需要対応にもっていけば、消費は増え、経済成長率は高まるということになります。

そうした需要供給体制のシフトをスムーズに行っているためにも、詰まりは、日本経済がバランスの取れた経済成長の体質を取り戻すためにも必要なことは消費需要の喚起でしょう。

そしてそのために必要なことは格差の少ない賃金上昇の均霑なのです。

このブログでは合わせて平均消費性向の上昇にも注目していますが、まずは賃金上昇が家計に広く均霑することが基本でしょう。

現状では、日本の労使にその観点は欠落しているようです、円安の進展の中で、日本の賃金コストは異常に低くなり、今や生産性を考えれば途上国に匹敵するのではないでしょうか。

こうした日本経済の非常時に際し、日本の労使は、必要があれば賃金交渉はいつでも出来るぐらいの柔軟性と先見性を持って、まずは実質賃金が前年を下回るようなことは、間違いなく避けるべきという意識で、日本経済の成長路線のへの回帰を牽引する賃金水準の上昇を検討すべきではないでしょうか。

特に円高になった時の賃金抑制と同じ比重で、異常な円安に対応する賃金水準の上昇を考えるのは今や経営者団体、経営者の義務と考えるときではないかと感じるところです。

経営者にその発想がなければ、政府は補助金や定額減税で消費購買力を増やそうとするでしょう。これは日本経済を一層弱体化する愚策で、効果は限られ、日本経済、日本財政のゆがみを大きくするだけでしょう。

今こそ本格的な「政労使」対話を進める時ではないでしょうか。政府がお取込み中であるならば、労使だけでも出来るのではないでしょうか。

第一次石油危機の時の労使の頑張りを思い起こしていただくのもいいのはないかと思います。


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